インターネット上の3D仮想空間「メタバース」が、ビジネス領域で急速に存在感を増しています。ゲームや交流の場から進化し、今や企業のマーケティング戦略やブランド体験の新たな舞台として注目を集めています。特に物理的制約のない新世代のイベント会場としての活用が広がっています。
本記事では、企業がメタバースでイベントを開催する戦略的メリットを解説します。代表的な成功事例を紹介しながら、効果的な集客手法や目的に合ったプラットフォーム選びのコツまで、実用的な情報をお届けします。
集客に課題を抱える担当者や新しいデジタルマーケティング手法を探している方々に、メタバースイベントが提供する没入型体験の可能性もご紹介します。従来のオンラインイベントとは一線を画す新たな顧客接点の作り方をぜひご覧ください。
メタバースとは
メタバースは、英語で超越を意味する「meta」と宇宙を意味する「universe」を掛け合わせた造語で、インターネット上に構築された仮想空間のことです。ユーザーは、アバターと呼ばれる自分のキャラクターを作成し、それを動かすことでさまざまな社会活動を可能にします。
メタバースのよいところは、自由度が高い点です。現実世界と同じように多くの施設やほかのユーザーが存在しているため、自由に散策したり交流したりして楽しめます。また、どこからでもアクセスでき、物理的な距離があっても直接話しているかのように関われるのもメタバースならではのメリットです。
メタバースイベントが注目される3つの理由
近年、さまざまなイベントがメタバース内でおこなわれています。メタバースイベントが注目される理由を3つ紹介します。
理由1.場所を問わず集客の幅が広がる
これまで現実世界で開催された対面イベントには、開催地の近くに住むターゲットにしかアプローチできないという課題がありました。しかし、場所問わずどこからでも利用できるメタバースであれば地理的な制限がないため、アクセスさえしてもらえれば一気にターゲット層を集客できます。
とくに、メタバースゲームになじみがある若者はイベントへの参加ハードルが低い傾向にあるため、若年層にリーチしたい方にはおすすめです。
理由2.現実では困難な演出が可能
メタバースは「手から火を出す」のような、現実世界では実現が難しいことを再現できるのも特徴のひとつです。そのため、リアルではまだ実現不可能な演出で場を盛り上げたり、近未来的な建物や商品案を仮想空間で創造して発表したりできます。ユーザーを危険にさらすことなく、思いのままにイベント空間をプロデュースできる点で、企業やイベント主催者にとってもメリットがあります。
理由3.ユーザー体験の向上
ZOOMやSkypeのようなオンラインビデオツールでも、遠くの人と交流するなど仮想空間と同じようなことができます。とはいえメタバースが優れているのは、体験として価値を提供できる点です。
ビデオツールを用いたイベントは、どうしても参加者が視聴する形になってしまいます。しかしメタバースであれば、ユーザーがイベントブースを自分で散策して、欲しい情報や体験したいアトラクションを能動的に見つけ出せます。ほかのイベント参加者と知り合う、その場の一体感や熱気を味わえるなど、リアリティのある体験ができるのも注目される理由です。
メタバースイベントの例
メタバースが脚光を浴びるようになったことで、イベントを開催する団体や企業が増えており、これまでにさまざまな分野で多くのイベントがおこなわれました。ここでは、過去のメタバースイベントを6つ紹介します。
メタバースのVRイベント「バーチャルマーケット(Vket)」
出典元:https://event.vket.com/about
「バーチャルマーケット(Vket)」は、メタバース上で使えるアバターやアイテムだけでなくリアル商品も取り揃えた、世界最大級のメタバースショッピングイベントです。2018年から続く大型イベントで、近年は年に2回のペースでおこなわれています。
このイベントは、インターネットを通じて24時間いつでもどこからでもアクセス可能で、ほかの来場者やブース担当者などと音声を通して交流しながらショッピングが楽しめます。さらに、買い物のほかにも乗り物に乗ったりライブに参加したりするなどの体験も可能です。
メタバースの音楽ライブ「Astronomical(FORTNITE)」
2020年4月24日から26日、人気バトルロイヤルゲームFORTNITE(フォートナイト)にて、アメリカのラッパーであるトラヴィス・スコットとコラボした音楽イベント「Astronomical」がおこなわれました。
このイベントは世界中のプレイヤーが視聴できるように複数回に分けて実施され、日本の初回公演には1230万人が集まったと発表されています。また、イベントに合わせたコスチュームとエモートの販売や期間限定ロード画面の無料配布、クリアするとさらに装備が獲得できるミッションなどが用意されており、プレイヤーがよりゲームを楽しめるような工夫で関心を集めました。
FORTNITEでは、海外アーティストだけでなく、星野源や米津玄師ら日本のアーティストともコラボした音楽イベントをおこなっており、アーティストのPRの場としても活用されています。
出典元:https://www.fortnite.com/?lang=ja
メタバースのファンイベント「MIYAVI V-WORLD」
出典元:https://japan.miyavi.com/news/detail/15904
世界に名を馳せる日本人ギタリストMIYAVIのファンイベントが、2023年9月におこなわれました。このイベントはMIYAVIのソロデビュー20周年を記念して開催されたもので、参加者はアバターを通じて本人と交流できるファンミーティングや自分のバーチャルルームとして使用可能な特別テンプレートを獲得できるサービスなどを楽しめます。
このように、アーティストとファンがライブのような距離感で交流できるのが、メタバースでファンイベントをおこなうメリットです。また、同じものが好きなファン同士の交流も期待できます。
メタバースのeBikeの試乗イベント「VR TRAIL」
出典元:https://news.yamaha-motor.co.jp/2024/028320.html
「VR TRAIL」はヤマハ発電機が2024年12月にオープンした、マウンテンバイクのVRコースです。実在する静岡県のバイク施設がもとになっており、ユーザーはeBikeに乗って自由にコース走行を楽しめます。
マウンテンバイク初心者でも怪我することなく、ハンドル操作の感覚やスピード感を体験できるのがこのイベントの醍醐味です。企業にとっても、自社商品に興味を持ってもらうきっかけになり、双方によい影響をもたらします。
メタバースのモータースポーツイベント「バーチャルガレージ by TGR/LEXUS」
出典元:https://toyotagazooracing.com/jp/eventexhibition/tokyoautosalon2023/virtualgarage/
「バーチャルガレージ by TGR/LEXUS」は、トヨタ自動車が2023年1月に日本のメタバースプラットフォーム「Cluster」上で開催したモータースポーツイベントです。このイベントでは、正式発表前のモデルのシルエットやこれまでの活動を振り返る特別映像などが公開されました。
リアルイベントとは違って、混雑や時間を気にせず、満足するまでブースを楽しめるのもメタバースイベントのポイントです。情報公開のほかに、トヨタ自動車のプロドライバーたちが今後の活動について話し合うトークイベントもおこなわれ、車好きにはたまらないコンテンツとなりました。
メタバースの婚活イベント
近年、メタバース空間でパートナー探しができる地方自治体主催の婚活イベントが企画・実施されるようになりました。これまでに愛媛、千葉、山梨などでのイベント事例があり「勤務地や地元でだれにもばれずに婚活したい」という方の関心を集めているようです。
イベントは、メタバース上のパーティ会場で参加者同士が交流を深め、カップルが成立したペアは後日メタバースデートやリアルデートを重ねていくという流れで進みます。直接会う前にアバターを通じた交流で相手の声や雰囲気を確かめられるため、年齢や職業などの条件ではなく内面を重視してマッチングできるのがポイントです。
メタバースイベントを開催できるプラットフォーム
メタバースでのイベント開催を考えている方に向けて、便利なプラットフォームを3つ紹介します。
VRChat
VRChatは、作成したアバターでワールドを探索したり、ほかのユーザーとの「交流を楽しんだりできるソーシャルVRサービスです。これまでに先述した「バーチャルマーケット(Vket)」や「プリキュアバーチャルワールド」などのキャラクターとコラボした大型イベントが多数おこなわれています。
メタバースプラットフォームのなかでも、世界中にユーザーが多いのが特徴です。交流を目的としたイベントの開催や幅広い世代を集客したい場合などに適しています。
Cluster
Clusterは、クラスター株式会社が運営している日本最大級のメタバースプラットフォームです。スマートフォンやパソコンなど好きなデバイスから簡単にアクセス可能で、気軽にメタバースの世界を体験できます。
これまでに「バーチャルシブヤハロウィーンフェス」や「ポケモンバーチャルフェスト」などのイベントが開催されました。エンターテインメント業界以外にも、さまざまな業界で活用されています。メタバースを利用したい法人向けへ無料相談も実施されているため、初めてのイベントを検討中の企業におすすめです。
Decentraland
Decentralandは、ブロックチェーンを駆使したメタバースプラットフォームです。ユーザーはメタバース上で自分の土地を所有でき、独自の暗号資産であるMANAを使えばショッピングも楽しめます。イベントでNFTを販売したい方にはおすすめのプラットフォームです。
これまでに音楽イベントの「Decentraland Music Festival」やさまざまなブランドが参加したファッションイベントの「Metaverse Fashion Week」などがおこなわれ、大きな話題となりました。
メタバース都市でのイベント開催事例
メタバースプラットフォームであるThe SandboxやDecentraland、Fortniteでは、マネックスグループが同プラットフォーム上で構築したメタバース都市内でイベントが開催されています。
それぞれ、The Sandbox上にはOASIS TOKYO、Decentraland上にはOASIS KYOTO、Fortnite上にはOASIS KYOTO NEOというメタバース都市が構築されています。
OASIS TOKYOは、日本を連想させる2035年の近未来都市としてデザインされており、和風ながらもSci-Fi(サイファイ)なメタバース都市の中に、美術館やステージなどのイベント施設が設置されています。
イベント施設は、クリエイターやアーティストとそのファンの交流の場に用いたり、企業のメタバース活用やコミュニティ育成に活用したりすることができます。
なお、OASIS TOKYOは2024年12月25日に一般公開が開始されました。The Sandbox上でアクセスできるため、興味のある方はぜひご覧ください。
参考:https://www.monexgroup.jp/jp/news_release/irnews/auto_20241225544253/pdfFile.pdf
まとめ
近年、インターネット上の仮想空間であるメタバースでおこなわれるイベントが増えてきています。その理由は、だれでもどこからでもアクセスが可能で、現実世界では難しいこともリアルイベントのように体験できるためです。
このようなメタバースの長所を生かしたイベントは、メタバースの普及に伴って今後も開催されていくでしょう。実際に、音楽やショッピング、試乗体験などさまざまなジャンルのイベント事例があり、その可能性はどんどん広がっています。興味がある方は、ぜひ適切なプラットフォームを選択し、イベントを企画してみてください。
当社ではOASISをはじめとしたメタバースの開発・協業、GameFi分野での企画・設計や開発、販売・流通、育成などを行うMCB Web3支援サービスを提供しています。メタバースではOASISの開発・運営実績があるため、メタバース分野での新規事業の展開を検討している企業様などは、ぜひ利用をご検討ください。
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