暗号資産・ビットコインのカストディとは?定義やサービスを解説します

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暗号資産カストディ

暗号資産のカストディって何なのだろう?」「自社の暗号資産を安全に保管してくれる信頼できるカストディ業者を探しているのだけど…」

暗号資産を取り扱う際のカストディについてこのような疑問を抱く方もいるのではないでしょうか?また、事業者であれば暗号資産の厳重な保管を求められるケースが多いため、管理を委託する場合も少なくないでしょう。

このように、暗号資産の管理や保管に関する疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。特に企業として暗号資産を扱う場合、セキュリティ面での懸念から、専門業者への管理委託を検討されるケースが増えています。

本記事では、資産管理を意味する「カストディ(Custody)」という概念から、その重要性、具体的な管理方法まで、実務に即した形でご説明していきます。暗号資産の安全な管理についてお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。

従来の金融業界におけるカストディとは

「カストディ」とは、もともと金融・証券業界で使われている言葉で、投資家の代わりに有価証券の保管や管理をおこなう業務を総称します。有価証券の預かり業務を指す場合もありますが、一般的には配当金の受け取りや保有する証券にかかわる情報の伝達などの幅広い業務をふくめた用語です。

この業務をおこなう機関や代理人のことを「カストディアン」といいます。

カストディアンとは

「カストディアン」とは、投資家に代わってカストディをおこなう第三者や企業のことです。カストディアンは扱う有価証券の違いによって「グローバル・カストディアン」と「サブ・カストディアン」のふたつに分けられます。

グローバル・カストディアンは複数国の有価証券の保管・管理をおこないます。有名なのは、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンやJPモルガン・チェースなどです。

対して、サブ・カストディアンは自国または現地の有価証券の保管・管理を対象にしています。日本では、日本マスタートラスト信託銀行や日本カストディ銀行が有名です。

暗号資産のカストディとは「秘密鍵」を管理すること

「暗号資産のカストディ」とは、金融業界で使われているカストディとほとんど同じで、暗号資産を保管・管理することです。ただし、暗号資産の場合は暗号資産そのものではなく、その資産の所有権が自分にあることを証明する「秘密鍵」を管理します。

この分野は近年、法規制の整備も進んでいます。2020年5月に施行された改正資金決済法では、暗号資産交換業者に対して以下のような規制が追加されました。

  • 厳格な本人確認の義務付け
  • 顧客資産の分別管理の義務化
  • セキュリティ対策の強化

これらの規制により、暗号資産のカストディサービスの信頼性と安全性が向上しています。

出典元:「暗号資産(仮想通貨)に関連する制度整備について」3/7

暗号資産のカストディの重要性

暗号資産は登録しているID・パスワードの流出やサーバーのハッキングなど危険が多く、自分で保有するリスクが高いものです。そのため、管理方法を問わず暗号資産を持っている方は誰しも、暗号資産のカストディについて考えておく必要があるでしょう。

もっとも大切なのは、秘密鍵を紛失しないように気をつけることです。前述したように秘密鍵とは、暗号資産の所有権が自分にあることを示すパスワードのようなものです。これがなくなると、自分が保有する暗号資産にアクセスできなくなります。

また、強力なセキュリティ対策をしておくことも重要です。暗号資産はインターネットを介するため、いつでもハッキングされてしまう恐れがあります。そのため、オフラインで保管するコールドウォレットや取引の署名に複数の秘密鍵を必要とするマルチシグのシステムなどを取り入れて、暗号資産を流出させない工夫をしましょう。

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暗号資産のカストディの種類

暗号資産のカストディは、大きく分けて「セルフカストディ」と「カストディサービスの利用」の2種類があります。セルフカストディとは自分で暗号資産を管理することで、カストディサービスの利用は、取引所などの業者に自分の暗号資産を管理してもらうことを指します。

ここでは、ふたつの方法についてくわしく解説します。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分の状況や目的に合わせて適切なほうを選びましょう。

自分で管理を行う「セルフカストディ」とは

「セルフカストディ」とは、保有している暗号資産を自分で管理することです。具体的には、暗号資産を入れているウォレット、つまり、財布のようなものを使用できる秘密鍵や、PCや管理ツールを変更する際のにウォレットを復元するためのシークレットリカバリーフレーズを管理します。

セルフカストディをする場合は「コールドウォレット」の購入を検討しましょう。コールドウォレットとは、インターネット上に常に接続しているホットウォレットとは対照の、インターネットに接続しない状態で保管するウォレットのことです。

セルフカストディのメリット

セルフカストディのメリットは、安全性が高いこと以外にもいくつかあります。ここでは3つのメリットを紹介します。

取引所が倒産してしまっても影響がない

カストディサービスを利用する場合、万が一サービスを提供する取引所が倒産してしまったら、保有している暗号資産が危険にさらされてしまいます。個人で管理しておくことで取引所の影響を受けないのは、セルフカストディのメリットです。

最終的に自分の身は自分で守るしかありません。周りの影響を受けることなく資産形成したい方にはおすすめです。

個人情報が守られる

一般的にトークンを受送信する際は、本人確認のために個人情報や関連書類を提出する必要があります。しかし、セルフカストディであればそもそも自分しかやりとりを管理できないため、本人確認は不要です。

インターネット上に個人情報を提出しなくてよいので、よりプライバシーが守られます。他人に取引の履歴や総資産額を知られることもありません。情報流出を避けたいという方は検討するとよいでしょう。

セルフカストディのデメリット

自分で暗号資産を管理を自分で行う場合、さまざまな問題が生じることがあります。

自分で管理したいと考えている方は、以下の内容を踏まえてリスクヘッジを行いましょう。ここではセルフカストディのデメリットを3つ説明します。

手間がかかる

自分で管理できる点で自由度が高い一方で、数あるウォレットの中から口コミがよく信頼できるものを調査する手間がかかります。また、購入したあとも、より安全に暗号資産を保護するための複数のセキュリティや認証システムを自分で設定しなくてはいけません。

カストディサービスを利用すればほとんど任せるだけですが、自分でカストディを行うとなれば、セキュリティ対策やプライバシー保護について知っておく必要があります。自ら情報収集して行動していく時間や手間がかかることは、考えておいたほうがよいでしょう。

ウォレットをなくしたりシークレットフレーズを忘れたりしたら復元できない

自分だけが秘密鍵を知っているというのは、資産を守る観点から考えると安心材料ですが、シークレットフレーズなど利用するのに必要な情報を紛失してしまったら資産を復元するのは困難です。

また、保管方法に悩む方も多くいます。個人パソコンやスマートフォンのファイルやメモを使用しても、端末ごとウイルスに感染してしまえば流出は免れません。また、紙に印刷するなどのアナログな方法も、紙の盗難、紛失、消失の危険性があります。

すべて自己責任で管理しなければいけない

ウォレットサービスを提供している業者でも、あなたの秘密鍵の情報は全く知りません。そのため、万が一のことが起きたときでも責任を負うのはすべて自分です。

自由に管理できるのがセルフカストディのメリットですが、個人管理であるため、盗難や詐欺にあったりハッキングされたりした場合でも、誰も守ってくれません。自由度と引きかえに、周囲のサポートが受けられないことは理解しておくべきでしょう。

委託して管理を行う「カストディサービス」とは

「サードパーティカストディ」とは、取引所などを通じてカストディ業務を専門とする第三者に自分の暗号資産を預ける管理方法です。多くの取引所がカストディサービスをおこなっており、資産の管理だけでなく運用した資産の受け渡し決済や権利情報の伝達などの幅広い業務を担っています。

カストディサービスのメリット

カストディサービスを利用すると、慣れていなくても比較的簡単に暗号資産の管理が可能です。ここでは、これ以外に3つのメリットを紹介します。

利便性が高くてだれでも使いやすい

多くの取引所では、購入した暗号資産をそのまま取引所内で管理してくれます。個人で資産管理をする場合は、自分でウォレットを購入して設定をおこなうなどの手間がかかるため、その必要がないカストディサービスは便利です。

また、自分の保有する暗号資産にアクセスするための秘密鍵も管理を委託することになるため、自分で管理する必要がありません。

システムやセキュリティ対策について詳しくなくてもカストディサービスを利用することで安心して資産管理ができます。

ハッキングされた場合に保護してくれる可能性がある

日本のカストディ業者は、改正資金決済法に基づいて金融庁に登録されています。そのため、取引所がハッキングされて資産が流出しても、法律で資産が保護されている場合が多いです。

個人で管理していてトラブルに巻き込まれても、誰も責任を負ってくれませんし、保護を受けることもできません。法的な対応が期待できる点で、カストディサービスはトラブルの発生時でも安心感があります。

取引に集中できる

セルフカストディであれば、セキュリティ対策や秘密鍵の管理など、暗号資産に関することすべてを自分で対応しなければいけません。対して、カストディサービスは資産管理を任せることで、自身の管理業務の負担を減らせます。

とくに取引を頻繁におこなっている方や扱っている量が多い方は、取引にくわえて管理もするのは難しいでしょう。サービスを利用することで取引だけに集中できることは、大きなメリットのひとつです。

カストディサービスのデメリット

カストディサービスは、自分に代わって暗号資産を管理してもらえるため、複数の暗号資産を保有する方や頻繁に取引をおこなう方にはとても便利なサービスです。しかし、メリットばかりではなく、注意点もいくつかあります。

ここでは3つのデメリットを解説します。

取引所やカストディ企業のハッキングや倒産で資産を失う可能性がある

カストディ業者は高いレベルのセキュリティ対策を講じていることが多いです。しかし、FTXやBinanceのような世界的規模の取引所でもハッキング事例が発生しているため、ハッキングの可能性もゼロとは言い切れません。また、サービスを提供する会社が倒産することもあります。そのようなことがあれば、預けていた資産を失うかもしれません。

預け先のトラブルが自分に影響をもたらす可能性があることを承知のうえで利用するようにしましょう。

取引所のルールや制限に従う必要性

カストディサービスを利用する場合、自己管理(セルフカストディ)と比べて資産の利用に制限が生じる場合があります。

  • システムメンテナンス中の取引停止
  • 緊急時のサービス一時停止
  • 出金額や取引額の制限
  • 規約変更に伴う手数料の見直し
  • 新規規制への対応による利用条件の変更

特に重要な取引やタイミングの良い売買機会があっても、これらの制限により意図した通りの取引ができないことがあります。

たとえば、市場が大きく動いている時にシステムメンテナンスと重なってしまったり、急な規約変更で手数料が引き上げられたりするケースもあります。

このような制限は、取引所のセキュリティ維持や法令遵守のために必要な場合も多いですが、利用者としては事前に理解しておく必要があります。

法人の暗号資産管理はカストディサービスも選択肢になる

暗号資産を利用する法人が増えてきています。暗号資産は価格変動やトラブルが起こりやすいため、法人ではリスクを避けるためにカストディサービスを検討してみるのもおすすめです。

カストディサービスを導入するメリットのひとつに、すぐに保有資産にアクセスできることがあります。必要なときにすぐ法定通貨に交換できる体制があると安心感があるでしょう。

また、カストディサービスであれば、セキュリティの強化が期待できます。暗号資産はハッキングや盗難のリスクがつきものです。法人ではとくに資産を失うことが会社の存続に関わります。十分な対策をするために、プロの業者を活用するのもひとつの手です。

カストディサービス一覧

暗号資産のカストディサービスを選ぶときは、以下のポイントを確認することが大切です。

  • どのようなセキュリティ対策をしているか
  • 手数料がどのくらいかかるか
  • 利用者の評価がよいか

Coincheck

Coincheck

出典元:https://coincheck.com/ja/

「Coincheck(コインチェック)」は、東証プライム市場上場企業であるマネックスグループ株式会社の子会社です。2024年11月時点で31種類の暗号資産を扱っており、多くの銘柄から好きな暗号資産を購入できます。

親会社のマネックスグループは金融サービスを運営しており、管理体制について多くのノウハウがある大手企業です。過去にハッキングの被害にあってしまったコインチェックですが、マルチシグ、二段階認証、SSLなどの対策を強化し現在は厳重なセキュリティ対策がなされています。

過去の経験があるからこそ、現在は安心して利用できる体制が整っています。

SBI VC Trade

SBI VC トレード

出典元:https://www.sbivc.co.jp/

「SBI VC Trade(SBI VCトレード)」は、東証プライム市場上場企業のSBIホールディングス傘下の子会社が運営する国内取引所です。

セキュリティについても、金融サービスを扱うグループの子会社ならではの対策がされていて安心です。ホームページでは、マルチシグネチャや二要素認証などの具体策も紹介されていますが、これらにくわえてサイバー攻撃や内部犯行防止策を公表している点が他社とは異なります。

参照元:https://www.sbivc.co.jp/crypto-assets/efforts-for-safe-trading

Coinbase Custody

Coinbase カストディ

出典元:https://www.coinbase.com/prime/custody

世界最大級の暗号資産取引所として知られるCoinbaseが提供するCoinbase Custodyは、機関投資家向けの専門的な資産管理サービスとして高い評価を得ています。特筆すべきは、その子会社であるCoinbase Custody Trust Companyが米国のビットコインETFのカストディ業務を担当している点です。

Coinbase Custodyの特徴は、柔軟なカスタマイズ性にあります。企業規模や業態に応じて、セキュリティレベルや取引承認プロセスなど、様々な設定を細かく調整できます。このため、暗号資産取引業者やブロックチェーン関連企業など、専門性の高いビジネスを展開する事業者からも、実務に即した使いやすいサービスとして支持を集めています。

BitGO

BitGo

出典元:https://www.bitgo.com/

米国カリフォルニア州に本社を置いているBitGOは、暗号資産のカストディサービスを提供しています。t(JCBA)の正会員としても登録されています。
参照元:https://cryptocurrency-association.org/member/bitgo-inc/

BitGoは世界の1,500 を超える機関から信頼されていると公表しており、ブロックチェーンプロジェクトであるSuiや、欧州の大手暗号資産取引所「Bitstamp」でも活用されています。

まとめ

暗号資産のカストディとは、保有する暗号資産の持ち主であることを証明する秘密鍵を管理することです。管理方法として、自分でおこなうセルフカストディと、カストディサービスをおこなう取引所や第三者に委託するサードパーティカストディがあります。

さまざまなリスクから暗号資産を守るためには、両者を使用目的や状況によって使いわけることが重要です。紹介したメリットやデメリットを参考に、自分に合ったカストディを選択しましょう。

また、『【徹底比較】ブロックチェーン開発で注目の企業13選!各社の実績と特徴を解説』では、ウォレットサービスも紹介しているので、気になる方はぜひご覧ください。

【徹底比較】ブロックチェーン開発で注目の企業13選!各社の実績と特徴を解説

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