近年、世界は環境問題、社会格差、資源の枯渇といった多岐にわたる課題に直面しており、これらの問題を解決するためには、従来の金融システムを根本から見直す必要性が高まっています。
その中で、注目を集めているのが『ReFi(再生金融)』という新たなアプローチです。ReFiは、環境保全や社会的課題の解決を目的とした金融の仕組みです。
本記事では、ReFiの基本的な概要から、なぜ注目されるのか、どのような領域と相性が良いのか、具体的なプロジェクト事例などを解説いたします。この記事でReFiで押さえておくべき基礎知識を丸っと把握できますので、ぜひ最後までご覧ください。
ReFi(再生金融)の概要
ReFi(リファイ)とは『Regenerative Finance(再生金融)』の略で、新しい金融のアプローチのことです。ReFiは、環境問題や社会課題の解決に対して経済的なインセンティブを付与することで、持続可能な社会を自然な流れで実現しようとする取り組みのことを表しています。この経済的なインセンティブの付与に、ブロックチェーン技術が活用されるのです。
なぜReFiが注目されているのか
世界中で深刻化する気候変動や資源の枯渇、社会的な格差の拡大といった問題は、従来の金融システムだけでは対処しきれない複雑な課題を生み出しています。これらの課題に取り組むには、多大な資金が必要となると同時に、その資金がどのように効率的かつ透明に使われるかが重要なポイントとなります。
ReFiは、ブロックチェーン技術を利用して取引の透明性を確保し、資金の流れをリアルタイムで追跡できるため、投資家やステークホルダーからの信頼性が高まります。
これにより、従来の金融システムでは実現が難しかった、地域ごとの具体的なニーズに応じた資金配分が行われ、環境保全や社会的包摂といった持続可能な開発目標の達成に向けた効果が期待されています。また、ReFiは、投資家にとっても単なる経済的リターン以上の価値を提供することが可能であり、環境保全や社会貢献が長期的な経済成長に結びつくという新しいビジョンを提示しています。
こうした背景から、ReFiは単なる金融手法の一つに留まらず、社会全体の仕組みを見直すきっかけとして注目を集めるに至っています。
ReFiと相性の良い領域
ReFiの仕組みは、特に持続可能な開発に直結する分野で大きな効果を発揮します。本項では、以下3つの領域について詳しく解説いたします。
- 気候変動
- 自然資源の保全と再生
- 地域経済の活性化
まず、気候変動対策の分野では、再生可能エネルギーへの投資やカーボンクレジットの取引が、温室効果ガスの排出削減に直結するため、ReFiのアプローチが非常に適しています。そのため、企業や自治体が短期的な利益追求にとどまらず、長期的な環境保全に向けた投資を行うことが可能となります。
さらに、森林や海洋、農地などの自然資源の保全と再生を図るプロジェクトにもReFiはその効果を発揮します。従来、環境保全活動は費用対効果の面で見過ごされがちでしたが、ReFiは環境に貢献する活動そのものが経済的利益を生み出す仕組みを構築するため、保全活動が促進される仕組みとなっています。
加えて、持続可能な地域経済の活性化にもReFiは大きな可能性を秘めています。環境にやさしい農業技術の導入や、地域資源を活用した地産地消の取り組みが、再生金融の仕組みにより経済的に支えられることで、地域全体の活性化が期待できるのです。
このように、ReFiは気候、環境、地域経済といった多様な分野でその効果を発揮し、従来の金融システムではカバーしきれなかったニーズに応える新たなアプローチとして注目されています。
ReFiとDeFiの違い
ReFiとDeFi(分散型金融)はどちらもブロックチェーン技術を基盤としており、中央集権的な管理者を排した分散型の仕組みを特徴としています。しかし、両者の目的と焦点は大きく異なります。
DeFiは、金融取引の効率化、透明性の向上、手数料の低減など、主に金融システム自体の革新を目指す取り組みです。ユーザー同士が直接取引を行う仕組みを提供し、従来の銀行や金融機関に代わる新たな金融エコシステムの構築を進めています。
一方、ReFiはDeFiの技術的な基盤を活かしつつ、環境保全や社会的課題の解決に重点を置いています。すなわち、ReFiは資金の流れを環境や社会の改善に結びつけるための仕組みであり、長期的な持続可能性や社会的インパクトを重視する点が大きな特徴です。DeFiが市場の自由競争や金融取引の効率性を追求する一方で、ReFiは環境再生や地域社会への還元といった目的を掲げ、経済活動が直接的に社会や自然にプラスの影響を及ぼすよう設計されています。
ReFiとカーボンクレジットの関係性
カーボンクレジットは、温室効果ガスの削減に貢献した活動に対して発行される取引可能な排出権で、企業や自治体が環境保全に取り組むインセンティブとして機能します。この仕組みは、1990年代後半の国際連合の枠組みや京都議定書に基づいた排出取引制度から始まり、そこからカーボンクレジットを売買するための市場であるカーボンクレジット市場が形成されました。しかし、従来の市場では、中央集権的な管理体制や煩雑な認証手続きが障壁となり、取引の透明性や信頼性に課題がありました。
ここでReFiの仕組みが役立ちます。ブロックチェーン技術を用いることで、カーボンクレジットの発行から取引、そして実際の温室効果ガス削減量までをリアルタイムで記録・追跡でき、透明性が大幅に向上します。これにより、環境保全活動への信頼性が高まり、企業や自治体がより積極的にカーボンクレジット市場に参加できるようになるとともに、排出削減の取り組みが効率的に進むことが期待されます。
ReFi関連プロジェクトの事例
Klima DAO
出典元:https://www.klimadao.finance/
KlimaDAO(クリマダオ)は、カーボンクレジットをブロックチェーン上でトークン化することで、環境保全活動への資金循環を促進するプロジェクトです。従来の中央集権型システムが抱える透明性や効率性の問題を解消するため、DAO運営により参加者がコミュニティ主導でカーボンオフセットに関する意思決定を行います。ここでのカーボンオフセットとは、企業や個人が排出する温室効果ガスを、排出量と同等の温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方です。
KlimaDAOは日本チーム(KlimaDAO Japan株式会社)が存在しており、日本チームが主導となって進めているプロジェクトが複数あります。2024年11月には、ブロックチェーン基盤のカーボンクレジットマーケットプレイス『KlimaDAO JAPAN MARKET』のベータ実証実験の開始を発表しました。この実証実験には、みずほフィナンシャルグループやソフトバンクといった大手企業も参画を表明しています。
出典元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000137021.html
SINRA
SINRAは、地域の自然資源をデジタル資産化することで環境保全と地域経済の持続可能な発展を目指すプロジェクトです。三重県尾鷲市で進められています。
具体的には、購入するタイミングやCO2の吸収量によって色やデザインが変化するNFT『Regenerative NFT』を発行し、環境保全活動に参加する個人や企業に報酬を提供します。これにより、従来は費用負担が重かった自然保全活動が、経済的メリットと直結し、地域コミュニティ全体の活性化につながる仕組みが構築されます。具体的な流れとしては、以下の図をご覧ください。
出典元:https://sinra.app/jp#project_overview
まとめ
本記事では、ReFi(再生金融)の基本的な概念から具体的なプロジェクトの事例まで、包括的に解説を行いました。
従来の金融システムでは環境破壊や社会的格差といった問題に十分に対処できなかった現実を背景に、新たなアプローチとして考案されたReFi。
ReFiは単なる新しい金融手法の一つに留まらず、環境、社会、経済という三位一体の視点から未来の社会を再構築するための革新的なアプローチになり得ます。長期的かつ持続可能な発展を実現するための存在として、今後ますます注目されることでしょう。
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