オフチェーン取引とは、文字通りに解釈すると「チェーン(ブロックチェーン)の外で行われる取引」を意味します。これを理解するためには、まずブロックチェーンとオンチェーン取引について知る必要があります。
ブロックチェーンは、暗号資産(仮想通貨)の取引記録を時系列に並べ、それをブロックという単位でチェーン(鎖)のように連結して保存する技術です。ビットコインなどの暗号資産は、このブロックチェーン上で取引が行われ、その記録が全参加者に共有されます。このように、ブロックチェーン上で直接取引が行われ、記録されることを「オンチェーン取引」と呼びます。
一方で、オフチェーン取引はブロックチェーン外で行われる取引のことです。これには、取引所の内部で行われる取引や、プライベートな契約による取引などが含まれます。オフチェーン取引の最大の特徴は、ブロックチェーン上に記録されないため、取引が速く、手数料が安い、または無料であることです。
例えば、暗号資産取引所では、ユーザー同士が取引所のプラットフォーム上で資産を交換しますが、これらの取引はブロックチェーン上ではなく、取引所の内部データベースで管理されます。このため、ブロックチェーンのネットワークが混雑していても、取引所内の取引は影響を受けずに迅速に行うことができます。
オフチェーン取引の利点は以下の通りです。
- 速度:ブロックチェーンに記録されるオンチェーン取引は、ネットワークの承認プロセスを必要とするため、時間がかかることがあります。しかし、オフチェーン取引はそのようなプロセスが不要なため、即時に取引が完了します。
- 手数料:オンチェーン取引では、取引をブロックチェーンに記録するための手数料が必要です。しかし、オフチェーン取引ではそのような手数料がかからないか、かかっても非常に少額です。
- プライバシー:オフチェーン取引はブロックチェーン上に公開されないため、取引の詳細が外部に漏れるリスクが低く、プライバシーが保たれます。
しかし、オフチェーン取引にはいくつかの欠点もあります。
- 中央集権性:取引所などの中央集権的なエンティティがオフチェーン取引を管理するため、そのエンティティが信頼できない場合、リスクが生じます。
- 監査性の欠如:オンチェーン取引はブロックチェーン上に永久に記録されるため、取引の透明性が保たれますが、オフチェーン取引はその記録が外部からは見えないため、監査が困難です。
- スケーラビリティとセキュリティのトレードオフ:オフチェーン取引はスケーラビリティ(大量の取引を処理する能力)を向上させますが、ブロックチェーンのセキュリティメリットを享受できない場合があります。
オフチェーン取引は、特に高頻度取引や小額取引において有用ですが、取引の安全性や透明性を保つためには、信頼できる第三者や取引所の選択が重要になります。また、オフチェーン取引の概念は、スマートコントラクトやライトニングネットワークなどの技術を用いて、ブロックチェーンのスケーラビリティ問題を解決するための手段としても発展しています。