イーサリアム2.0（Ethereum 2.0）またはEth2は、イーサリアムブロックチェーンの大幅なアップグレードであり、現行のイーサリアムネットワークのセキュリティ、スケーラビリティ、持続可能性を向上させることを目的としています。このアップグレードは、イーサリアムの基盤となる技術にいくつかの重要な変更を加えることによって実現されます。
イーサリアムは、ビットコインに次ぐ人気を誇る暗号資産（仮想通貨）であり、スマートコントラクトを実行するためのプラットフォームとして広く使用されています。スマートコントラクトとは、プログラムによって自動的に実行される契約のことで、仲介者なしに取引を行うことができます。
イーサリアム2.0の主な変更点は以下の通りです。
イーサリアムは現在、ビットコインと同じく「プルーフ・オブ・ワーク（Proof of Work、PoW）」というコンセンサスアルゴリズムを使用しています。これは、膨大な計算処理を競い合うことでブロックを生成し、トランザクションを承認するシステムです。しかし、この方法は非常に多くのエネルギーを消費するため、環境への影響が問題視されています。
イーサリアム2.0では、「プルーフ・オブ・ステーク（Proof of Stake、PoS）」に移行します。プルーフ・オブ・ステークでは、ネットワークのセキュリティを維持するために、参加者がイーサリアムを「ステーク」（預け入れ）し、その量や期間に応じて新しいブロックの生成やトランザクションの承認の機会を得ます。これにより、エネルギー消費を大幅に削減し、環境に優しいネットワークになることが期待されています。
- シャーディングの導入
現在のイーサリアムネットワークは、全てのトランザクションが全てのノードで処理されるため、ネットワークの混雑やトランザクション手数料の高騰を引き起こしています。イーサリアム2.0では「シャーディング」という技術が導入されます。シャーディングは、ネットワークを複数のパーツ（シャード）に分割し、それぞれのシャードでトランザクションを処理することで、全体の処理能力を向上させる方法です。これにより、ネットワークのスケーラビリティが向上し、より多くのトランザクションを迅速に処理できるようになります。
- eWASMの導入
イーサリアム2.0では、スマートコントラクトの実行環境として「eWASM」が導入される予定です。これは、現在のイーサリアム仮想マシン（EVM）よりも高速で効率的な実行が可能なWebAssembly（WASM）ベースの新しい実行環境です。eWASMの導入により、より複雑なアプリケーションや高速なトランザクション処理が可能になります。
- Beacon Chainの導入
イーサリアム2.0では、新たに「Beacon Chain」と呼ばれるチェーンが導入されます。Beacon Chainは、プルーフ・オブ・ステークにおけるコンセンサスの達成や、シャーディングの調整などを行う中心的な役割を果たします。Beacon Chainの導入により、イーサリアムのネットワークはより安定し、セキュリティが向上します。
イーサリアム2.0へのアップグレードは、複数のフェーズに分けて行われており、完全な移行には数年かかると予想されています。しかし、このアップグレードが完了すると、イーサリアムはより環境に優しく、より多くのユーザーやアプリケーションをサポートできるようになると期待されています。これにより、イーサリアムは暗号資産だけでなく、分散型アプリケーション（DApps）のプラットフォームとしての地位をさらに固めることになるでしょう。
