今回から数回にわたり、
レイヤー2の
ガス代を減少させる技術として注目されている、
ダンク
シャーディング(Danksharding)とData Availabilityについて取り上げていきたいと思います
。
ダンクシャーディングはEthereumのロードマップにおける最終的な目標の1つとなっている技術です。一方で、これを理解するためにはまずData Availabilityという概念を知っておく必要があります。順を追って、まずはData Availabilityから詳しく見ていきましょう。
Data Availabilityは、
ブロックチェーンにおける「
レイヤー」の1つです。ここでいうレイヤーとは、
共通のプロトコルやクライアントを持つ、
複数の
ノードによって構成されたネットワークのことを指します。
ブロックチェーンは本来、その役割ごとに以下の4つのレイヤーを持つことができると考えられています。
- Execution Layer
- Settlement Layer
- トランザクションの証明に関する検証が行われるレイヤー
- Consensus Layer
- トランザクションの内容や順序についての合意が行われるレイヤー
- Data Availability Layer
しかし、多くのブロックチェーンは1つのレイヤーで上記のすべての役割を実行しています。ビットコインもそのうちの1つで、このようなブロックチェーンは「モノリシックブロックチェーン(Monolithic Blockchain)」と呼ばれています。
モノリシックブロックチェーンのデメリットとして、処理能力の拡張性、つまりスケーラビリティが乏しく、ガス代も高くなってしまうということが挙げられます。
これとは対照的に、複数のレイヤーに役割を分散させたり、場合によっては外部のレイヤーに役割をアウトソーシングするブロックチェーンのことを「モジュラーブロックチェーン(Modular Blockchain)」と呼びます。
Ethereumは元々モノリシックブロックチェーンでしたが、スケーラビリティを得るためにモジュラーブロックチェーンへの移行を進めています。現在、Ethereumに存在するレイヤーは以下の2つです。
- Execution Layer
- トランザクションやスマートコントラクトの実行が行われるレイヤー
- Consensus Layer
- トランザクションデータの保存や、トランザクションの内容や順序についての合意、証明に関する検証が行われるレイヤー
Ethereumの場合、Execution Layerについてはそのままですが、Data Availability LayerとSettlement LayerについてはConsensus Layerにまとまっていることが分かります。このようなEthereumのレイヤー構造のうち、Execution Layerを切り離して別のブロックチェーンとして動かしているのが、現在「レイヤー2」として知られているものです。
レイヤー2はExecution Layerとしての役割に集中できるため、比較的安価なガス代でトランザクションを実行することができます。また、Settlement LayerやConsensus Layerの部分についてはEthereumが担っているため、セキュリティの強固さについてはEthereumと変わらないといった特徴があります。
こうした流れを踏まえて、Data Availability LayerについてもEthereumから切り離すことでさらにガス代が安くなるのではないかといったことが考えられるようになりました。このような考えから生まれたのが、CelestiaやAvailなどといったData Availabilityを専門とするブロックチェーンです。こうしたブロックチェーンは「Alt-DA」と呼ばれており、Data Availability LayerとしてAlt-DAを採用するレイヤー2もいくつか存在します。
しかし、Alt-DAには信頼しなければならないエンティティが増えるというデメリットがあります。Alt-DAを運営するエンティティがトランザクションデータの公開を停止した場合、ユーザーは暗号資産やトークンを引き出すことができなくなってしまうためです。
このため、EthereumのData Availabilityについては切り離すことをせず、段階的に改善しようとする開発方針がEthereumのロードマップにて示されています。
次回はEthereumのData Availabilityを改善する技術であり、ダンクシャーディングの前身となる技術でもある、「プロトダンクシャーディング(Proto-Danksharding)」について見ていきたいと思います。
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