イーサリアムのガス代とは?手数料がかかる理由や仕組み、価格変動を解説

By | イーサリアム

イーサリアム ガス代

2024年にはビットコインが史上最高値を更新し、暗号資産ブロックチェーンの認知度は日々向上しているでしょう。まだ暗号資産を購入したことがない方も「ビットコイン」や「イーサリアム」といった暗号資産の名前は聞いたことがあるかもしれません。

暗号資産は、送金するなどのトランザクションを行う際には手数料がかかり、比較的高額になるタイミングもあるため、手数料がどのように決定されるのかを知ることは重要です。この記事では、イーサリアムを利用するときの手数料「ガス代」について解説します。

イーサリアムのガス代とは手数料のこと

イーサリアムの送金などのトランザクションにかかる手数料のことを「ガス代」といいます。ガス代は、ブロックチェーンにネットワークリソースを提供し、スマートコントラクトの検証や承認をおこなうバリデーターに対して支払われるものです。手数料は、そのブロックチェーンの基軸通貨で支払われるため、イーサリアムではETH(イーサ)で支払われます。

ガス代はもともとはイーサリアムの手数料をさす言葉として導入されましたが、次第にスマートコントラクトを搭載した他のブロックチェーンにも広まり、現在ではこれらの手数料をさす一般的な言葉として使われています。

しかし、ビットコインに代表されるような、スマートコントラクトを搭載しないブロックチェーンの場合は「ガス代」という言葉はほとんど使われず、Transaction Fee(取引手数料・送金手数料)などと表記されることが多いです。

イーサリアムとは?ガス代やスマートコントラクトなどをわかりやすく解説

イーサリアムのガス代は変動する

イーサリアムのガス代は一定ではなく、ネットワークの混雑状況により変動します。ガス代はGweiという単位で表され、Gas Priceとよばれる基本料金と、Priority Feeという取引を速やかに処理するための追加料金の合算を、トランザクション(取引)の処理に必要な計算量と掛け算することで決まります。

Gweiは、1Gwei=0.000000001ETHとなっています。

Gas Priceはネットワークの需要に応じてアルゴリズムで調整され、Priority Feeはユーザーが取引を速やかに処理してほしい場合に任意で設定する追加料金です。ユーザーは自分が払えるガス代やPriority Feeの上限を自由に設定できます。

その設定とネットワークの状況に応じて、アルゴリズムが自動的に適切なガス代を決定します。

整理すると、同じ取引を行う場合でも、ネットワークの需要が高い時間帯や、速やかに処理したい場合に、ガス代は高くなることがあります。

ブロックチェーンにより手数料(ガス代)が異なる理由

同じ内容の取引をする場合でも、ブロックチェーンが異なると手数料(ガス代)も異なります。以下では、手数料がブロックチェーンごとに異なる理由を解説します。

ブロック生成時間の差異

ブロックチェーンごとに手数料が異なる理由の一つ目は、ブロック生成時間に差異があることです。これについて説明するために、まずはブロックチェーンのデータが保存される仕組みを解説します。

ブロックチェーンでは、「ブロック」とよばれる塊に情報を格納しています。情報には、取引の履歴と、ひとつ前のブロックの内容に基づくハッシュ値とよばれるものが含まれます。ハッシュ値の詳細な説明は割愛しますが、ハッシュ関数というアルゴリズムを用いて情報をハッシュ化したものです。

このように前のブロックの情報が格納されることによって、データは鎖状になります。れが「ブロックチェーン」という名前の由来であり、ブロックチェーンのデータ保存方法の最大の特徴といえます。

近年では多くのブロックチェーンが開発されていますが、ブロックの生成頻度はブロックチェーンごとに異なります。

イーサリアムは、およそ15秒に1回の頻度で新しいブロックを生成します。これにより、ネットワークは頻繁に取引の処理と検証をおこなうため、比較的待ち時間は短いとされています。しかし、この高頻度なブロック生成によってトランザクション需要は変動しやすく、需要が過度に集中するタイミングも発生してしまいます。

一方、ビットコインは約10分ごとに新しいブロックが生成されます。イーサリアムと比較して生成間隔が長いため、1回のブロック生成で大量の取引がまとめて記録され、需要の波は比較的安定していますが、ネットワークが混雑すると高騰することもあります。

さらに、後述するイーサリアムやビットコインの抱える課題「スケーラビリティ問題」の解決をめざして作られたソラナの場合は、ブロックの生成間隔は1秒未満と非常に短いです。

この極めて高い生成頻度により、大量の取引を迅速に処理できますが、その分ネットワークの安定性を確保するためにスペックの高いマシンなどの高度なインフラが必要ですまた、取引量が急増した場合は、一時的に手数料が高くなることもあります。

このように、ブロックの生成間隔が異なるため、需要の集中の起こりやすさに違いがあることが、ブロックチェーンごとに手数料に差異が出る理由のひとつです。

ブロックに格納できるデータ量の差異

ブロックチェーンによって手数料が異なる理由の2つ目は、ブロックに格納できるデータ量が異なることです。

たとえばビットコインだと、ブロックに格納できるデータの上限は1MBまでと決まっています。ただし、SegWit(セグウィット)という拡張機能を使うと、実質的なデータ格納量が増え、最大で4MB程度までのデータを扱うことができます。

一方イーサリアムでは、ブロックサイズはデータ量として規定されていない代わりに、ガスリミットという仕組みで制御されています。各ブロックのガス代の最大値は3,000万Gweiと決まっており、ブロック内のガスの総量が上限を越えないように自動的に調整されます。このように、ブロックチェーンごとに、ブロック内のデータ容量も、データ容量を決定するためのルールも異なるわけです。

ビットコインのようにブロックサイズがバイト数として規定されているブロックチェーンにおいて、ブロックの上限バイト数が小さく、なおかつ手数料を低めに設定にしていると、自分のトランザクションが処理の枠内に入ることができず、いつまで経っても終わらない可能性があります。

反対に、ブロックサイズが大きければ、手数料が低めの設定でも枠内に入れる可能性が高まります。このため、ブロックに格納できるデータ量が多い場合は手数料が安くなりやすい傾向があります。

イーサリアムのようにガス代の上限でブロックサイズが制限される場合でも、処理の順番という観点ではブロックチェーンと同じことがいえます。加えて、需要が低い時間帯であれば1件の処理にかかるガス代が安くなり、実質的にひとつのブロックに含まれるデータ量は多くなります。この効果によってガス代はさらに安くなる方向に調整されます。

つまり、全般的にブロックに格納できるデータ量が多いと手数料は安く、少ないと高くなる傾向にあり、これがブロックチェーンごとに手数料が異なる2つ目の理由です。なお、あくまでも需要状況により手数料は変動することが前提です。

イーサリアムのガス代高騰とスケーラリビティ問題の関連性

スケーラビリティ問題とは、ブロックチェーンがトランザクション数の増加に伴い処理能力を適切に拡大できない課題を指します。

この問題が顕在化すると、取引が集中した場合に、自分の取引が順番待ちの状態となり、承認に時間がかかることがあります。近年、この課題は業界全体で注目されており、多くのプロジェクトがネットワーク効率の改善を目指した開発を進めています。

また、スケーラビリティ問題の解決が、ブロックチェーン技術のさらなる普及や新しいユースケースの実現に繋がるとも期待されていますが、時価総額の大きいイーサリアムやビットコインにおいて、スケーラビリティの課題は完全に克服されていないのが現状です。

一方、ブロックチェーンの手数料(ガス代)は市場原理に基づき変動します。イーサリアムでは、取引が集中してネットワークが混雑するとガス代の基本手数料が上がり、さらに自分の取引を優先的に処理してもらうためにPriority Feeを上乗せすると、総ガス代がさらに高くなる仕組みです。

このような背景から、スケーラビリティ問題が発生しているときは、ガス代は加速度的に高騰する可能性をもち、スケーラビリティ問題とガス代高騰には深い関連性があります。

イーサリアムのガス代を安くする方法

ガス代を安くするために工夫できるポイントについてお伝えします。

Layer2(レイヤー2)やサイドチェーンを活用する

ブロックチェーンのデータ量やトランザクション処理量の増加に伴う負担を軽減するために開発されたのが、レイヤー2サイドチェーンといった技術です。たとえば、少額決済などの頻度が高い取引は、レイヤー2やサイドチェーンを活用することで、メインチェーンでの処理負担を軽減できます。

レイヤー2では、取引処理を外部で実行し、最終的な結果のみをメインチェーンに記録します。一方、サイドチェーンは独自のブロックチェーンとして機能し、必要に応じてメインチェーンと相互運用します。

レイヤー2とサイドチェーンは、技術的な違いはあるものの、ユーザーの視点で見るとどちらも「メインのブロックチェーンのスケーラビリティ問題に対応するための技術」と捉えて問題ありません。これらを活用することで処理が分散され、ガス代を安くできる場合もあります。

ブロックチェーンは、DeFiNFTゲーム、NFT取引、決済、DEXなど多岐にわたる利用が行われています。レイヤー2やサイドチェーンは、処理全般の効率を高めるために作られています。

代表的なレイヤー2ソリューションであるOptimistic Roll upは、OptimismやArbitrumといったレイヤー2で利用されています。Optimistic Roll upでは、まとまった取引データを正しいものとしてレイヤー1(この場合はイーサリアム)に書き込み、データ容量を削減する技術です。いったん正しいものとして書き込んでいるため、「Optimistic=楽観的」という名前になっています。書き込んだデータには検証を行える期間が存在し、期間内に不正を検証することができます、

暗号資産のレイヤー2(Layer 2)とは?Ethereumの進化を支える技術を紐解く

ネットワークの混雑時間を避ける

イーサリアムのガス代は、先述のとおりトランザクション需要、つまりブロックチェーンネットワークの混雑状況によって変動します。トランザクションが少なそうなタイミングを狙うことでガス代を安くできる可能性があります。

世界中のユーザーが集中する時間帯には手数料が高くなりやすいといわれており、具体例としては、欧米時間での平日、かつ昼間の時間帯が挙げられます。

反対に、深夜や休日などはネットワークが比較的空いているといわれています。このあとに紹介する混雑状況がわかるサイトもあるため、そういったツールをうまく活用して、ガス代の安い時間を選択するとよいでしょう。

送金先が同じ場合できるだけまとめて行う

イーサリアムの場合、送金のガスリミットは21,000Gweiと決まっています。これは送金する金額にかかわらず一定であるため、同じ相手に何度も送金をすることはできるだけ避け、まとめて1回で送金するようにしましょう。

同じ送金先へ複数回の送金を繰り返すと、そのたびにガス代が発生し、結果的にコストが大きくなってしまう可能性があります。また、送金の際には、取引の正確性を確認することで、ミスによる追加のガス代を防ぐことも大切です。なお、送金先が異なる場合にはそれぞれのガス代が必要になるため、有効なのはあくまでも送金先が同一の場合に限ります。

ガス代の確認方法

イーサリアムのガス代は、etherscanbeaconcha.inなどの専門サイトで確認することができます。

出典:etherscan

出典:beaconcha.in

etherscanではGas heatmap、beaconcha.inではGas Price Historyのように、時間や曜日ごとのガス代の変動歴を閲覧することができるため、ガス代が安い曜日・時間帯を予測することができます。

ガス代を安く抑えたい場合は、参照してみましょう。

イーサリアムのガス代に関するよくある質問

ガス代に関するよくある質問をまとめました。

Q.イーサリアムのガス代は経費になる?

イーサリアムのガス代は経費になります。節税効果を期待できるため、確定申告の際は忘れず経費として計上するようにしましょう。

注意点としては、トランザクションが成立したタイミングでのイーサリアムの時価が必要になるということです。後から時価を把握するのは大変なので、取引成立した時点で、時価と取引数量を控え、確定申告の際に日本円に換算できる準備をしておきましょう。

Q.イーサリアムのガス代はいくら? 計算方法は?

ガス代は、以下のように計算されます。

ガス代 = (基本手数料 + 優先手数料) × ガスリミット

基本手数料は先述のGas Price、優先手数料はPriority Feeを意味します。ガスリミットは、利用者が払うガス代の上限値で、取引の複雑さやデータ量によって決まるのが一般的です。ユーザー自身で調整することができますが、低く設定しすぎると処理が遅くなる可能性があります。

ガス代の目安を知るためにおすすめなのが、イーサスキャン(etherscan)というサービスです。取引内容別、優先度別のリアルタイムなガス代の目安を知ることができるため、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ

この記事では、イーサリアムのガス代は取引やスマートコントラクト実行時に必要な手数料のことで、その金額がネットワーク需要によって変動することを説明しました。また、ブロックチェーンによって手数料は異なりますが、手数料はネットワークの安定性やセキュリティを支える重要な役割を果たしているため、手数料は安いだけでは必ずしもよいわけではないことも解説しました。

とはいえ、足元の手数料は安く抑えたいものです。後半で紹介したガス代を安く抑える工夫や、ガス代を調べるサービスを利用して、イーサリアムで効率的かつコストを抑えた取引を目指しましょう。

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