今週も暗号資産アナリストの松嶋がビットコイン相場の動向を分析します。
- ビットコインはブラックロック現物ETFへの期待が高まる中でBTC=446万円(31,000ドル)を上抜けた。しかし、米国の暗号資産カストディ企業プライムトラストの経営状況悪化が報じられ、次第に売りが強まった。その中、マイクロストラテジーによるビットコイン買い増しの発表もあり、BTC=432万円(30,000ドル)付近では底堅く推移した。
- 来週のビットコインはブラックロック現物ETFへの期待が継続するも、暗号資産関連企業の破綻もあり、上値の重い展開か。直近、上値として2022年5月高値付近であるBTC=461万円(32,000ドル)、下値としてレンジ半ば付近であるBTC=403万円(28,000ドル)を意識する。
今週の相場動向
相場回顧 BTC:プライムトラストの破綻が相場の重し
ビットコインは、米国で初めてレバレッジ型のビットコイン先物ETFが承認され、ブラックロックなどが申請したビットコイン現物ETFへの期待がますます高まる中でBTC=446万円(31,000ドル)を上抜けた。米最高裁がコインベースに対する集団訴訟を却下したことも好感された。しかし、米国の暗号資産カストディ企業プライムトラストの経営状況悪化が報じられ、同社の買収を予定していたカストディ企業ビットゴーが取引を中止したこともあり、次第に売りが強まった。26日にはプライムトラストが実質破綻に陥り、同社が発行体として取引していた米ドル連動型ステーブルコインTUSDに対する懸念が強まった。また、ブロックチェーン開発プロジェクトのスイ【SUI】がオンチェーン取引履歴から運営のロックアップ分を一部売りに出したことが疑われ、SUIの価格が大きく下落した。こうした中、ビットコインも軟調な値動きとなったが、マイクロストラテジーによるビットコイン買い増しの発表もあり、BTC=432万円(30,000ドル)付近では底堅く推移した。また、ステーブルコインとアルトコインへの不安からビットコインを逃避的に購入する動きもあり、ビットコインのドミナンスは約52%まで上昇した。
ビットコインキャッシュが週次でおよそ2倍の価格に高騰した。これは様々な憶測があるが、米国でフィデリティなど大手金融機関が出資している暗号資産取引所EDXマーケッツの取扱銘柄に含まれたことが大きく影響していると見られている。ビットコインキャッシュは今年5月にトークン発行機能を追加するアップグレードを終えてから注目が集まっており、今回のEDXマーケッツへの上場によってビットコインと同様に非証券銘柄として機関投資家による投資が進むと期待されている。
今週のトピックス
金融市場
- 米経済データは予想上回る力強さ、リセッション懸念を寄せ付けず
- FRB資産削減継続、短期金融市場がお墨付きへ-準備預金に影響なく
- ワグネル創設者、ベラルーシ到着か プーチン氏「内戦阻止」とロシア兵称賛
- 米英欧の中銀トップ、追加引き締めを表明-利上げでも経済は強靱
- 米国が新たなAI半導体輸出規制を計画、エヌビディア念頭に-関係者
暗号資産市場
- スイス中銀 CBDCの発行実験をSIX Digital Exchangeで実施へ
- 香港HSBCの顧客、ビットコインとイーサリアムのETFに投資が可能に
- 仮想通貨カストディPrime Trustが事実上破綻 ウォレットへのアクセス喪失か
- Sui財団、ステーキング報酬の売却を否定 バイナンス送金の指摘に回答
- ジャック・ドーシー氏、アップルペイのビットコイン対応をティム・クックCEOに要求
来週の相場予想
BTCはブラックロック現物ETFへの期待が継続するも上値の重い展開
欧米各国の中央銀行は経済の堅調さを見て金融引き締めを継続する姿勢を示している。米国では年内2回の追加利上げが予想されているが、経済およびインフレの動向次第では利上げ回数を増やす可能性はある。来週は米国で6月ISM関連指標と6月雇用統計の発表を控えており、これらが良好な内容となった場合には、次回FOMCにかけて追加利上げの懸念が高まりリスク資産の売りが強まることは考えられる。無難に通過した場合には安心感によって買いが強まるだろう。
ロシア情勢についても注視したい。民間軍事会社ワグネルによる武装反乱をきっかけに地政学リスクが高まっており、金融市場ではリスク資産を積極的に買いづらい状況となっている。しかし、ビットコインについては有事の際に逃避資産として注目される面もあるため、情勢の悪化がむしろビットコインの逃避的な買いを集めることも考えられるだろう。
また、ブラックロックのビットコイン現物ETFへの期待も継続しており、コインベースの訴訟問題の解決とともにSECによる承認がおりれば、ビットコインの価格は高騰するだろう。ただし、暗号資産カストディ企業プライムトラストの破綻による影響は見極めが必要であり、バイナンスと各国当局の対立も不透明なままとなっているため、好材料が新たに出るまでは上値の重い展開が続くだろう。
直近、上値として2022年5月高値付近であるBTC=461万円(32,000ドル)、下値としてレンジ半ば付近であるBTC=403万円(28,000ドル)を意識する。
来週のトピックス:暗号資産市場に影響しうる指標をピックアップ
経済イベント・指標
- 日本、4-6月期日銀短観(7/3)
- 米国、6月ISM製造業景況指数(7/3)
- 米国、FOMC議事要旨(7/5)
- 米国、6月ISM非製造業景況指数(7/6)
- 米国、6月雇用統計(7/7)
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都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの創業メンバーとして業界調査や相場分析に従事。2018年、マネックスグループ入社。マネックスクリプトバンクでは業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain Data Book 2020」などを執筆し、現在はweb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。
著書:
『暗号資産をやさしく教えてくれる本』(あさ出版)