Web技術は日々進化しており、近年ではWeb3という新たな概念が登場しています。ブロックチェーン・暗号資産(仮想通貨)関連は難解なものが多く、情報の更新も早いため、言葉として聞いたことはあっても内容がよくわからないという方は多いでしょう。
Web3技術の利点を理解するためには、これまでのWebが歩んできた流れを把握したうえで、ブロックチェーン技術の概要を知らなければなりません。
この記事では、Web3の特徴や使われている技術をわかりやすく簡単に解説しながら、Web3がどのような場面で活用できるのかもサービス例もあわせて次のようにご紹介します。
- Webのこれまでの歴史とWeb3
- Web3の根幹のブロックチェーン技術の解説
- わかりやすいWeb3の4つの特徴
- Web3を活用したサービス例
- Web3が解決すべき今後の課題
「なにか自分の活動にWeb3を取り込んでみたい」「ビジネスにWeb3を融合させることでイノベーションを起こしたい」「最新のWebトレンドを抑えたい」という方は、ぜひご参考にしてください。
目次
Web3とはWebの新しい形のこと
Web3とは、ブロックチェーン技術とスマートコントラクトを基盤とし、中央管理者が存在するプラットフォームを介さない新しいWeb技術です。
データ管理にブロックチェーンを活用することで、第三者の仲介を経ることなく、個人間でデータ利用や管理が可能だと言われています。
暗号資産(仮想通貨)には、ブロックチェーンを利用し自動で契約行為が可能なスマートコントラクトという機能があります。Web3の根幹技術は、スマートコントラクトをさまざまな形態に活用し、データを伴う取引や契約などを自動化・ルール化し、今までは作りえなかったWebサービスを提供するのがWeb3だと言えます。
インターネットの世界は、日々新たな技術が登場し、黎明期から大きく様変わりを続けています。昨今ではAIやブロックチェーンの登場により、さらに様相の変化が著しくなったと言えるでしょう。次表は、これまでのインターネットの特徴をまとめたものです。
名称 | 年代 | 特徴 |
Web1.0 | 1990年代ごろ~ | ・中央集権型 ・一部の人が情報発信 ・一方向のコミュニケーション |
Web2.0 | 2010年代ごろ~ | ・中央集権型 ・多くの人が情報発信 ・双方向のコミュニケーション |
Web3.0 | 2020年代ごろ? | ・分散型 ・多くの人が情報発信 ・コミュニケーション領域の拡大 |
初期のインターネットであるweb1.0は、テキストベースのコンテンツが大半を占めていました。一方向の情報発信が主流で、インターネットユーザーの多くはコンテンツを閲覧するだけでした。
2000年頃からのインターネットはweb2.0と呼ばれ、通信速度が向上したことから動画コンテンツが普及しはじめます。くわえて、SNSの拡大により双方向のコミュニケーションが活発となったほか、誰もが情報発信できる時代になりました。
出典元:経済産業省「経済秩序の激動期における経済産業政策の方向性」
Web2.0の情報発信の舞台は、あくまで用意されたプラットフォーム上です。データは特定のプラットフォーマーに蓄積されているため、セキュリティ上のリスクがあります。
また、プラットフォーマーはアカウントの凍結やコンテンツの削除など、大きな権限を所有している存在です。意に沿わない発信を除外するといった事態も危惧されます。
このような中央集権型のネットワークを変えるため、新たにweb3という考え方が登場しました。Web3ではブロックチェーン技術を使用し、ユーザーデータを個人が相互に保有します。通信やデータ保存のためにプラットフォーマーのサーバーを経由する必要がありません。
Web3とは、ユーザーが自律分散的にデータを管理する仕組みを作ることで、中央集権的な状況を脱却しようとする試みと言えます。
Web3の根幹はブロックチェーン技術と暗号資産(仮想通貨)
Web3はブロックチェーン技術を利用した分散型のネットワークです。Web3を理解するためには、ブロックチェーンについて知っておく必要があります。
ブロックチェーンとはデータをブロック単位で管理し、それを鎖のように連結して保管する技術のことです。同じデータを複数の場所で管理することから「分散型台帳」とも呼ばれています。
出典元:経済産業省「Web3.0事業環境整備の考え方」
各ブロックには「ハッシュ値」が書き込まれ、直前のブロックの内容を記録しています。データの整合性を保つにはそれ以降のブロックもすべて書き換えなければならないため、改ざんは困難です。
また、ネットワーク上にある端末同士を直接接続し、データのやり取りに第三者を介さないのも特徴です。暗号資産(仮想通貨)のひとつであるビットコインを実現するための技術として開発された経緯があり、主に金融取引履歴で利用されています。
現在では食品のトレーサビリティ確保や災害時の物資マッチングなど、金融分野以外でも活用されています。
Web3の4つの特徴をわかりやすく簡単に解説
Web3の主な特徴は以下の4つです。
- 分散型のデータ管理体制
- 情報セキュリティの向上
- 自己主権性の向上
- 自律性の向上
いずれもブロックチェーン技術に起因する特徴です。順番に解説します。
分散型のデータ管理体制
Web3では、データの利用や保存のために特定のプラットフォーマーを経由する必要がありません。そのため、ユーザーはプラットフォーム利用料や手数料を払いすぎることなく、効率的に情報のやり取りができます。
Web3が主流となれば、インターネットの自由度が増すことにつながります。
情報セキュリティの向上
Web3では取引データのブロックを複数のユーザーが保持し、相互に同一性を補完します。取引データを改ざんしようとすれば、分散しているすべてのブロックに対して行う必要があります。さらに、ユーザーの間でデータが公開されているため透明性が高いです。
これまでの一極集中型と異なり、改ざんや不正がしにくいデータ管理手法となります。
自己主権性の向上
Web3は特定の組織やユーザーが管理するものではありません。そのため、一般的に権力の大きいプレーヤーに左右されず、参加者個人が自由に取引できるようになると言われています。コンテンツに制限を加えられたり、情報を事前に閲覧されたりする可能性が低いです。この仕組みをDID(分散型ID・Decentralized Identity)という、自己管理型のIDに活用したものがあります。
また、現在のWeb2.0では、SNSなどのプラットフォームに書き込まれたデータの所有権は企業にあります。これに対し、Web3ではブロックチェーン上に情報が書き込まれるため、データの所有権はユーザーが保持します。たとえプラットフォームの運営が終了しても、作成したコンテンツやデータは消えません。
一方で、自己責任の範囲が拡大する点に注意が必要です。たとえば、それぞれの身元証明に必要なデータ等は自分自身で適切に管理する必要があります。
自律性の向上
利用者が自由にサービスを構築できる点もWeb3の特徴です。たとえば「スマートコントラクト」を実装すれば、取引の自動化ができます。スマートコントラクトとは、あらかじめ定められた条件を満たしたとき、取引の完了まで自動で台帳に記録する機能です。
身近でわかりやすい例として自動販売機がよく挙げられます。商品と値段が提示されていて、購入者が代金を投入すれば自動的に商品の受け渡しが完了する点に類似性があります。スマートコントラクトはこの仕組みをより高度に広範なデジタルデータに適応できるため、発送次第で様々な機能を実装することができます。
プラットフォームが用意した機能に制限されない点で、インターネット利用時の自律性が向上すると言えます。
Web3を活用した3つのサービス例の紹介
Web3を用いたサービスには次のようなものがあります。
実際のサービスはこれらを組み合わせて展開されています。それぞれどのようなものか把握しておきましょう。
DeFi(分散型金融・Decentralized Finance)
「Decentralized Finance(分散型金融)」の略称で、暗号資産などの資産取引に使われる金融システムです。特定の管理者はおらず、ブロックチェーン上を用いて利用者同士で取引を完結できます。
DeFiは取引の自由度が従来の制度に比べて格段に高いのが特徴です。たとえば、銀行のように営業時間の概念がありません。特定のサーバーで管理しておらず、取引はスマートコントラクトにより処理されるため第三者が必要ないため、メンテナンスでサービスが利用できないといった心配も不要です。くわえて、完全にネットワーク上での取引となるため、インターネットに接続できれば、世界中どこでも取引が可能です。
手数料が安く金利も定期預金に比べて高いですが、暗号資産の価値が暴落すれば資産が目減りするリスクやハッキングによるリスクを秘めています。また、個人間の取引のため、トラブルが起きても自分で解決しなければなりません。
利便性は高いものの、安全に利用するには正しい知識が必要なシステムです。
NFT(非代替性トークン・Non-Fungible Token)
NFTは、「Non-Fungible Token」の略称で、「非代替性トークン」と呼ばれます。トークンと言うと一般的には暗号資産(仮想通貨)をイメージしますが、ここでは情報資産全般と捉えてください。複製が簡単にできるデジタルデータは、オリジナル性の証明が困難でした。
NFTはブロックチェーン技術を活用することで、デジタルデータの唯一性を担保しています。デジタル版シリアルナンバーと考えると分かりやすいでしょう。
NFTによりデジタルデータは個別の価値を持ち、新たな付加価値を生じさせられるようになりました。たとえば、二次販売時に売上の一部をクリエイターに還元できるようになるため、アート業界などで注目されています。
ほかにもトレーディングカードをNFT化したり、自治体のご当地キャラクターをNFT化したりといった事例があります。
DAO(分散型自律組織・Decentralized Autonomous Organisations)
「Decentralized Autonomous Organisations(分散型自律組織)」の略称で、ブロックチェーン上で管理される組織のことを指します。組織の経営陣は存在せず、参加者の自律性を重んじている点が特徴です。
DAOでは暗号通貨を保有することで発言権や投票権を得て、意思決定に参加できるようになります。スマートコントラクトを取り入れ、事前に定められたルールに従って組織運営を行います。
実際に利用された事例として、新潟県の「山古志DAO」があります。錦鯉のアートをNFT化して販売し、アートの保有者は「デジタル村民」としてDAOに参加できる仕組みです。
Web3の普及には課題も多い
Web3はこれまでの中央集権的なインターネットから分散型のインターネットへ変革するものです。Web3が主流となればユーザーの自由度が高まるため、期待が高まります。
しかし、Web2からWeb3へ移行するには解決しなければならない課題が多くあります。以下はその一例です。
- 技術的な制約
- 法の未整備
- 利用者のリテラシーの向上
技術的な制約としては、ブロックチェーンの処理性能の限界が挙げられます。また、記録するデータ量が多くなればなるほど電力使用量が増加し、手数料が高くなることもデメリットです。サービス維持のため管理コストが高くなれば、恩恵が感じにくくなります。
法の未整備については、NFTにおける著作権や意匠権の取り扱い、DAOの法的位置づけなどが挙げられます。Web3はまだ実装されて間もない技術のためやむを得ませんが、早期の法改正が待たれるところです。
最後に、Web3の普及には利用者のリテラシー向上が不可欠です。サービスの管理者が存在せず、取引の結果はすべて自己責任となるからです。Web3を安全に利用するには、ブロックチェーン技術やトークンの取引方法などを利用者が正しく理解しておく必要があります。
新たなサービスが社会的に認知されて受け入れられるには時間がかかります。スマートフォンも登場時は一部の人が利用しているだけでした。利用者が増えて社会的に認知されれば、制約の解消や法整備の推進が期待できるでしょう。
Web3が一般に普及すればインターネットのあり方がこれまでと大きく変わるため、今後の動向に注目です。