a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)は、シリコンバレーを拠点とする世界有数のベンチャーキャピタル(VC)です。特に暗号資産やWeb3、テクノロジー分野への投資で知られており、業界を牽引する存在として注目されています。
この記事では、a16zの歴史や事業内容、投資実績について詳しく解説し、また、a16zが出している2024年版の暗号資産市場の動向についての最新レポートも紹介します。
暗号資産への投資を検討している方やVC業界の最新動向を知りたい方にとって、必読の内容となっています。
目次
- 1 a16zの概要
- 2 2024年版暗号資産レポート: ステーブルコイン、AI、開発者の熱狂等に関する新しいデータ
- 3 7つの重要なポイント
- 4 1. 暗号資産の取引と利用が過去最高を記録
- 5 2. 暗号資産は米国選挙を前に重要な政策の議論の的となっている
- 6 3. ステーブルコインはプロダクトマーケットフィットしている
- 7 4. インフラの改善により容量が増加し、取引コストが大幅に削減されました
- 8 5. DeFiは依然として人気があり、成長を続けている
- 9 6. 暗号資産はAIの最も差し迫った課題のいくつかを解決する可能性がある
- 10 7. よりスケーラブルなインフラストラクチャにより、新しいオンチェーンアプリケーションが実現可能
- 11 Web3分析ツール、オンチェーン分析のおすすめめサービス
a16zの概要
a16zは2009年に設立され、これまでに数多くのテクノロジー企業への投資を通じて急成長を遂げてきました。特に暗号資産分野では、暗号資産に特化した投資ファンドを設立し、市場拡大に大きく貢献しています。
a16zの歴史
a16zは、マーク・アンドリーセンとベン・ホロウィッツによって2009年に設立されました。彼らは、インターネット技術の初期からテクノロジー分野で成功を収めてきた実業家として知られています。
アンドリーセンは1993年にMosaicブラウザを共同開発し、その後1994年にNetscape Communicationsを共同設立しました。同社のNetscape Navigatorは1990年代中頃まで主要なウェブブラウザとして普及しましたが、MicrosoftがInternet ExplorerをWindowsに標準搭載する戦略を採用したことなどにより、徐々にシェアを失っていきました。
その後a16zを設立し、当初からソフトウェアやテクノロジーに特化した投資を行い、シリコンバレーで急成長を遂げる企業を多数支援してきました。「ソフトウェアが世界を飲み込む」というビジョンを掲げ、IT革命を推進する役割を果たしてきました。
2018年には「a16z Cryptoファンド」を立ち上げ、暗号資産やブロックチェーン技術への投資を強化しています。これにより、暗号資産市場におけるリーダー的存在としての地位を確立しています。
出典:Wikipedia
主要事業
a16zは、革新的なテクノロジーとビジネスモデルを持つ企業への投資を行っています。その中でも、特に注目されている事業分野は以下の3つです。
1. 暗号資産とブロックチェーン技術: Web3やDeFi(分散型金融)をはじめとする分野で、新しい経済圏の形成を支援しています。
2. SaaSおよびエンタープライズソフトウェア: クラウドサービスやAI技術を活用したソリューションへの投資を通じて、企業向けサービス市場を拡大しています。
3. バイオテクノロジーとヘルスケア: 次世代医療やデジタルヘルス分野におけるイノベーションを支援し、ヘルステック分野の発展を後押ししています。
これらの分野での投資活動を通じて、a16zは最先端技術を実現する企業の成長を支援し続けています。
投資実績とポートフォリオ
a16zは、これまでに数多くの成功事例を生み出してきました。特に暗号資産関連のプロジェクトへの投資は業界内外から高い評価を得ています。以下は暗号資産、Web3領域で代表的な投資実績です。
1.コインベース(Coinbase): 世界最大級の暗号資産取引所であり、a16zは創業初期から投資を行っています。
2.オープンシー(OpenSea): NFTマーケットプレイスのリーダー企業として、デジタルアート市場の拡大に貢献しています。
3.ディーパー・ネットワーク(Dapper Labs): NFTやブロックチェーンゲームを手掛ける企業で、「NBA Top Shot」などのプロジェクトを展開しています。
4.ユニスワップ(Uniswap): 分散型取引所(DEX)の代表格であり、スマートコントラクトを活用したDeFi(分散型金融)市場を牽引しています。
その他にも、多数のブロックチェーンプロジェクトやAIスタートアップへの投資を手掛けています。
a16zは、資金提供にとどまらず、事業に関するアドバイスや人脈、ネットワークの提供などを通じて、投資先企業の成長を強力にサポートしています。
2024年版暗号資産レポート: ステーブルコイン、AI、開発者の熱狂等に関する新しいデータ
~a16z社による年次レポートの完全翻訳と解説~
米大手ベンチャーキャピタルのa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)は、2024年の暗号資産業界の包括的な分析レポート「State of Crypto Report 2024: New data on swing states, stablecoins, AI, builder energy, and more」を発表しました。本記事では、この重要なレポートの全文を翻訳し、詳細な解説を加えてお届けします。
2024年、暗号資産業界は大きな転換点を迎えました。政策面での進展、技術基盤の成長、そして新しいユースケースの台頭により、暗号資産業界の様相は2年前とは大きく異なります。
米国ではビットコインETF(上場投資信託)とイーサリアムのETFが承認され、ステーブルコインは国際送金の新たな選択肢として注目を集めています。技術面では、イーサリアムのアップグレードやレイヤー2の発展により、取引コストが大幅に低下し、新しいサービスの展開が可能になってきました。
今回のレポートでは、暗号資産の利用者数が過去最高を記録したデータや、AIとの暗号資産の融合やDeFi(分散型金融)の成長など、注目すべき7つのトレンドを深掘りして解説していきます。
以下、レポートの全文を翻訳し、業界が直面している機会と課題について詳しく解説していきます。
はじめに
2年前に私たちが最初の「暗号資産の現状に関するレポート」を発表したとき、当時の世界は今とはまったく異なっていました。
暗号資産は米国の政策立案者の重要課題ではありませんでした。ビットコインとイーサリアムの上場投資商品 (ETF) はまだ SEC の承認を受けておらず、イーサリアムはエネルギー消費を削減するプルーフ オブ ステークにもまだ移行していませんでした。
ブロック内の容量を増やしてトランザクション コストを下げるように設計されたレイヤー2ネットワークは、ほとんど使用されていませんでした。また、レイヤー2ネットワークのトランザクションのコストは、現在よりもはるかに高かったです。
当社が新たに発表した 2024年版の最新の「暗号資産の現状に関するレポート」が明らかにしているように、時代は大きく変わりました。今回のレポートでは、暗号資産が注目の政策トピックとして台頭していること、ブロックチェーンネットワークにおける最近の多くの技術的な改善、暗号資産の開発者とユーザーの最新トレンドについて取り上げています。本レポートでは、以下の内容も取り上げています。
- 暗号資産の「キラーアプリ」の1つであるステーブルコインなどの主要なアプリケーションの台頭について詳しく解説しています。
- 暗号資産とAI、ソーシャルネットワーク、ゲームなどのその他の主要なテクノロジー トレンドとの交差点を探っています。
- 米国選挙を前に、激戦州における暗号資産への関心レベルなどに関する新たなデータを共有しています。
本レポートでは、暗号資産ネットワークの活動が過去最高を記録していることも明らかにしています。
また、特に最近のスケーリングソリューションのアップグレードによって、イーサリアムのレイヤー2やその他の高スループットを特徴とするブロックチェーンの台頭とともに、オンチェーンのトランザクションコストが大幅に削減された後、ブロックチェーンのインフラストラクチャがどのように進歩したかも分析しています。
今年は、新しいツールも導入しています。a16zが作成した、暗号資産開発者の熱量を定量化したダッシュボードです。暗号資産の状況に関する独自の見解に基づいた独自のデータ (「開発者の熱量」の位置付けなど) が可視化されています。
ダッシュボードには、投資チームの調査、CSXスタートアップアクセラレータープログラム、その他の業界全体の追跡から得られたデータを集約し、匿名化された何千ものデータポイントが組み込まれています。
このツールを使用すれば、暗号資産の開発者が自分の活動や関心について何を行っているか (どのブロックチェーン上に構築しているか、どのような種類のアプリケーションを構築しているか、どのテクノロジーを使用して構築しているか、どこに拠点を置いているかなどの情報)を誰でも調べることができます。今後はState of Cryptoの一環として、このデータを毎年更新する予定です。
出典:builderenegy
それでは、2024 年の暗号資産の現状に関するレポートの調査結果をご紹介します。
7つの重要なポイント
- 暗号資産の取引と利用が過去最高を記録
- 暗号資産はアメリカ大統領選を前に重要な政治要素の1つとなっている
- ステーブルコインはプロダクトマーケットフィットを達成している
- インフラの改善によりブロック容量が増加し、取引コストが大幅に削減された
- DeFi(分散型金融)は依然として人気があり、成長を続けている
- 暗号資産はAIの最も差し迫った課題のいくつかを解決する可能性がある
- よりスケーラブルなインフラストラクチャにより、新しいオンチェーンアプリケーションが実現
1. 暗号資産の取引と利用が過去最高を記録
月間のアクティブ暗号資産アドレス数は、これまでにないほど増加しています。9月には、2億2000万のアドレスが少なくとも1回はブロックチェーン上でやり取りしており、この数字は2023年末から3倍以上に増加しています。(指標としては、アクティブアドレスは他の指標よりも操作しやすい事に留意が必要です。この点の詳細については、こちらをご覧ください。)
出典:State of Crypto Report 2024
活動の急増は主に Solana によるもので、約1億アクティブアドレスを占めています。これに続いて、NEAR (3,100 万のアクティブ アドレス)、Coinbase の人気 L2 ネットワーク Base (2,200 万)、Tron (1,400 万)、Bitcoin (1,100 万) が続きます。
Ethereum Virtual Machine (EVM) チェーンのうち、Base に次いで 2 番目にアクティブだったのは Binance の BNB チェーン (1,000 万) で、次に Ethereum (600 万) が続きます。(注: EVM チェーンは公開鍵で重複分は計算から省いています。)
出典:State of Crypto Report 2024
これらの傾向は、ダッシュボードにも反映されています。暗号資産開発者の関心の総シェアが最も大きく変化したブロックチェーンはSolanaです。具体的には、Solanaでアプリケーションを構築中または構築に関心があると答えた起業家のシェアは、昨年の5.1%から今年は11.2%に増加しました。
次に大きく増加したのはBaseで、その総シェアは昨年の7.8%から10.7%に増加しました。続いてビットコインは、昨年の2.6%から4.2%にシェアを伸ばしました。
出典:State of Crypto Report 2024
絶対値で見ると、イーサリアムは依然として開発者全体の関心の20.8%を占め、最大のシェアを獲得しており、solanaとBaseが続きます。その後には、Polygon(7.9%)、Optimism(6.7%)、Arbitrum(6.2%)、Avalanche(4.2%)、Bitcoin(4.2%)などが続きます。
一方、モバイルの暗号資産ウォレットの月間ユーザー数は、2024年6月に過去最高の2,900万人に達しました。米国は月間モバイルウォレットユーザー数で12%と最も高いシェアを占めていますが、暗号資産の採用が世界的に拡大し、米国を除外することで規制遵守を行うプロジェクトが増えるにつれて、モバイルウォレットユーザー数全体に占める米国のシェアは近年減少しています。
出典:State of Crypto Report 2024
暗号資産の利用は世界各地で急速に広がっています。米国に次いでモバイルウォレットの利用が多いのは以下の国々です。
- ナイジェリア:規制の明確化により、日常的な支払いや小売での利用が拡大
- インド:人口増加とスマートフォンの普及に伴い利用者が急増
- アルゼンチン:自国通貨の下落を受け、多くの市民がステーブルコインなどの暗号資産に資金をシフト
これらの国々では、それぞれの社会経済的な背景を反映する形で、暗号資産が実用的な金融ツールとして定着しつつあります。
また、アクティブアドレスや月間モバイルウォレットユーザー数を測定するのは簡単ですが、実際のアクティブな暗号資産ユーザー数を測定するのははるかに困難です。
しかし、さまざまなアプローチを組み合わせて、私たちは世界中の月間アクティブ暗号資産ユーザー数が3,000万~6,000万人であると推定しました。これは、2024年6月にCrypto.comが推定した世界の暗号資産所有者数6億1,700万人のうち、わずか5~10%に過ぎません。(推定方法の詳細については、こちらをご覧ください。)
2. 暗号資産は米国選挙を前に重要な政策の議論の的となっている
暗号資産は2024年の米国大統領選の主要な論点の一つとなっています。(※1)
主要な激戦州での関心度を、Googleトレンドで分析したところ、下記のような結果が得られました。
- ペンシルベニア州とウィスコンシン州:2020年選挙以降、暗号資産への関心が大きく上昇(それぞれ4位、5位の上昇率)
- ミシガン州:関心度が8番目に上昇
- ジョージア州:横ばい
- アリゾナ州・ネバダ州:2020年以降、緩やかに低下
この結果は、11月の大統領選を控えた激戦州での暗号資産への注目度の変化を明確に示しています。
出典:State of Crypto Report 2024
暗号資産への注目が高まった大きな要因の一つは、ビットコンのETF(上場投資信託)とイーサリアムのETFの承認です。ETFの登場により、一般投資家が暗号資産に投資しやすくなり、米国での保有者数の増加が見込まれています。
実際、ビットコンとイーサリアムのETF残高は、すでに合計650億ドルに達しています。
(注:これらの商品は一般的にETFと呼ばれていますが、正確にはETP(上場投資商品)としてSECフォームS-1で登録されており、証券以外の資産で構成されています)
出典:State of Crypto Report 2024
SECによるビットコイン、イーサリアムのETF承認は、暗号資産政策の重要な節目となりました。
11月にどの政党が政権を獲得するかに関係なく、多くの政治家は暗号資産法案の可決によって勢いが増すと予想している。両党とも、暗号資産について前向きな発言をする政策立案者や政治家が増えている。
連邦レベル:
- 下院で「21世紀の金融イノベーションとテクノロジー(FIT21)」法案が可決。共和党208名、民主党71名の超党派で支持されており、上院での承認後、暗号資産事業者向けの規制が明確化される見込み
州レベル:
- ワイオミング州が「分散型非法人非営利団体(DUNA)」法を可決。DAO(分散型自律組織)に法的地位を付与し、分散性を維持したままでのブロックチェーン運営が可能に
こうした法整備により、暗号資産ビジネスの法的基盤が強化されつつあります。
EUと英国は暗号資産の規制において、国民の声を積極的に取り入れる姿勢を示しています。EU機関が実施したパブリックコメントの件数は、米国SECをはるかに上回ります。
特に注目すべきは、EUの暗号資産市場法(MiCA)です。これは世界で初めて成立した包括的な暗号資産規制法であり、年末までに全面施行される予定です。
出典:State of Crypto Report 2024
ステーブルコインは最も人気のある暗号資産の一つとして、政策に関する議論の中心となっています。米国議会では複数の関連法案が審議中ですが、特に注目されているのは、ステーブルコインが米ドルの国際的影響力を維持・強化する可能性です。
実際、現在発行されているステーブルコインの99%以上が米ドル建てであり、2位のユーロ建て(0.20%)を圧倒的に上回っています。このことから、ステーブルコインは米ドルの国際的な地位を支える新たな手段として期待されています。
出典:State of Crypto Report 2024
ステーブルコインは、米ドルの力を世界中にアピールするだけでなく、国内の財政基盤を強化する可能性もあります。
誕生からまだ10年しか経っていないにもかかわらず、ステーブルコインは米国債の保有額上位20位にまで上り詰め、既にドイツなどの国を上回っています。
出典:State of Crypto Report 2024
一部の国では中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入が検討されていますが、米国ではステーブルコインのチャンスが目の前に広がっています。
こうした議論や、暗号資産全般について発言している著名な政治家の数を考えると、より多くの国が暗号資産に関する政策や戦略を本格的に具体化していくことが今後予想されます。
(※1)2024年11月の大統領選の結果、共和党のトランプ氏が勝利し、2025年の1月に就任予定となっています。大統領就任以降は暗号資産に関する前向きな政策をこれから推進していく事が期待されています。
3. ステーブルコインはプロダクトマーケットフィットしている
ステーブルコインは、安価なグローバル決済を可能にするなど、さまざまな用途で暗号資産の最も明白な「キラーアプリ」の1つとなっています。
実際、リッチー・トレス下院議員(ニューヨーク州民主党)が9月にニューヨーク・デイリー・ニュースの 論説で、「スマートフォンの普及とブロックチェーンの暗号技術によって可能になったドル建てステーブルコインの普及は、人類がこれまでに実施した金融エンパワーメントの最大の実験になる可能性がある」と述べています。
大規模なスケーリングアップグレードにより、ステーブルコインを含む暗号資産取引のコストが大幅に削減され、場合によっては99%以上削減されました。イーサリアムでは、人気のある米ドルペッグステーブルコインであるUSDCを含む取引のガス代は、2021年の平均12ドルから2024年11月は平均1ドルに下がりました。
Coinbaseが開発するレイヤー2のBaseでUSDCを送信するのに必要なガス代は、現在平均1セント未満です。(これらの数字には、一部のオンボーディングコストと終了コストが含まれていない可能性があることに注意が必要です。)
これらの手数料を、現在の国際送金にかかる平均手数料44ドルと比較すれば、どれだけ安いかがわかります。
出典:State of Crypto Report 2024
ステーブルコインは、資金を簡単かつ効率的に送金できる手段として普及しています。2024年第2四半期(4-6月)の取引実績は11億件、金額にして8.5兆ドルに達し、世界最大の決済サービス会社Visaの同期間の取引額3.9兆ドルを大きく上回りました。
この実績は、ステーブルコインがVisa、PayPal、ACH、Fedwireといった従来の主要決済サービスと肩を並べる存在になったことを示しています。
出典:State of Crypto Report 2024
ステーブルコインは一時的なトレンドではなく、確固たした需要を持つサービスとして定着しています。興味深いことに、暗号資産市場の変動とステーブルコインの利用動向には相関関係が見られません。
暗号資産の取引量が減少している一方で、ステーブルコインの送金に使用されるウォレットアドレス数は増加を続けています。これは、ステーブルコインが投機的な取引だけでなく、送金や決済など、実用的な目的で広く活用されていることを示しています。
出典:State of Crypto Report 2024
これらの取引はすべて、統計データにも反映されています。
ステーブルコインは、1日のアクティブアドレスのシェアで測定すると、1 日の暗号資産使用取引のほぼ 3 分の1にあたる32% を占め、分散型金融 (DeFi) の34%に次ぐ割合です。暗号資産の残りの使用は、インフラストラクチャ (チェーン間のブリッジ、オラクル、MEV、アカウント抽象化(Account Abstraction)など)、トークンの送金、およびゲーム、NFT、ソーシャル ネットワーキングなどの新興アプリケーションを含むその他のいくつかの領域に広がっています。
4. インフラの改善により容量が増加し、取引コストが大幅に削減されました
ステーブルコインがこれほど人気を博し、使いやすくなった理由の1つは、基盤となるインフラストラクチャの進歩です。
1 つには、ブロックチェーンの容量が拡大していることが挙げられます。イーサリアムL2ネットワークやその他の高スループット ブロックチェーンの台頭により、ブロックチェーンは4年前と比べて1秒あたり50倍以上のトランザクションを処理できるようになりました。
出典:State of Crypto Report 2024
さらに驚くべきことに、イーサリアムの今年最大のアップグレードである「Dencun」(別名「protodanksharding」またはEIP-4844)は、2024年3月の実装後、レイヤー2ネットワークの手数料を大幅に削減しました。
実装以降、イーサリアムのレイヤー2ネットワークでは、その価値が上昇しているにもかかわらず、手数料は減少傾向にあります。これは、ネットワークの人気と処理効率が同時に向上していることを示しています。
出典:State of Crypto Report 2024
ブロックチェーンのスケーリング、プライバシー、相互運用性に重要な影響を与えるもう 1 つのテクノロジーであるZK Proof(ゼロ知識証明)についても同様です。
イーサリアムにおけるZK Proof(ゼロ知識証明)技術は、低コスト化と利用拡大が同時に進んでいます。月々の検証にかかるコストは減少する一方で、ZKロールアップで扱われる取引の価値は増加しています。これは、この技術がより効率的に取引コストをさげながら、より広く採用されていることを示しています。
(注:ZKプルーフとは、ブロックチェーン上での取引の正当性を、詳細な情報を公開せずに証明できる技術です)
出典:State of Crypto Report 2024
ZK Proof(ゼロ知識証明)は、開発者にとって安価で検証可能なブロックチェーンコンピューティングへの新しい道を開くため、非常に有望な技術です。
それでも、ZKベースの仮想マシン(zkVM) が従来のコンピューターのパフォーマンスに完全に追いつくまでには、まだ長い道のりがありますが、一歩一歩改善が進んでいます。
出典:State of Crypto Report 2024
5. DeFiは依然として人気があり、成長を続けている
ブロックチェーン インフラストラクチャ以上に開発者を惹きつけている唯一のカテゴリは、DeFi(分散型金融)です。これは、1 日のアクティブ アドレス全体のうち 34% を占め、最も多くの暗号資産取引量を占めているカテゴリです。2020年夏のDeFiの登場以来、分散型取引所 (DEX) は、暗号資産取引全体におけるシェアのうち、10% を占めるまでに成長しました。
暗号資産の取引は4年前にはほぼ全て中央集権型取引所で行われており、たった4年間の間にDeFiの台頭が進んでいます。
出典:State of Crypto Report 2024
現時点で1,690億ドル以上が数千ものDeFiプロトコル内にロックされています。DeFiの主要サブカテゴリには、ステーキングとレンディングが含まれます。
出典:State of Crypto Report 2024
イーサリアムがプルーフ・オブ・ステークへの移行を完了し、ネットワークのエネルギー消費と環境への影響を大幅に削減してから、ちょうど2年が経ちました。それ以来、ステーキングされているイーサリアム(ETH)の割合は2年前の11%から29%に増加し、ネットワークのセキュリティが大幅に強化されました。
出典:State of Crypto Report 2024
DeFiは発展の初期段階にありますが、米国の金融システムが抱える課題への有望な解決策となっています。1990年以降、米国では銀行数が3分の2も減少し、少数の大手銀行による寡占化が進んでいますが、DeFiはこうした中央集権化への対抗策として注目を集めています。
出典:State of Crypto Report 2024
6. 暗号資産はAIの最も差し迫った課題のいくつかを解決する可能性がある
AIは2024年のテクノロジー業界全体、そして暗号資産分野においても最も注目されているトレンドの一つとなっています。
特に興味深いのは、暗号資産とAIユーザーの強い相関関係です。暗号資産のインフルエンサーたちがAIについて頻繁に発信しているだけでなく、ChatGPTのユーザーと主要な暗号資産サイトの利用者の間に大きな重複が見られます。これは両者のコミュニティが密接に結びついていることを示唆しています。
出典:State of Crypto Report 2024
暗号資産開発者もAIと強いつながりを持っています。ダッシュボードによると、暗号資産プロジェクトの約3分の1 (34%) が、構築しているカテゴリに関係なくAIを使用していると回答しており、1年前の27%から増加しています。応用AI技術で最も人気のあるカテゴリは、ブロックチェーンインフラストラクチャのプロジェクトです。
出典:State of Crypto Report 2024
最先端のAIモデルのトレーニング費用が過去10年間で年間4倍のペースで増加していることを考えると、AIはインターネット上で権力の集中化を進める傾向にあると考えられます。このまま放置すれば、最新のAIモデルをトレーニングするリソースを持つのは最大手のテクノロジー企業だけになる可能性があります。
出典:State of Crypto Report 2024
AIの集中化という問題に対して、ブロックチェーン技術は分散化という解決策を提供しています。実際に、多くの暗号資産プロジェクトがAIの民主化に向けた取り組みを始めています。
具体例として:
- Gensyn:AIコンピューティングの利用機会を広く開放
- Story:知的財産権を追跡し、クリエイターへの適切な報酬を実現
- Near:誰もが利用できるオープンソースのAIプロトコルを提供
- Starling Labs:デジタルコンテンツの信頼性と出所を確実に証明
これらのプロジェクトは、AIの技術や恩恵を特定の企業だけでなく、より多くの人々が活用できる環境づくりを目指しています。
出典:State of Crypto Report 2024
暗号資産とAIの相互作用は今後数年間でさらに強化されていく可能性があります。
7. よりスケーラブルなインフラストラクチャにより、新しいオンチェーンアプリケーションが実現可能
ブロックチェーン技術の進化により取引コストが大幅に下がり、処理能力も向上したことで、これまで実現が難しかった多くの暗号資産アプリケーションが現実のものとなっています。
その好例がNFT市場です。数年前は取引コストが高額だったため、NFTは数十億ドル規模の二次市場で取引される投機的な商品でした。しかし現在は、ZoraやRodeoといったソーシャルアプリケーションで、誰でも手軽にNFTコレクションを作成できるようになりました。取引手数料の大幅な低下により、NFTの使われ方そのものが大きく変化しました。
出典:State of Crypto Report 2024
ソーシャルネットワークも別の事例として挙げられます。
現在、ソーシャルネットワークはオンチェーン活動全体のうち、ほんの一部を占めるに過ぎませんが、開発者の関心を引き付けています。
ダッシュボードによると、2024年には暗号プロジェクトの10.3%がソーシャル関連になると予測されています。実際、Farcasterに関連するプロジェクトなど、ソーシャルネットワーク関連のプロジェクトは、今年最もホットなビルダーサブカテゴリのトップ5に入っています。
出典:State of Crypto Report 2024
ソーシャルプラットフォームの開発が進む一方で、ブロックチェーンゲームは処理能力の限界に挑戦し続けています。例えば、海洋冒険RPGの「Pirate Nation」は、イーサリアムのレイヤー2(ロールアップ)において、最も多くの処理能力(ガス)を継続的に消費しているゲームの一つです。
出典:State of Crypto Report 2024
2024年の米国大統領選を前に、暗号資産を使用した予測市場が、違法とされているにもかかわらず注目を集めています。この傾向は、従来型の予測市場にも影響を与えています。
例えば、米国商品先物取引委員会(CFTC)に登録されている予測市場のKalshiは、選挙関連の先物契約上場について連邦裁判所で勝訴しました。これにより、正規の取引所では選挙関連の先物取引が合法的に行えるようになりました。
出典:State of Crypto Report 2024
このように、暗号資産やWeb3アプリケーションにおいて、消費者行動の変化の兆しが見え始めています。ブロックチェーンのインフラストラクチャが扱いにくく、取引コスト(ガス代)が高かった時代には、こうした新しい体験はすべて手に負えないものでした。
今後はブロックチェーン技術の性能向上と低コスト化がさらに進み、より多くのユーザーが日常的にWeb3アプリケーションを利用するようになるでしょう。
出典:State of Crypto Report 2024
では、暗号資産業界の現状をまとめてみましょう。この1年間、業界は大きく前進しました。
- 制度面での進展
- ビットコン・イーサリアムETFの承認・上場
- 暗号資産法案の可決
- 技術基盤の進化
- イーサリアムL2などによる処理能力の向上
- Solanaなど高性能ブロックチェーンの台頭
- アプリケーションの発展
- ステーブルコインの普及・定着
- AI、ソーシャル、ゲームなど新分野への展開
現時点で、暗号資産市場が「価格サイクル」の第5波に入ったかどうかは判断できません。しかし、業界全体としては着実な発展を遂げています。ChatGPTが示したように、たった一つの革新的なプロダクトが業界全体を変革する可能性を秘めているのです。
レポート出典元:https://a16zcrypto.com/posts/article/state-of-crypto-report-2024/
Web3分析ツール、オンチェーン分析のおすすめめサービス
Web3業界は、トレンドの移り変わりがとても早く、変化がダイナミックなため、きちんとトレンドを分析し、常にきちんとした一次情報を把握する必要があります。
MCBでは、Web3分析ツールやオンチェーン分析サービスを提供する企業を紹介します。各社ともに業界でも有名な企業群になりますので、ぜひWeb3トレンドの分析やキャッチアップを検討している方はこちらに掲載されているサービスををぜひご活用ください。
Tempura Technologies株式会社:『Sakaba Whitelabel』ロイヤリティプラットフォーム
Tempura Technologies株式会社は、飲食店向けに特化したWeb3ロイヤリティプラットフォーム『Sakaba Whitelabel』を展開しています。このプラットフォームは、従来のポイントカードやスタンプカードをデジタル化し、ブロックチェーン技術を活用して顧客体験を革新的に向上させます。NFTを活用したメンバーシップ管理により、来店履歴や購入データを安全に記録し、よりパーソナライズされた特典提供を実現します。
プラットフォームは、店舗オーナーに直感的な管理画面を提供し、キャンペーンの作成やロイヤリティプログラムの運用を効率化します。また、クロスプロモーション機能により、複数店舗間での相互送客や共同キャンペーンの実施も容易になります。さらに、詳細な分析ツールにより、顧客の行動パターンや嗜好を把握し、効果的なマーケティング戦略の立案を支援します。
項目 | 内容 |
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会社名 | Tempura Technologies株式会社 |
所在地 | 東京都渋谷区恵比寿1-18-14 恵比寿ファーストプレイス3F |
設立年月日 | 2019年4月1日 |
主要サービス |
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実績 |
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Tempura Technologies株式会社:『Sakaba Whitelabel』の詳細はこちら
株式会社KEKKAI:KEKKAI Security SDK/API
株式会社KEKKAIは、Web3アプリケーションのセキュリティを強化する包括的なソリューション「KEKKAI Security SDK/API」を提供しています。このプラットフォームは、スマートコントラクトの脆弱性診断からフィッシング対策、不正取引の検知まで、Web3特有のセキュリティリスクに対する多層的な保護を実現します。独自開発のAIアルゴリズムにより、リアルタイムでの脅威検知と自動防御を可能にしています。
開発者は、KEKKAIのSDKを導入することで、高度なセキュリティ機能を容易に実装できます。APIを通じて、トランザクションの安全性評価やウォレットアドレスのリスクスコアリングなどの機能にアクセスできます。また、24時間体制の監視システムと組み合わせることで、インシデント発生時の迅速な対応も可能です。
項目 | 内容 |
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会社名 | 株式会社KEKKAI |
所在地 | 東京都港区六本木3-2-1 住友不動産六本木グランドタワー |
設立年月日 | 2020年7月15日 |
主要サービス |
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実績 |
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株式会社KEKKAI:KEKKAI Security SDK/APIの詳細はこちら
株式会社クッシー:bagel analytics
株式会社クッシーは、Web3プロジェクトのための高度なデータ分析プラットフォーム「bagel analytics」を提供しています。このサービスは、ブロックチェーン上のトランザクションデータを包括的に分析し、ユーザー行動やトークン流通状況をリアルタイムで可視化します。独自開発のアルゴリズムにより、複雑なDeFiプロトコルのパフォーマンス評価やNFTプロジェクトの市場分析を自動化しています。
プラットフォームは、カスタマイズ可能なダッシュボードを通じて、プロジェクトの重要指標をわかりやすく表示します。また、予測分析機能により、市場トレンドやユーザー行動の変化を事前に把握することができます。APIを通じたデータ連携により、既存のビジネスインテリジェンスツールとの統合も容易です。
項目 | 内容 |
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会社名 | 株式会社クッシー |
所在地 | 東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー |
設立年月日 | 2021年1月20日 |
主要サービス |
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実績 |
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株式会社クッシー:bagel analyticsの詳細はこちら
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