分散型台帳技術は、近年になり注目を集めている先端技術の一つです。
ビットコインやその他の暗号資産(仮想通貨)に欠かせない技術として知られる一方で、金融や医療、さらにはサプライチェーン管理など多様な分野で活用の可能性が広がっています。
本記事では、分散型台帳技術の全体像からその意味や仕組み、メリット・デメリット、そして具体的な活用例に至るまでをわかりやすく解説していきます。
分散型台帳技術の全体像
分散型台帳技術の意味
分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology、略してDLT)は、分散ネットワークにおいて同じ台帳を複数の参加者間で共有・管理できる技術のことを指します。
従来のデータ管理方式では、中央の管理者がデータを一元的に管理する必要がありましたが、分散型台帳技術ではネットワーク上のすべての参加者が台帳のコピーを保有し、更新が行われる際にその情報がネットワーク全体に共有されます。
これにより、データの改ざんが困難になるとともに、システムの信頼性が向上します。
出典元:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd133310.html
分散型台帳技術とブロックチェーンの違い
ビットコインをはじめとした暗号資産の基盤技術であるブロックチェーン。一般的に勘違いされがちですが、『分散型台帳技術=ブロックチェーン』という認識は誤りです。ブロックチェーンは、分散型台帳技術の内の一つと考えるのが適切です。
ブロックチェーンは、データをブロックという単位でまとめ、それを鎖(チェーン)のように時系列で連結させることで、分散型ネットワークにおけるデータを安全に記録・管理する技術です。
一方で、分散型台帳技術にはブロックチェーン以外にも多様な形態が存在します。例えば、DAGやHashgraphなどです。この2つは、ブロックチェーンとはデータの管理方法が大きく異なっているため、全く別物の分散型台帳技術として区別されています。
DAGとHashgraphについては、記事後半の『分散型台帳技術の種類』でご紹介いたします。
分散型台帳技術と仮想通貨(暗号資産)との関係性
分散型台帳技術は、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)の基盤技術となっています。
ビットコインは分散型台帳技術の一つであるブロックチェーンを活用する形で生み出されたことにより、中央集権的な管理者を介さないデジタル資産の取引を可能としました。また暗号資産の一種であるNFT(Non-Fungible Token)の取引においても、分散型台帳技術が活用されています。
分散型台帳技術の仕組み
分散型台帳技術は、複数の分散ノード間で一つの台帳を共同管理する仕組みです。ノードとは、分散ネットワーク上に存在する台帳のコピーを保持する参加者を指す言葉です。
分散ネットワークでは、各ノードが台帳の完全なコピーを保持することによって、データがネットワーク全体で広くアクセス可能な状態に保たれます。また、取引データ(トランザクション)が新たに追加された時においては、データの整合性を確保するためにノード間で合意形成を行う仕組み(一般的にはコンセンサスアルゴリズムと呼ばれる)に基づいて各ノードが台帳の更新を検証し、同じ状態に同期させることで、データの正確性と一貫性が確保されます。これにより、ネットワーク上の全ノードが共通の合意に基づく信頼できる台帳を共有することが可能になります。
上記のような構造により、システム全体の障害への耐性が向上し、特定のノードがダウンしてもネットワーク全体の安全性と可用性が保たれます。この信頼性とセキュリティの高さにより、分散型台帳技術はサプライチェーン管理やアート、金融取引、デジタルアイデンティティなどの幅広い領域での活用が期待されています。
分散型台帳技術のメリット・デメリット
分散型台帳技術のメリット
メリットとしては、主に以下の2つが挙げられます。
- データ改ざんへの耐性がある
- システムの安定的な稼働ができる
ブロックチェーンは、取引データをブロックという単位で管理し、各ブロックに前のブロックのハッシュ値を含めて鎖のようにリンクさせます。この特徴により、過去のデータが改ざんされた場合、その影響がすべての後続ブロックに及ぶため、改ざんが即座に検知されます。これにより、一度記録されたデータは改ざんが非常に難しくなります。
加えて、ブロックチェーンでは、データがネットワークに接続されている各ノードに分散して保存されているため、一部のノードが停止する、あるいは悪意のある行動をしたとしても、ネットワーク全体が停止することはありません。
分散型台帳技術のデメリット
デメリットとしては、主に以下の2つが挙げられます。
- 記録されたデータが削除できない
- 法律が未整備
分散型台帳技術の大きなデメリットの一つは、記録されたデータが削除できないことです。分散型台帳技術は一度書き込まれたデータを永続的に保存し、後から改変や削除ができない構造になっています。もし特定の個人にとって不都合なデータが書き込まれたとしたら、それが永久に消えず公に誰でも閲覧できるデータとなってしまうという危険性があります。
最後に、分散型台帳技術を活用したビジネスを展開したいと考えている事業者にとっては、未だ法律が未整備であるというデメリットも存在しています。ブロックチェーン関連の事業では、金融商品取引法や資金決済法などの関連規制を考慮する必要があり、事業開始前に専門弁護士への相談が推奨されます。黎明期と比較すれば少しずつ法律の整備は進んではいるものの、現時点においてもリーガル面での不安要素が多く存在していることは否めません。
分散型台帳技術の活用例
分散型台帳技術は先端技術でまだまだ研究段階ではありますが、少しずつビジネスシーンへの活用が進んでいます。特に、主に以下の領域で活用が進んでいます。
- 金融
- 不動産
- アート
- 物流
- 教育
- エネルギー
- ゲーム
金融およびゲーム領域に関しては特に分散型台帳技術の活用が進んでおり、分散型金融(Decentralized Finance = DeFi)やブロックチェーンゲームという新たな概念も誕生しています。
上述した領域における分散型台帳技術の具体的な活用例に関しては、以下の記事で紹介しております。ぜひご覧いただければ幸いです。
分散型台帳技術の種類
分散型台帳技術は一般に、データ構造やコンセンサス・アルゴリズムなどの観点から種類を分類することができます。この項では、分散型台帳技術の著名な例として、ブロックチェーン、DAG、Hashgraphの3種類を紹介します。
ブロックチェーン
ブロックチェーンは最も知名度のある分散型台帳技術です。ブロックチェーン技術は、取引履歴を鎖のように結びつけ、暗号技術によってその正確性を保つ画期的な技術です。
取引データを一定量格納したデータをブロックと呼び、そのブロックが連続的に生成され鎖(チェーン)のように繋がれていく、という意味で『ブロックチェーン』という名前がついています。
ブロックチェーンではコンセンサスアルゴリズムと呼ばれる合意形成のための仕組みがあり、各ブロックチェーンの種類により採用されているコンセンサスアルゴリズムが異なっています。代表的な例を挙げると、ビットコインはPoW(Proof of Work)、イーサリアムはPoS(Proof of Stake)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムに基づいてブロックの生成(データの確定・記録)が行われています。
有向非循環グラフ(DAG)
ブロックチェーンと異なるデータ構造の分散型台帳技術として最も著名な技術は、有向非循環グラフ(Directed Acyclic Graph)です。一般にDAG(ダグ)と呼ばれています。
DAGは、ブロックチェーンのようにブロックを鎖状に連結してデータの記録・管理を行うのではなく、各トランザクションが他の複数のトランザクションを承認する構造を持っています。ネットワーク内のノードは分岐や並列処理が可能なグラフ構造を利用してデータを管理するため、この構造により、ブロックチェーンと比べて高いスケーラビリティと迅速な取引処理を実現できるとされています。
出典元:https://blog.sui.io/all-about-directed-acyclic-graphs/
DAGには従来のブロックチェーンにおける『ブロック』の概念が存在しないため、それに伴いマイナーやブロック生成者も存在しません。その代わりに、トランザクションの発行を行うユーザー自らが過去のトランザクションを承認する役割を果たすため、承認のための手数料や遅延が抑えられるという特徴があります。
DAGは多くのブロックチェーンプロジェクトに採用されており、代表的な例としてはAvalanche(X-Chainのみ)、Sui、IOTAなどが挙げられます。
Hashgraph
出典元:https://www.hashgraph.com/
Hashgraph(ハッシュグラフ)は、アメリカのSwirlds,Inc(スワールズ社)が開発した分散分散型台帳技術です。Hashgraphは『Gossip about Gossip』と『Virtual Voting』と呼ばれる独自のシステムにより、ブロックチェーンよりも効率的な合意形成を実現しています。
『Gossip about Gossip』は、各ノードが他ノードにトランザクション情報を『Gossip(噂)』のように伝える仕組みです。『Gossip about Gossip』の解説は割愛いたしますが、要するにブロックチェーンのようなチェーン状のデータ管理ではないという点だけ抑えていただければ問題ないです。『Virtual Voting』は、ノードが収集したトランザクション情報を用いて、投票を仮想的に行う(どのトランザクションが正当かを自動的に判断する)仕組みです。詳しくは公式ドキュメントをご覧ください。
出典元:https://docs.hedera.com/hedera/core-concepts/hashgraph-consensus-algorithms
Hashgraphの強みは、スピードと公平性にあり、1秒あたり数千の取引を処理しつつ、中央管理なしで高い信頼性を確保できます。Hedera Hashgraphというプロジェクトがこの技術を基にした分散型プラットフォームを展開しており、エンタープライズ利用を見据えた分散型台帳技術としても注目されています。
分散型台帳技術の活用支援企業のご紹介
Bunzz pte ltd
出典元:https://enterprise.bunzz.dev/ja
Bunzz pte ltdは2022年にシンガポールで創業された会社であり、アジア圏最大級のスマートコントラクト開発及びセキュリティプラットフォーム『Bunzz(バンズ)』を提供しています。
同社はエンタープライズ向けのWeb3・ブロックチェーン関連事業のPoC、リサーチ、コンサルティングに加え、システム開発の支援サービス『Bunzz for Enterprise』を展開しています。Web3業界やブロックチェーン技術に精通したスペシャリストによって、Web3関連事業に必須な業界知識や観点のキャッチアップ、スマートコントラクト等のWeb3関連技術の実装まで一気通貫でサポート可能となっています。
BunzzはAIを活用したスマートコントラクトのセキュリティ監査サービス『Bunzz Audit』も展開しており、国内外のプロジェクトに監査を提供した実績があります。このような実績から、プロダクトのセキュリティ強化にも対応可能な点が魅力となっています。
項目 | 内容 |
会社名 | Bunzz pte ltd |
会社所在地 | シンガポール |
設立年月日 | 2022年5月26日 |
対応領域 | ・Web3システムの受託開発
・Web3コンサルティング ・セキュリティ監査 |
実績 | ・大手SIer、Oasysブロックチェーンへの導入 ・経産省主催「ブロックチェーンハッカソン 2019」コンピュータ・ソフトウェア協会賞、副賞 ・東京都主催「世界発信コンペティション」にて革新的サービス特別賞を受賞 |
コンセンサス・ベイス株式会社
出典元:https://www.consensus-base.com/
コンセンサス・ベイス株式会社は2015年に設立され、これまでに多くの企業へブロックチェーン事業のサポートを提供してきました。同社は、外資系コンサルティング会社出身者やMBA保持者など、最新の知見を持つ経験豊富な人材を揃え、技術面とビジネス面の両方からブロックチェーン事業を支援する体制を整えています。
また同社は、多種多様なブロックチェーン技術に精通し、特定のプラットフォームに依存することなく、クライアントのニーズに合わせた最適なソリューションを提供しています。
ブロックチェーンを用いたシステム開発においては、ただ単にデータベースの代替としてブロックチェーンを利用するのではなく、適切な秘密鍵管理、マルチシグの設計、パブリックまたはプライベートチェーンの選定、スマートコントラクトのセキュリティ、ノードの運用設計、コントラクトのバージョンアップ可能性、DID・VCの活用、および規制対応など、各種ブロックチェーン設計の複雑な問題に対して、具体的な解決策を提案します。
項目 | 内容 |
会社名 | コンセンサス・ベイス株式会社 |
会社所在地 | 東京都品川区大崎3-5-2 エステージ大崎ビル6F |
設立年月日 | 2015年4月23日 |
対応領域 | ・Web3システムの受託開発
・Web3コンサルティング ・社内研修や人材育成、勉強会の開催 |
実績 | ・大手企業と共同で実証実験を実施(取引実績例:ソフトバンク株式会社、大和総研グループ、株式会社セブン銀行、日本電気株式会社、GMOグローバルサイン株式会社、等) ・大手企業向けにブロックチェーン教育のためのワークショップ・勉強会を実施(取引実績例:NTTデータ経営研究所、株式会社セブン銀行、等) |
株式会社クリプトリエ
参照元:https://www.cryptolier.co.jp/
株式会社クリプトリエは、法人向けのweb3ソリューションを提供する企業です。同社はサービスデザイン、PoC開発、システム導入・運用支援を行っています。また、企業によるNFTのビジネス活用を簡単かつ迅速に実現するプラットフォーム『MintMonster(ミントモンスター)』の提供も行っています。
MintMonsterは、企業が暗号資産を保有せずにNFTを配布できるサービスです。ユーザーはウォレットを必要とせず、QRコードの読み取りとメールアドレスの入力だけでNFTを受け取ることができます。受け取ったNFTはクーポンやチケット、会員証として利用可能です。
また、特定のNFT保有者だけがアクセスできる限定コンテンツを用意する機能や、特定条件を達成したユーザーにNFTを配布する機能なども提供しています。またNFTを配布した結果としてどのようなユーザー行動が行ったのかの分析(NFTの配布数、クーポンの利用状況、限定コンテンツへのアクセス状況、など)も可能となっています。
項目 | 内容 |
会社名 | 株式会社クリプトリエ |
会社所在地 | 東京都中央区銀座1丁目12番4号 N&E BLD.7階 |
設立年月日 | 2023年3月13日 |
対応領域 | ・NFTの発行・活用支援
・Web3コンサルティング ・Web3受託開発 |
実績 | ・三重県明和町竹神社にて2024年1月から2024年12月に頒布するNFT御朱印『e御朱印』の開発
・株式会社博報堂キースリーによる社内向けweb3・NFTの理解促進施策『KEY7プロジェクト』にMintMonsterを提供 ・NECによるNFTを活用した企業ブランド分析施策にMintMonsterを提供 |
まとめ
分散型台帳技術は、ビットコインなどの暗号資産だけでなく、金融や医療、サプライチェーン管理など多くの分野で注目される技術です。
法整備の進展と共に、より多くの国や地域で分散型台帳技術が受け入れられるようになれば、活用範囲はさらに広がり革新的なプロジェクトが増えることが期待されます。
本記事を通じて、分散型台帳技術の基本的な仕組みやメリット・デメリットについての理解を深め、今後の動向を注視するための材料にしていただければ幸いです。
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