資金調達の新しい方法として「IEO」が注目されていますが、「うさんくさい」「あやしい」とネガティブに捉える人は少なからずいます。ただ、IEOは、ICOなどの従来の資金調達方法と比較しても安全性の高い方法です。
そこで、本記事ではIEOの仕組みやメリットについて解説します。また、IEOが「どの程度安心して利用できるのか?」について触れていきます。
目次
IEOとは
「IEO:Initial Exchange Offering」は、暗号資産取引所を介しておこなわれる資金調達の方法のひとつです。資金調達をしたい企業・団体・個人などは新規トークンを発行し、暗号資産取引所を介して企業や投資家に購入してもらうことで資金調達をします。新規トークンの販売には、発行体の事業内容や調達資金の用途などの審査が必要です。無事審査に合格すれば、暗号資産取引所にトークンを募集価格で先行販売できます。
IEOに参加する企業・投資家のメリットは、上場前のトークンを先行で購入できることでしょう。トークンの需要によっては、大きなリターンを得られた事例も少なくありません。たとえば、パレットトークン(PLT)はIEO価格の24倍以上になり、当時の参加者たちに大きなリターンをもたらしました。
ICOとIEOの違い
IEOと類似した資金調達方法に「ICO:Initial Coin Offering」が挙げられます。IEOとの大きな違いは、ICOは暗号資産取引所の審査を介さずに新規トークンを発行し、資金調達をおこなうことです。主に企業が独自にトークンを発行する目的で活用されています。
ICOは企業・団体・個人などが自由にトークンを発行できる点では自由度が高く、非常にメリットがある資金調達方法でした。しかし、国内ではプロジェクト内容が伴わない「ずさんなトークン発行」をおこなう事例が多く、ICO詐欺事件が横行した歴史があります。
詐欺事件の背景を受けて国内では、2019年に資金決済法が改正されました。暗号資産交換業の事業者登録をしなければ、暗号資産の資金調達が実施できなくなっています。2024年時点で新規トークンを市場へ流通させて販売するにはIEO形式で上場させることが定められており、金融庁に登録された暗号資産取引所による審査を経る必要があります。
そのため、ICOのようにトークンが上場されず、売却できないなどといったトラブルはなくなりました。IEOは、より安全性が高まった資金調達方法といえるでしょう。
表:IEOとICOの違い
IEO | ICO | |
---|---|---|
暗号資産取引所の介入 | あり | なし |
トークン発行の審査 | あり | なし |
サービス安全性 | ◯ | ✕ |
トークンの上場 | 取引所で必ず上場される | 上場されない場合もある |
参加権利 | 取引所に口座があれば誰でも参加できる | 資産力などの条件がある場合もある |
IEOがうさんくさい・あやしいと言われる理由
「暗号資産の資金調達」と聞けば、あやしいと感じてしまう人も少なくありません。ところが、法定通貨での資金調達やローンなどは、前向きに捉えられることがあります。なぜ、IEOがうさんくさい・あやしいと感じてしまうのでしょうか。
似た仕組みのICOで詐欺が多発した
ネガティブな気持ちになる理由のひとつとして、過去の資金調達方法である「ICOの詐欺事件」が関係している人も多いでしょう。暗号資産取引所を仲介しないICOでは存在しないトークンに対して資金調達など、不正に資金調達をおこなう詐欺が多発しました。メディアでも注意喚起を促す報道がされたため、暗号資産やICOにネガティブな印象を持つ人も多かったのではないでしょうか。
抽選まで購入申込資金が拘束される
IEOではトークン申込金額は当選の有無にかかわらず、申込時に入金した資金を一定期間拘束します。拘束期間は入金後すぐではなく、申込金額拘束日時に拘束されることがほとんどです。
仮に、抽選に落選した場合は申し込みした金額は全額返却されます。資金の拘束をデメリットと捉えるかは、個人の考え方にもよる部分が大きいでしょう。ただし「拘束された資金は解除されるまで使用できない」「当選した際にはキャンセルができない」というルールがあるため、無理のない範囲で申し込むのをおすすめします。
IEOは怪しくない!信頼できる理由とは
ICOによる詐欺事件が横行しましたが、国内では暗号資産の法整備も進んできました。ここでは、IEOが安心して利用できる理由について触れていきます。
取引所が取り扱い審査を行っている
企業や個人が独自におこなっていたICOとは異なり、IEOは暗号資産取引所がトークン発行に介入します。取引所は、発行体の健全性や技術力・プロジェクトの内容・トークンの発行目的・資金調達後の運用内容などの厳しい審査をおこないます。すべての項目で「問題がない」と判断された場合のみ、上場・販売が可能です。
また、トークン上場のタイミングがほぼ決まっていることも信頼ができる理由です。ICOの事例にあった「上場の中止」や「異なった取引所で上場」するトラブルが改善されたといえるでしょう。
投資へのリスクは通常の暗号資産投資程度
IEOで発行されるトークンは「価格が乱高下しやすいから危険だ」と感じている人も少なくありません。
しかし、IEOを経由して上場したトークンは、暗号資産取引所の厳しい審査を受けて上場しています。上場後すぐにトークンの信頼が失われ、暴落することは考えにくいです。また、ロックアップにより売り抜けによる価格の暴落が起きにくい仕組みを採用し、投資家保護がされています。
IEOで発行されたトークンだけが特別な動きをすることはありません。通常の暗号資産と同じように価格は変動します。
IEOへ参加・投資するメリット
IEOに参加して新規トークンに先行投資をおこなえば、事業に必要な資金を調達できるだけではなく、さまざまなメリットがあります。ここではIEOへ参加・投資するメリットについて触れていきます。
ICOと比較して信頼度が高い
ICOと比較すれば暗号資産取引所を仲介するIEOのほうが安全性が高く、企業や投資家は安全に暗号資産の取引ができるようになりました。さらに、IEOは一定の基準を満たしたトークンしか発行されません。トークンに対しての安心材料があるのも、信頼度が高い要素だといえます。
トークンの値上がりが期待できる
一般的に上場されたばかりのトークンは、価格が上がりやすい傾向です。新規トークンの話題性も影響しますが、上場すれば一般投資家に認知されるためだと考えられています。
IEOに参加すれば未上場のうちにトークンを先行購入できます。上場後(ロックアップ解除後)に売却してキャピタルゲインが得られる可能性があります。ただし、法定通貨同様に暗号資産も需要により価格変動します。価格上昇の理由が不明確なケースがあるのは否定できません。全トークンの価格が上昇するわけではないことは留意してください。
抽選で購入できる機会がある
IEOでは取引所へ申込み後、抽選によってトークンの購入権を得られます。抽選に当選すれば、未上場のトークンが先行で購入できます。トークンが上場後に急激に価格上昇した事例は多く、大きな利益を手にした企業や投資家もいるようです。IEOに参加すれば、大きなリターンを得られる機会を得られるでしょう。
プロジェクトがIEOを実施するメリット
プロジェクトがIEOを実施するIメリットについて触れていきます。
資金決済法への対応が容易
過去にICOによる詐欺事件が横行したことにより、資金決済法が改正されました。暗号資産の販売をおこなう場合には、暗号資産交換業者として金融庁の登録を受ける必要があります。
結果、資金決済法が暗号資産の調達しにくさにつながっています。そのため、暗号資産取引所へ委託したほうが容易といえます。
取引所の信頼度を活かせる
IEOのメリットは、金融庁で認可を受けた暗号資産取引所が主体となってトークン販売をおこなうことです。企業や投資家視点で考えれば国に認可を受けた取引所が介入するほうが、信頼度が高くなるのはいうまでもありません。
また、取引所の信頼度はIEOでトークンを発行する企業にとってもメリットがあります。取引所の信頼度が高ければ、投資家たちが安心して積極的に利用してくれます。結果、トークンを購入する確率が高くなり、資金調達がしやすくなるといえるでしょう。
取引所の知名度により顧客流入が見込める
取引所は、企業や投資家たちが新規トークンを認知する場でもあります。知名度の高い取引所は多くの企業や投資家が利用するため、新規発行されたトークンは投資家たちの目に止まりやすくなるでしょう。
また、トークンを発行する企業はウェブサイト・SNSとIEOと紐づければ、投資家たちに自社商品・サービスを認知させることもできます。経営戦略次第では多くの顧客流入が見込めます。
IEO実施支援サービス
IEOは、暗号資産取引所の厳正な審査を通過しなくてはいけません。ブロックチェーンや暗号資産などWeb3に関する豊富な知識がなければ、健全なプロジェクトと認めさせることが難しく、普及に歯止めがかかっているのが現状です。
しかし、当社が提供する「IEO実施支援サービス」を利用すれば「IEO支援/トークンエコノミクス設計」の知識・経験を得られます。健全なプロジェクト設計の助力になるでしょう。
なお「IEO支援サービス」とは、Web3関連事業への参入を検討する法人・プロジェクト向けのサービスです。Web3マーケットはバリューチェーンが幅広く、専門の知識が必要です。弊社のWeb3関連の知見・知識・経験を活かし、リサーチ・NFTの企画から発行・コミュニティ構築・運営などをサポートします。下記のサービスにも対応しています。
<IEO実施支援サービス概要>
- Web3事業に関する調査・企画
- NFTの企画、発行、販売
- コミュニティの構築/運営
- メタバースの開発/協業
- IEO支援/トークンエコノミクス設計
まとめ
IEOは、ICOの失敗を活かした暗号資産の資金調達方法です。暗号資産取引所の介入ゆえに不明瞭なプロジェクトで資金調達ができなくなるため、より安全な取引が可能です。企業や投資家を詐欺事件から守ることができる重要な仕組みといえるでしょう。また、未上場のトークンを先行購入できることもメリットで、大きなリターンを狙う場合にも有効です。
一方、企業がIEOで資金調達をするには、Web3関連の専門知識を学ぶ必要があります。弊社の「IEO支援サービス」を活用すれば「IEO支援/トークンエコノミクス設計」のノウハウを習得できます。そのほかWeb3に関するさまざまな情報を簡単に入手可能です。新規でWeb3業界に参入する場合にはご利用ください。
MCB Web3カタログについて
MCB Web3カタログは、Web3領域におけるBtoBサービスを網羅的に検索・比較することができるカタログサイトです。MCB Web3カタログの会員(無料)になると、事業者向けのWeb3ソリューションに関する資料を個別もしくはカテゴリー別に請求できます。
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