RMT(リアルマネートレード)とは?規制と法律、ブロックチェーンで課題を解決する方法

RMTとは

RMT(Real Money Trading)は、リアルマネートレードという言葉の略称で、ゲーム内で得られるアイテムやキャラクターを日本円などの現実通貨を用いて売買することを指しています。オンラインゲームの世界で注目される取引手法の一つです。近年、この取引は急成長を遂げており、国内外での法律や規制、課題などが議論されています。

本記事では、RMTの基本的な定義や仕組み、市場規模に加え、RMTの課題とブロックチェーンがもたらす可能性と解決策について詳しく解説します。また、ゲーム業界における事例や今後の展望についても考察します。

RMTとは?

RMTとは、オンラインゲーム内で取得したアイテムや通貨を現実のお金で取引する行為を指します。多くのゲームプレイヤーが時間や労力をかけてゲーム内で集めたアイテムや、レアアイテムやキャラクターなどを保有しているゲームのアカウント(IDとパスワードのセット)が高値で取引されることであり、近年注目されています。

RMTの仕組み

RMT(Real Money Trading)は、ゲーム内の仮想アイテムや通貨、それらを保有するゲームアカウントを現実の通貨で売買する行為を意味します。たとえば、ゲーム内で入手困難な武器や装備が、現実のお金で取引されるケースが多く見られます。

一般的なRMTの仕組みは、売り手がアイテムやゲーム内通貨、またはそれらを保有するゲームのアカウント情報(IDとパスワード)を提供し、買い手が金銭を支払い、商品を受け取るというものです。この取引は、主に第三者のゲームアカウントやゲームアイテムの二次流通に特化したプラットフォームや専用のウェブサイトを通じて行われます。一部では、ゲーム内で直接取引が行われることもあります。

RMTの代表サービス

RMTの代表的なサービスは、ゲームトレードやRMT Clubなどがあります。

ゲームアイテムなどを保有しているゲームアカウントの情報を売買する仕組みとなっています。商品の購入後、売り手と買い手間のメッセージのやり取りでゲーム内のアカウント情報を共有する事で売買が完了仕組みとなっており、売買のプロセスはメルカリのような二次流通サービスの仕組みと類似しています。

出典:ゲームトレード

RMTの市場規模

RMT市場の規模は年々拡大しており、一部の調査によれば、世界全体で数十億ドル規模に達しているとされています。

市場規模の拡大には、スマホゲームやオンラインゲームの普及が影響を与えています。これらのゲームはプレイヤー間での取引が活発で、特に希少価値の高いアイテムが高額で取引されることが多いです。

株式会社ChillStackによると、日本国内においての市場規模は2019年時点で2700億円と推定されており、その内訳は7割近くがRPGゲーム、アクションゲームと続きます。

出典:株式会社ChillStack

RMTは違法?日本・海外の法律と規制

RMTに関する法律や規制は国や地域によって異なります。日本や海外ではそれぞれ独自の規制が設けられており、法律違反となるケースもあるため注意が必要です。

日本の規制

日本では、厳密にはRMTを直接的に取り締まる法律は存在しません。ただし、多くのゲーム会社が利用規約でRMTを禁止しており、これに違反すると、該当ゲームアカウントの利用停止などのペナルティが科されることがあります。

また、日本のガチャ課金型スマホゲームにおいて、RMTが行われるとガチャアイテムに金銭的価値が付与されることになります。

実際に、国内の大手フリマサービスであるメルカリでは、ゲーム内アイテムやゲームアカウントの売買を禁止しています。

ゲームアカウントやゲーム内の通貨、アイテムなどの電子データ(禁止されている出品物)

概要

ゲームアカウント等の電子データは、取引後に該当アカウントが利用できなくなる等のトラブルに繋がるおそれがあるため、メルカリでの出品を禁止しています。
事務局が禁止出品物に該当すると合理的な理由に基づき判断した場合は、取引キャンセル・商品削除・利用制限などの措置を取る場合があります。

どのようなものが違反になりますか?
  • PC、スマホ、テレビ、アーケードゲームのアカウント
  • ゲーム内通貨やアイテム
  • ゲームアイテムなどが取得できるシリアルコード
  • その他、事務局が不適切と判断したもの
    ※メルカリでは2022年4月28日より「Nintendo SwitchのDL版ゲーム」の取扱いを一律禁止しました
違反にならないケースは?
  • ゲームソフト本体
  • ゲーム用コードが含まれている雑誌やゲームソフト

メルカリ(ヘルプセンター)より引用

海外の規制

海外では、RMTに関する法律や規制は国ごとに異なります。例えば、韓国ではゲーム内のRMTを禁止する法律が存在しており、違反者には罰金や懲役刑が科されることがあります。一方、中国ではRMTは規制されているものの、一部のプラットフォームを通じた取引が黙認されているケースも存在します。

北米やヨーロッパでは、規制が緩やかな国もあり、RMTをビジネスとして成り立たせている企業も存在します。ただし、これらの地域でもゲーム会社の利用規約違反が問われることが多いため、プレイヤーにとっては慎重な対応が求められます。

RMTにおける課題やリスク

RMTの取引には多くの課題やリスクが伴います。不正取引やトラブルが発生するケースも多く、これがプレイヤーやゲーム運営会社にとって深刻な問題となることがあります。

詐欺やアカウントハッキング

RMTの取引において、詐欺行為は頻繁に発生しています。例えば、買い手が支払いを行った後に売り手がアイテムを提供しない、または提供されたアイテムが偽物であるといったケースです。ただし、これはゲームアカウントのようなデジタルな物に限らず、多くのフリマアプリでも頻繁に起こっています。

また、取引中(または取引後)にアカウントハッキングが行われることもあります。アカウントのIDとパスワードを共有しているため、アカウントのハッキングのリスクが上がります。ハッキングによりプレイヤーのアカウントが乗っ取られるケースも報告されています。

規約違反によるアカウント停止リスク

多くのゲーム会社は、利用規約でRMTを禁止しています。RMTを行ったプレイヤーはアカウント停止や永久追放といった厳しい処分を受ける可能性もゼロではありません。

さらに、一部のゲームでは、不正取引を検知するためのシステムが導入されており、不自然な取引が行われたユーザーは自動的にアカウントに対して処分が下されることもあります。

RMT市場が拡大すれば、各ゲーム会社は本腰を上げて対応する可能性も考えられ、今後の各ゲーム会社の対応にも注視が必要です。

取引の匿名性によるマネーロンダリングの懸念

RMTの匿名性を悪用し、マネーロンダリングが行われるケースもあります。一部の組織が不正な資金をRMTを通じて洗浄し、その資金を合法的な形で回収する手法が報告されています。

ゲームバランスの崩壊

ゲーム内バランスの崩壊も大きな課題となります。各ゲーム内で手に入れられるアイテムや通貨などは、ゲーム内での難易度やバランスを考慮して設計されていますが、これらがRMTを通じて二次流通で売買できるようになると、当初の設計していたゲームバランスが崩れる可能性があり、ゲームの面白さやゲームバランスが大きく変わってしまうリスクがあります。

ブロックチェーンで既存ゲームの課題を解決

ブロックチェーン技術は、RMTが抱える多くの課題を解決する可能性を秘めています。この技術を活用することで、ゲーム業界に新たな価値を提供することが可能です。

アイテムがお金になる

既存のゲームでは、RMTは基本的に禁止されています。しかし、ブロックチェーンゲームでは、ゲーム内アイテムや通貨をトークンや暗号資産として取引することが可能です。プレイヤーはゲーム内で獲得したアイテムやゲーム内通貨を売買することで、ゲームをしながら収益を得ることができ、生計を立てることも可能になります。

アイテムの希少価値が保証される

従来のゲームでは、運営会社がアイテムの発行枚数を制御しているため、希少価値が保証されません。しかし、ブロックチェーンゲームでは、NFT等を活用する事でアイテムの発行枚数がブロックチェーン上で記録されており、改ざんが不可能です。

こうした仕組みにより、ゲーム内でのアイテムの希少性が永続的に保証され、プレイヤーは安心して取引を行うことができます。

アイテムを複数のゲームで使える

既存のゲームでは、取得したアイテムはそのゲーム内でしか使えません。しかし、ブロックチェーンゲームでは、取得したアイテムを複数のゲームで使用することができます。

例えば、クリプトスペルズでは、他のブロックチェーンゲームであるマイクリプトヒーローズやブレイブフロンティアヒーローズで取得したキャラクターを使用することも可能です。

これは既存のゲームでは各ゲームと知的財産権(IP)が紐づけており、この知的財産権が第三者によるコピーや悪用を防ぐ事が収益確保のために重要だからです。

一方ブロックチェーンゲームでは、暗号資産やNFTの流動性を増やし、ユーザーを増やす事が重要であるため、さまざまなゲーム間でアイテムやキャラクターを売買できるようになる事はゲーム内アイテムの流動性をあげるためであり、ゲーム全体にとってもプラス働きます。

こうしたマネタイズモデルの違いも、ブロックチェーンゲームと従来のゲームの大きな違いです。

ブロックチェーンゲームとは?仕組みと日本・海外の事例を分かりやすく解説

ゲーム業界におけるブロックチェーン活用事例

ブロックチェーン技術を活用したゲームの代表例として、「Axie Infinity」や「Stepn」が挙げられます。これらのゲームでは、プレイヤーがゲーム内のアイテムやキャラクターを売買して収益を得る事ができます。

Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)

Axie Infinityは、Ethereumレイヤー2ソリューションであるRoninチェーン上で開発されたブロックチェーンゲームで、「Play-to-Earn(P2E)」の代表格として注目されました。

プレイヤーはNFT化されたキャラクター「Axie」を3体集めてバトルを行い、勝利することでSLP(Smooth Love Potion)というトークンを獲得できます。Axieは繁殖(ブリーディング)も可能で、より強力なキャラクターを作ることでゲーム内での収益を増やすというユニークな仕組みも存在しました。

2021年には、フィリピンなどの発展途上国でAxie Infinityの収益だけで生活する人々が登場し、一大ブームを巻き起こしました。

出典:Axie Infinity

Stepn(ステップン)

Stepnは、Solana(ソラナ)ブロックチェーン上で開発された「Move-to-Earn(M2E)」型のフィットネスアプリで、NFTスニーカーを購入し、実際に歩いたり走ったりすることでGST(Green Satoshi Token)を獲得できます。

GSTは暗号資産取引所などでも売買でき、歩いて稼いだGSTを売買して収益化することができます。

Stepnの特徴

  1. NFTスニーカーの購入が必須
    • ユーザーはゲームを始めるために、マーケットプレイスでNFTスニーカーを購入する必要がある。
    • スニーカーには「歩行用」「ランニング用」などの種類があり、耐久値やレベルアップ要素もある。
  2. 歩くことでGSTを獲得
    • アプリのGPSと歩数計を利用し、「実際に動いた距離」に応じてGSTを獲得できる。
    • ただし、1日に動ける時間(エネルギー)が制限されており、より多く動くにはスニーカーを追加購入する必要がある。
  3. GSTの価格変動と収益の低下
    • 2022年のピーク時には1足のスニーカーが数千ドルで取引されており、歩くだけで毎月数千ドルを稼いだユーザーも多く存在していた
    • しかし、新規参入者が減るにつれてGSTの需要が低下し、価格が下落し、現在は低迷している。

出典:App Store

ブロックチェーンゲームのデメリットや危険性について知りたい方は『NFTゲーム(ブロックチェーンゲーム)の危険性は?注意点やリスクを解説』こちらをご確認ください。

NFTゲーム(ブロックチェーンゲーム)の危険性は?注意点やリスクを解説

ゲーム業界の今後の展望

RMTやブロックチェーン技術を巡る動向は、ゲーム業界に大きな影響を与えています。今後の展望として、以下のようなポイントが挙げられます。

RMT規制の強化と業界の対応

RMTに関する規制は今後さらに強化されると予想されます。業界全体での取り組みが求められ、プレイヤーが安全にゲームを楽しめる環境作りが進められるでしょう。

ブロックチェーン技術の進化と普及

ブロックチェーン技術は日々進化を遂げており、今後もその応用範囲は広がっていくと考えられます。この技術を活用した新しいゲームモデルが増えることで、プレイヤーにとってのゲームの選択肢も今後広がっていくと考えられます。

ゲーム経済の新たな可能性

RMTやブロックチェーンを通じて、ゲーム内の経済活動が、現実世界の経済活動とリンクする事ができるようになりました。従来まで価値を定義する事が難しかったゲーム経済圏が単なる娯楽ではなく、新たな経済圏として機能する未来が期待されています。

RMTは、オンラインゲームの世界に新たな価値を生み出す一方で、法律や規制、不正取引などの課題を抱えています。しかし、ブロックチェーン技術の導入により、これらの課題が解決される可能性が広がっています。

今後のゲーム業界は、RMTやブロックチェーンの進化とともに新たな経済圏を築き、プレイヤーにとってより魅力的なものとなるでしょう。

MCB Web3カタログは、Web3領域におけるBtoBサービスを網羅的に検索・比較することができるカタログサイトです。MCB Web3カタログの会員(無料)になると、事業者向けのWeb3ソリューションに関する資料を個別もしくはカテゴリー別に請求できます。

  • 「ブロックチェーンゲームの開発を検討してみたいが、具体的なアクションがわからず悩んでいる」
  • 「ブロックチェーンゲームに関する相談を専門家にお願いしたい」

など、Web 3事業を検討中の事業者様にぴったりのサービスやソリューションが見つかるMCB Web3カタログを、ぜひご活用ください。

MCB Web3カタログ会員になる

MCB Web3カタログへ掲載してみませんか?掲載社数は約50社、国内随一のWeb3 × BtoBサービスの検索・比較サイトです。

掲載の詳細を確認する

Comments are closed.