DAGは「Directed Acyclic Graph」の略で、日本語では「有向非巡回グラフ」と呼ばれます。これは、一種のデータ構造であり、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン技術において特に注目されている概念の一つです。
まず、「グラフ」というのは、数学やコンピュータ科学の分野で使われる用語で、点(頂点)と、それらをつなぐ線(辺)で構成される図のことを指します。例えば、都市間の交通網を考えるとき、都市を点で表し、それらを結ぶ道路や鉄道を線で表すと、グラフになります。
「有向」とは、グラフの辺に方向性があることを意味します。つまり、A地点からB地点への一方通行の道のように、辺には「ここからここへ」という向きが定められています。これに対して、方向性がないグラフを「無向グラフ」と呼びます。
「非巡回」とは、グラフの中で同じ点を2回以上通らずに辿ることができる経路が存在しないことを意味します。つまり、どこかの点からスタートして同じ点に戻ってくるようなループ(巡回路)がない状態です。
これらの特性を持つDAGは、ブロックチェーン技術において重要な役割を果たします。ブロックチェーンは、取引の記録をブロックという単位でチェーンのようにつなげていくデータ構造ですが、これは基本的に一本の線(チェーン)でつながっているため、取引の処理速度やスケーラビリティ(システムの拡張性)に限界があります。
DAGを用いたシステムでは、ブロックを一列につなげるのではなく、複数のブランチ(枝分かれ)を持つことができるため、取引を並行して処理することが可能になります。これにより、取引の確認が速くなり、より多くの取引を効率的に処理することができるようになるのです。
暗号資産の世界でDAGを用いた代表的なプロジェクトには、IOTAやNanoなどがあります。これらのプロジェクトは、ブロックチェーンの代わりにDAGを基盤として使用しており、特にIOTAはIoT(モノのインターネット)デバイス間のマイクロペイメントに特化しています。
DAGは、ブロックチェーンが抱える問題点を解決する可能性を秘めていますが、まだ新しい技術であり、セキュリティやガバナンス(統治)の面で課題も残っています。しかし、その特性を活かした様々な応用が研究されており、将来的には金融やテクノロジーの分野で広く利用されることが期待されています。
DAGは単なるデータ構造にとどまらず、それを活用した新しいタイプの分散型台帳技術として、暗号資産やブロックチェーンの分野で注目されているのです。