自己中心的マイニングとは

自己中心的マイニング(Selfish Mining)は、ブロックチェーンネットワークにおける攻撃手法の一つで、マイナーがネットワーク全体に対して不正な優位を得るために行われます。この攻撃は、ブロックチェーンの基本的なプロトコルの弱点を利用することで、マイナーがより多くの報酬を得ることを目的としています。

ブロックチェーンは、分散型台帳技術(DLT)の一種であり、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の基盤となっています。マイニングとは、取引の検証と新しいブロックの生成を行うプロセスであり、これに成功するとマイナーは報酬として暗号資産を受け取ります。

通常のマイニングプロセスでは、マイナーは新しいブロックを見つけたら直ちに他のネットワーク参加者にそのブロックを公開します。これにより、全てのマイナーが最長のブロックチェーンに基づいて次のブロックの生成に取り組むことができます。しかし、自己中心的マイニングでは、あるマイナーが新しいブロックを見つけたときにそれを直ちに公開せず、秘密裏に保持します。

自己中心的マイニングの戦略は以下のように進行します:

  1. 自己中心的マイナーは新しいブロックを見つけると、それを秘密にして公開せず、プライベートチェーン(秘密のブロックチェーン)を構築します。
  2. 他の正直なマイナーは、最新のブロックが公開されていないため、古い情報に基づいてマイニングを続けます。
  3. 自己中心的マイナーのプライベートチェーンが公開されたチェーンよりも長くなったとき、あるいは正直なマイナーが新しいブロックを見つけて公開したとき、自己中心的マイナーは自分のプライベートチェーンを公開します。
  4. ブロックチェーンのルールに従い、最も長いチェーンが正当なチェーンとして採用されるため、自己中心的マイナーのチェーンが採用されます。
  5. この結果、正直なマイナーが見つけたブロックは孤立し(オーファンブロックと呼ばれる)、そのマイニングによる報酬は無効となります。
  6. 自己中心的マイナーは、公開していなかったブロックの報酬と、その後に続くブロックの報酬を独占することができます。

このような行動は、ブロックチェーンのセキュリティと公平性に悪影響を及ぼします。なぜなら、自己中心的マイニングを行うマイナーは、通常よりも多くの報酬を不正に得ることができ、その結果、ネットワークのマイニングパワーが集中し、中央集権化が進む恐れがあるからです。また、この攻撃は他のマイナーの努力を無駄にし、ネットワークの信頼性を低下させる可能性があります。

自己中心的マイニングは、特にマイニングパワーが集中している状況で有効な攻撃手法となり得ます。そのため、ブロックチェーンのプロトコルを設計する際には、このような攻撃を防ぐための対策を講じることが重要です。例えば、報酬の分配方法を変更する、あるいはネットワークのプロトコルに変更を加えることで、自己中心的マイニングのインセンティブを減少させることができます。

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