ネットワーク環境やIT技術の向上により、現実世界と同じような臨場感を味わえる「メタバース」が注目を浴びています。ゲームとして遊ぶだけではなくビジネスでも使用され、活用次第では大きな収益を上げている実績もあるほどです。
最近では、さまざまなメタバースプラットフォームが開発され、容易に導入が可能になりました。そこで、本記事ではメタバースのサービスやプラットフォームの解説と、ビジネスでの活用事例を紹介します。メタバースをビジネスで活用したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
メタバースとは
メタバースは「meta:超越した」と「universe:世界」を組み合わせた言葉です。明確な定義はされていませんが、総務省の報告書によれば「ユーザー間で“コミュニケーション”が可能な、インターネット等のネットワークを通じてアクセスできる、仮想的なデジタル空間」といわれています。メタバースには下記の特徴があります。
<メタバースの特徴>
- 利用目的に応じた臨場感・再現性がある
- 自己投射性・没入感がある
- インタラクティブ(双方向でやり取りができる)でリアルタイムである
- インターネットに接続できれば、誰でも参加できる
メタバースという言葉は1990年代から存在していますが、国内で注目を浴びるようになったのは2021年頃です。米国のMeta社(旧Facebook社)がメタバースを中心とした事業方針を打ち出した結果、注目されるようになりました。世界のメタバースの市場規模も徐々に拡大し、2022年に655.1億ドルだったものが2030年には9,365.7億ドルまで拡大すると予想されています。
メタバースプラットフォームとは
「メタバースプラットフォーム」とはメタバースを構築する仕組みです。各メーカーはプラットフォーム上に仮想世界を制作することで、ユーザーが目的に合わせて自由に仮想世界を利用できます。
また、最近のメタバースの活用方法はユーザー同士の交流だけではなく、NFT(非代替性トークン)の販売やイベントも開催できるようになりました。ビジネスでも活用される場面も増えてきています。メタバース活用の幅は、急速に拡大しているといえるでしょう。
メタバースプラットフォームの売上
メタバースの運営・開発メーカーの収益は、ユーザーの月額料金やゲーム上のアイテムなどを売却・広告収入などで得られます。多種多様な方法があるため、自社が得意な分野で売上を上げていくといいでしょう。
メタバースプラットフォームでできること
メタバースプラットフォームではさまざまなコンテンツを展開できます。自社にあったコンテンツを採用してください。
ユーザー同士の交流
相手が目の前にいるような臨場感のあるコミュニケーションが取れるのは、メタバースにしかない特徴といえるでしょう。メタバースは世界中の多くのユーザーが利用し、テキストや音声などでユーザー同士と交流が可能です。ネットワークに繋がっていれば、異文化交流も簡単にできてしまいます。
ビジネスチャンスとして活用
ビジネスチャンスとしてもメタバースは活用できるツールです。メタバースの没入感を利用し、社内システムだけではなくマーケティングや自社商品の紹介などにも幅広く使われています。とくに、メタバース上で企業ブランドや商品を宣伝すれば、ユーザーの愛着が向上する可能性があります。積極的に導入していきたいものです。
<メタバースを用いたビジネス>
- 社内会議:実際に対面で会議をしたような会議ができる。
- マーケティング:市場のリアルな声(一次情報)を聞ける。
- 観光・都市案内:海外観光や都市モデルなどをメタバースで体感できる。
ゲームの制作
プログラミングの知識や技術は必要ですが、メタバースゲームによっては他社のプラットフォームを使ってゲームを作成できます。メタバース上で作成したゲームを公開してユーザーに遊んでもらったり、NFT化したアイテムを売却して稼いだりすることも可能です。
イベント開催
メタバース空間でイベントを開催するのも、メタバースの活用方法のひとつです。イベント開催にかかるコストを大きく減らせるメリットがあり、個人事業主や規模が小さい企業でも簡単にイベント開催ができます。また、世界中の人を集客対象にできることや、現実では不可能な体験をすることもメリットとして挙げられるでしょう。
メタバースプラットフォームのメリット
メタバースプラットフォームを活用すれば、さまざまなメリットがあります。
新たな顧客層を開拓できる
メタバースは、全世界の人に情報を発信できるメリットがあります。ビジネスで利用すれば、自社の商品紹介をして見込み客を大量に増やすこともできるでしょう。ウェブサイトやSNS運用だけでは、アプローチできなかった顧客層にも効果的です。
没入感の高いビジネスを展開
VRを併用してメタバースを活用すれば、ユーザーは没入感の高い体験が可能です。ショッピングモール・仮想世界の観光・自動車の展示会などをメタバースで実施している事例は多くあります。より現実に近い状態で、仮想世界を体感できるでしょう。
コストを抑えたビジネスが可能
メタバースを利用すればコストを抑えつつも、エンターテイナー性が高い商売ができるようになります。たとえば、イベントを開催する場合には、会場費や機材代などで多額のコストが発生します。しかし、メタバースではデジタル上に会場を設置するため、多くのコストを削減可能です。
くわえて、一度メタバースで設計したデータは保存されます。何度でも再活用でき、同じクオリティのイベントを開催できるのもメリットでしょう。
メタバースプラットフォームのデメリット
ここでは、メタバースプラットフォームのデメリットについても触れていきます。
ハッキングされる可能性がある
サーバー上で運用されるメタバースでは、ハッキングのリスクがないとはいいきれません。顧客情報や企業の機密情報を抜き取られる可能性があります。一度でもハッキングを受けてユーザーからの信頼を落としてしまえば、信頼回復に相応の時間とコストがかかってしまいます。厳重なセキュリティを用意する必要があるでしょう。
導入時のコストがかかる
メタバースに限った話ではありませんが、新規事業を立ち上げる場合にはコストがかかります。メタバースではコンテンツにもよりますが、数百万円~数億円程度のスタートアップコストがかかるといわれています。プロモーションやイベント出展料にも資金が必要になるケースがあるため、資金が潤沢な企業でなければ導入は難しいかもしれません。
しかし、従来と比較してもメタバース市場は拡大し、リーズナブルに利用できるメタバースプラットフォームも充実してきました。ゼロからの開発コストがかからなくなってきています。将来的に導入コストも低くなっていくことが予想されます。
法整備が整っていない
2024年時点でメタバースは、国内の法整備が追いついていないのが現状です。犯罪が起きた際の対応は定められていません。リスク管理を十分におこない、導入を検討する必要があります。
急速拡大していくメタバース市場に対して、政府はさまざまな懸念事項や課題点に対して対策を進めています。現時点ではリスク管理をおこないながら運用する必要があるかもしれませんが、今後はより安全に扱えるようになるでしょう。
メタバースの活用事例
メタバースを導入するうえで他社との差別化は重要ですが、既存のコンテンツを参考にすれば、マーケティングの効率化が図れる可能性があります。ここでは、メタバースの活用事例について触れていきます。
地域活性化
実際の都市をメタバース空間に再現したイベントを開催して、都市の認知度を上げるビジネスが展開されています。たとえば、KDDIは渋谷の街を仮想空間に再現した「渋谷区公認 バーチャル渋谷」で、フェスティバルやライブなどを実施しました。
メタバース仮想空間での人材確保
メタバースを運営するのではなく、メタバース上で働く人材を確保する事業も展開されています。国内でも職を失った若年層や、高齢者・シングルマザー・障がい者など、働きたくても仕事を紹介できないケースも少なくありません。そこで、メタバース上で案内業務や接客業務などを募集した事例があります。
エンターテインメント
メタバースの一般的な活用事例として、 エンターテインメントでの活用は外せないでしょう。バーチャル空間で臨場感がある散策ができるだけではなく、ユーザー同士のリアルなチャットもできます。ライブ視聴やアバターを用いて動画配信活動をおこなうユーザーもいるほどです。
日本で使えるメタバースプラットフォームサービス4選
国内のメタバースの法整備が遅れているとはいえ、利用できるメタバースプラットフォームは増加傾向です。話題に挙がりやすいメタバースプラットフォームのサービスを紹介します。
VR Chat
「VR Chat」は、メタバース上で世界中のユーザーと交流ができるコミュニケーションサービスです。同時接続数も数万ユーザーで、世界を代表するプラットフォームといえるでしょう。
VR Chatは知名度が高いサービスゆえに、メタバースと同じサービスと考えてしまう人も少なからずいるようです。一般的にVR Chatはメタバースの中でも「ソーシャルVR」と呼ばれるジャンルに分類されています。
cluster
「cluster」は高い自由度が特徴のメタバースプラットフォームです。メタバース上にオリジナルのワールドを作って、ユーザー同士でコミュニケーションをとることができます。国産のメタバースプラットフォームでは最大級といわれ、数万を超えるユーザー数を獲得しました。
過去にはバーチャル渋谷で大規模イベントを開催したり、ポケモンやディズニーなどとコラボしたりしています。clusterを支援する有名企業が多く、事業として展開力が非常に高いといえます。
The Sandbox(サンドボックス)
出典元:https://www.sandbox.game/ja/
「The Sandbox」は、The Sandboxが運営するメタバースプラットフォームです。運用システムにブロックチェーン技術(分散型台帳)を活用しているのが特徴です。ブロックチェーン技術は、メタバースとの相性がよく、今後もブロックチェーンを用いたメタバースが増えていくことが予想されます。
The Sandboxではアイテムや建物を作り上げるだけではなく、NFT化したアイテムや土地の売買ができます。発想次第ではプラットフォーム内で現実よりも自由度が高い経済活動をメタバース上でおこなえます。
Decentraland(ディセントラランド)
2020年にローンチされたメタバースプラットフォームが「Decentraland」です。イーサリアムブロックチェーンを採用し、ユーザー同士で分散的に運営をしています。ゲーム内容は、土地(LAND)を探索してユーザー同士でコミュニケーションをとるだけではなく、自作コンテンツを作成・販売して収益を得ることも可能です。
専用のエディター・ソフトウエア開発キットである「SDK」がDecentralandの特徴といえるでしょう。考えられるもの・想像できるものは作成できるというコンセプトを持ち、簡単に自作コンテンツが作成できます。
なお、当社では、The Sandbox上では「OASIS TOKYO」を、もう一つのDecentraland上では「OASIS KYOTO」をそれぞれ構築し、運営を行っています。これらの仮想空間では、東京と京都という日本を代表する2つの都市の特徴を活かしながら、日本文化の魅力を世界に向けて発信しています。
メタバースプラットフォームの選定基準
最近では、既存のメタバースプラットフォームを利用してメタバースコンテンツを作成できます。どのような基準でメタバースプラットフォームを選べばいいのでしょうか。
利用目的を明確にする
市場に流通しているメタバースプラットフォームのコンテンツは、ゲーム型・イベント型・ビジネス型・教育型などに分けられます。自社分析をして目的を明確にするといいでしょう。また、運用方法に合わせてWeb型メタバースかSNS型メタバースを選ぶと効果的です。
Web型メタバース
Web型メタバースは、URLから直接アクセスできるメタバースプラットフォームです。パソコンだけではなく、スマートフォンやタブレットから容易にアクセスできるのが特徴です。
さまざまなデバイスからアクセスされるため、成果を上げるにはユーザーの使用環境を十分に考慮するといいでしょう。ユーザー全員がハイスペックなパソコンよりも、処理速度が高くないスマートフォンやタブレットを使用する可能性が高いためです。
また、Web型は既存顧客に対しては強い集客力を発揮しますが、新規顧客については弱い特徴があります。新規顧客を獲得するには、Web広告やSNSなどでプラットフォームの宣伝すると成果が上がりやすくなります。
SNS型メタバース
SNS型メタバースとは、不特定多数のユーザーが参加するメタバースプラットフォームです。既存顧客ではなく不特定多数のユーザーにアプローチしやすい特徴があります。新規の見込み客を増やし、CV率(コンバージョン率)を高めるにはSNS型がおすすめです。
SNS型メタバースのユーザーは、プラットフォームの特性から多方面の情報を入手している傾向が強く、最新情報に敏感です。自社に展開する場合には、最先端の情報を取り扱い、トレンドを取り入れたイベントを開催するといいでしょう。
リアル寄りかファンタジー寄りか
メタバースユーザーの中には現実世界をターゲットにしたリアルなコンテンツを好む人や、仮想空間と呼ぶにふさわしいファンタジーな世界観を好む人などさまざまです。メタバース運用の際には、狙っている顧客層がどちらの世界観が好みかを調査する必要があるでしょう。
ビジネス要素の強さ
メタバースのユーザーはゲームを楽しみたい人だけではなく、ビジネスや商売目的でコンテンツを利用する人もいます。会議スペースやチャット機能などのコミュニケーションを取れるコンテンツを導入すると、ビジネスマンのニーズに応えた展開ができるでしょう。ニーズに合わせて自社サービスを、NFTプレイスマーケットで販売するのもおすすめです。
MCB Web3カタログについて
当社は、メタバースの開発・協業や、GameFi分野での企画・設計や開発、販売・流通、育成などを行うMCB Web3支援サービスを提供しています。メタバースではOASISの開発・運営実績があるため、メタバース分野での新規事業の展開を検討している企業様などは、ぜひ利用をご検討ください。
また、MCB Web3カタログは、Web3領域におけるBtoBサービスを網羅的に検索・比較することができるカタログサイトです。MCB Web3カタログの会員(無料)になると、事業者向けのWeb3ソリューションに関する資料を個別もしくはカテゴリー別に請求できます。
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