暗号資産とは、インターネット上で取引される電子的な資産です。仮想通貨とも言い、代表的なものとしてビットコインやイーサリアムなどが挙げられます。
2009年に暗号資産の代表格であるビットコインがローンチされて以降、世界で発行されている暗号資産の数は増加してきました。2024年時点で確認できるだけで、数万種類以上の暗号資産が存在しています。
これまでの貨幣と異なり電子上で取引されているような実体を持たない暗号資産が、一体なぜここまで評価され、市場価格を伸ばしているのでしょうか。
本記事では、暗号資産のビジネス活用を検討している方に向けて、貨幣の3要素に関する前提知識から暗号資産に価値がある理由・価値の源泉について詳しく解説します。
貨幣の3要素とは
暗号資産に価値がある理由を整理する前に、まずはわたしたちが当たり前に使っている既存の貨幣の要素について整理しましょう。
貨幣には、次に挙げるような3つの要素があります。
- 価値の保存機能
- 交換機能(決済機能)
- 価値の尺度機能
各要素について、詳しく解説していきます。
参照:一般社団法人 全国銀行協会「お金の機能とは?」
1.価値の保存機能
貨幣の価値は一定で、変化しないものです。もし物々交換をするために食べ物を保存しようとすれば、交換する前に腐ってしまい、価値がなくなる可能性があります。
対して貨幣は使わず銀行などに預けるなどして蓄えておいても、価値が損なわれることはありません。
2.交換機能(決済機能)
貨幣は、モノとモノの交換の媒介をしてくれる機能を持っています。
貨幣が存在せず、物々交換によって経済が成り立っている時代では、お互いの欲しいものが合致しなければ交換は成立しませんでした。
しかし、貨幣が生み出されたことによって、貨幣とモノ・サービスの交換(決済)が可能となり、両者の要求が一致する必要はなくなりました。
3.価値の尺度機能
世の中にあるすべてのモノやサービスには、それぞれ値段がついています。わたしたちは普段から、値段という尺度(ものさし)を利用して商品の価値を測り、実際に購入するかの意思決定をおこなっています。
このように、貨幣は3つの要素を持っており、経済が円滑に回るための役割を果たしています。
貨幣・通貨は多くの人が価値を信じることで通用する
「貨幣や通貨は多くの人が価値を信用することで通用する」ということについて、具体的に考えていきましょう。
近年、世界の基軸通貨として流通しているのはアメリカドルで、貿易や金融取引などはドル建てでおこなわれているケースが多いです。
アメリカドルが基軸通貨としての地位を確立している理由は、ほかの貨幣や通貨よりも通貨価値が安定しているためです。アメリカの法律や制度はアメリカドルの価値を安定させることを担保しており、それがアメリカドルへの絶対的な信頼に繋がっています。各国の中央銀行が準備通貨の大部分をアメリカドルとして保有していることからも、アメリカドルへの信頼性の高さが窺えます。
また、アメリカドルは貿易取引や金融取引など幅広い場面で使用されており、利便性の高い通貨として評価されています。アメリカドルの価値の裏付けとしてアメリカの圧倒的な経済力があり、アメリカへの信頼があるからこそ、アメリカドルが世界的に通用しているのです。
そして、貨幣や通貨に価値が出るのは、人々が信じているからです。時代の変遷と共に基軸通貨が移り変わっていることも、その証左であると言えるでしょう。
例えば、大英帝国時代から第二次世界大戦直後にわたって、世界の基軸通貨はイギリスのポンドでした。第二次世界大戦で莫大な借金を抱えてしまったことを契機にイギリス経済が衰退していくと、代わりにアメリカが経済力を伸ばし、人々の信頼がポンドからアメリカドルへと移り変わったのです。
参考:https://www.keiwa-c.ac.jp/wp-content/uploads/2013/01/veritas03-09.pdf
近年、暗号資産に価値が出てきて市場価格が上昇しているのも、人々が価値を信じ始め、需要が増大したからだと言えます。
暗号資産に価値がある理由・価値の源泉
ここでは、暗号資産に価値があると評価されている、以下の4つの理由を解説していきます。
- 市場による価値認識 ・ブロックチェーンによる取引履歴の正当性がある
- 需要がある中で供給数が決まっている
- 通貨危機への耐性が見込まれている
市場による価値認識
暗号資産の価値は、市場参加者による需要と供給のバランスによって形成されます。多くの投資家や利用者が「価値がある」と認識し、取引に参加することで、その価値が維持・変動していきます。
また、暗号資産の決済需要が高まるなど、暗号資産の普及が期待できるような出来事があれば、「暗号資産に価値がある」と認識する人が市場へ新規参入し、価格が上昇する可能性があります。
ブロックチェーンによる取引履歴の正当性がある
ほとんどの暗号資産にはブロックチェーンという技術が採用されています。ブロックチェーンとは、ブロックと呼ばれる過去から現在に至るまでの取引情報をチェーンのように繋げて記録し、複数の参加者の間で管理するためのデータベースのことです。
従来の通貨は、中央管理者が存在している中央集権型の金融システムで管理されてきました。中央銀行が通貨取引を管理しているため、取引の詳細を外部から確認できず、安全性は中央銀行の管理に委ねられることになります。
対して、暗号資産では分散型の金融システムが採用されています。ブロックチェーン技術を活用することで、全ての参加者が平等にデータを管理し、過去からの取引を確認できるようになっています。
このように、ブロックチェーンを用いることでデータの改ざんを防ぎ、取引履歴に透明性を持たせることができることから、暗号資産の価値が高まっています。
需要がある中で供給数が決まっている
暗号資産に価値があるとされている理由は、限られた供給量に対する需要が多くなってきているためです。
大原則として、暗号資産や株の価値は、需要と供給のバランスで決まります。
ビットコインをはじめとする多くの暗号資産には、市場に出回っている発行枚数、すなわち供給量の上限が定められています。誰かの勝手な意思で無限に増やすことはできません。
いくら市場の需要が高まっても供給量の上限は決まっているため、需要が高まれば高まるほど価値も高まり、市場価格が上昇するのです。
既存金融の通貨危機と異なる性質を持っている
2008年に起こったリーマン・ショックでは、アメリカの大手投資銀行が経営破綻したのを契機に信用収縮と株価暴落が引き起こされ、世界経済が混乱に陥りました。また、新型コロナウイルスの流行により景気が落ち込んだエクアドルでは、2020年にデフォルトが起こりました。
このように、既存の金融システムは、債権により通貨の価値が希釈されたり、通貨発行量の制限も困難であったりするため、金融危機やデフォルトを起こす可能性を孕んでおり、そうなった場合には大きなダメージを受けてしまいます。
一方で、多くの暗号資産には供給量の上限が決められているため、価値の希釈が起こりません。
そのため、既存金融のような通貨の価値が希釈されることによる通貨危機には強いという特性を持っているのです。
なお、LUNA-USTショックのような取り付け騒ぎなど特殊事例も存在し、暗号資産の価格も市況により左右されるため、資産クラス自体にリスクがないというわけではありません。
暗号資産の価格が上がるタイミングとは
ここでは、暗号資産の価値が上がる3つのタイミングについて、解説していきます。
- 大幅なアップデート
- 大企業や国による利用
- 規制の緩和
大幅なアップデート
暗号資産は、ネットワークセキュリティの強化やパフォーマンスの向上のためアップデートされることがあります。そして、アップデートにより利便性がよくなったことを評価された暗号資産は値上がりしやすいです。
実際に、イーサリアムという暗号資産では度々アップデートが実施されており、アップデート前後で価格の高騰が起こっています。
大企業や国による利用
未だ暗号資産に忌避感を持っている人は少なくないでしょう。そのなかで、大企業や国が暗号資産を利用することは、暗号資産に対する人々の抵抗を薄れさせ、利用者の増加に繋がる可能性があります。さらに、大企業や国が絡むことで一定の資金が流入することが予想されるため、価格を押し上げやすい状況になりやすいです。
実際に、暗号資産と大企業が提携した際には、市場にかなりの影響を及ぼしました。
アメリカ合衆国のテスラは、2021年2月8日に15億ドル相当のビットコインを購入したと発表しました。すると直後からビットコインの価格は伸びに伸び、当時の最高値を記録したのです。
参照元:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-02-08/QO7GJRT0G1L301
また、大企業や国が暗号資産を利用することで、暗号資産を用いた新たなサービスの提供や技術革新など、新たな価値の創出に繋がることが期待されます。
暗号資産規制の緩和
2017年から2018年にかけて、暗号資産はいわゆるバブル的に盛り上がりを見せ、それまで主にテクノロジー愛好家や先進的な投資家の間で取引されていた暗号資産は、一般投資家の注目を集め、取引量が大幅に増加しました。
一方で、犯罪に利用されたり悪用されたりするケースも増加しており、国際的にも問題となっています。
暗号資産を利用した犯罪には、インターネットバンキングを利用した不正送金やマネーロンダリングがあります。また、暗号資産の高い匿名性を悪用し、犯罪インフラとして利用されることもあります。
こうした状況を受け、利用者を保護するために暗号資産に対して規制をかけるようになった国が増加しました。
日本において暗号資産への新規参入を阻む大きな要因の一つが暗号資産の売買益に関する課税です。暗号資産の売買によって得た利益は雑所得として扱われるため、利益に対して最大55%の税金を納める必要があります。
この規制によって暗号資産の購入に前向きになれない人も一定数います。そのため、規制が緩和されることで利用者の増加に繋がり、暗号資産の価値が上昇する可能性があります。
まとめ
既存の貨幣・通貨は、多くの人々が価値を信じるから通用します。近年の暗号資産市場が盛り上がりを見せているのも、大前提として「暗号資産の価値を信じる人が増えてきている」ということが価格に反映されてきているためと言えるでしょう。
その価値の源泉として、ブロックチェーンという新技術を使った分散型の金融システムを確立し、通貨危機への耐性が見込まれていることなどがあります。
暗号資産市場はまだまだ発展途上です。今後、規制が緩和され、大企業や国による活用が進めば、暗号資産の価値はさらに上昇することが期待されます。
また、2020年以降、ブロックチェーン技術と暗号資産を基盤とした新たなインターネットの形態「Web3」が急速に注目を集めています。詳しくは『Web3とは?特徴や技術、サービス例・暗号資産との関連性をわかりやすく解説』をご覧ください。
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