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注目トピックス解説
Sony開発のブロックチェーン『Soneium』がメインネットをローンチ、その後ユーザー資産の凍結で議論が巻き起こる
2025年1月14日、Sonyが開発したEthereumのL2ブロックチェーン『Soneium(ソニューム)』が正式にメインネットをローンチしました。SoneiumはソニーグループとStartale Group(日本発のブロックチェーン『Astar Network』を創業した渡辺創太氏が主導)の合弁会社であるSony Block Solutions Labsが開発した、ゲームやエンターテインメント向けのブロックチェーンです。
しかし、ローンチ後にSoneium運営が取った対応によって、業界内で激しい議論が巻き起こる事態となりました。今回の問題の焦点は、パブリックチェーンであるSoneium上において、プロジェクト運営がユーザー資産を実質的に凍結したとされる対応にあります。ユーザーが資産を自由に移動させられない状況が発生し、大きな波紋を呼びました。以下に、当該対応の詳細を記述します。
今回の対応は、新しくローンチされるパブリックブロックチェーンにおいて頻繁に起こる現象に起因しています。その現象とは、ミームコインの誕生です。ミームコインとは、インターネット上の流行やキャラクター、ジョーク、風刺的なユーモアなどをモチーフにして作られる暗号資産の一種です。代表的な事例としては$DOGE、$PEPEなどが挙げられ、2025年1月18日に誕生したドナルド・トランプ氏公式のミームコインである$TRUMPも該当します。パブリックブロックチェーンではユーザーが自由にスマートコントラクトをデプロイできる環境となっており、このようなミームコインが頻繁に登場することが知られています。
Soneiumでも例外ではなく、$TOROや$AIBOといったSony関連のキャラクターを基にしたミームコインが数多く出現しました。しかし、これらのトークンはIP(知的財産)権利の許諾を得ていないものでした。こうしたキャラクターやキーワードをモチーフにする動きは従来のミームコイン文化では一般的とされてきましたが、2024年1月15日に上述したような未許諾なミームコインが次々とBAN(排除)される事態が発生しました。具体的には、コントラクトアドレス単位でトークンへのアクセスが遮断され、トークンを新規に購入したり、他のトークンと交換したりすることができなくなりました。この対応により、既にトークンを保有していたユーザーの資産は実質的に価値を失う結果となりました。なお、Soneium運営はローンチ時に『権利侵害に対するポリシー』を公開しており、今回の対応はそのポリシーに基づくものでした。
出典元:https://docs.soneium.org/docs/ip-and-contracts-restriction
この対応が引き起こした混乱は広範囲に及び、当初、意見の大半は反対派に傾いていました。業界関係者からの意見では「ユーザー資産の凍結はパブリックチェーンの理念に反する」、「ブロックチェーンやWeb3的な文化を損なう行為だ」といった声が多く聞かれました。一方で時間を経るにつれて肯定的な意見も増え、「一般ユーザーが影響を受けたのは事実だが、長期的には有益な対応」、「コンプライアンスの観点から、Sonyが権利侵害コンテンツを拒否するのは当たり前」といった主張が見られました。
さらに、Ethereumの創始者であるVitalik Buterinも今回のSonieum運営の対応についてコメントを発表しました。彼は「Soneiumの対応はL2の柔軟性を示す良い例だ。Soneiumは、EthereumのL2が企業に制御権と透明性の選択肢を提供しつつ、ユーザーにオンチェーンの自由と安心感をもたらす仕組みを示している。」と評価し、Sonieum運営の対応に対して肯定的な意見を表明しました。
出典元:https://x.com/vitalikbuterin/status/1879560670150017068
上述した事態に対して、2025年1月15日の夜にSoneium公式ブログから声明が発表されました。その中で「BANの措置は一時的なものであり、完全に元に戻すことが可能」と明言されており、ミームコイン開発者側が適切に対応すれば、トークンが再び動かせるようになると説明しています。
出典元:https://soneium.org/en/blog/philosophy-for-responsible-innovation
今回の事例は、時価総額20兆円を超えるグローバル企業のSonyが主導する企業発ブロックチェーンの難しさを象徴する出来事となりました。企業が主導する以上、従来のWeb3の世界で許容されてきた権利侵害に対して厳しい対応を取ることは合理的な判断だと言えます。しかし一方で、Soneiumの特性やポリシーをユーザーに十分理解させるためのコミュニケーションが不足していた点は、課題として挙げられます。今後、Soneium運営がどのように対応を進めていくのか、その動向を注視する必要があるでしょう。
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RevolutとPyth Networkが提携、多様化するオラクルサービス
コメント:宮本
オラクルを提供するPyth Networkは1月8日、英フィンテック企業であるRevolutとの提携を結んだことを発表しました。
オラクルは、ブロックチェーンの外部から現実世界のデータを持ち込み、ブロックチェーンやスマートコントラクトで利用できるようにするサービスのことを指します。
たとえば、担保としてETHを預け入れることで、その担保価値に応じた暗号資産を貸し出すスマートコントラクトを考えてみましょう(いわゆるレンディング)。この場合、オラクルによってETH/USDの市場価格データをブロックチェーン内に持ち込むことで、担保として預け入れたETHの担保価値を計算できるようになり、スマートコントラクトから自動的に貸し出しを実行することができるようになります。このように、オラクルはレンディングなどのDeFiには必須のサービスとなっています。
Pyth Networkは、近年シェアを拡大している比較的新しいオラクルです。オラクルの価値はTotal Value Secured(TVS)という預入資産の合計によって確認することができますが、Pyth NetworkはこのTVSについて直近1年間で3.76倍に増加するなど、大幅に成長しています。
他のオラクルのTVSについても見てみると、主要なオラクルとして知られているChainlinkが約374億ドルとなっており、依然トップを維持しています。一方で、Perp DEX(永久先物取引が可能なDEX)における直近30日間の累積取引高を見てみると、Pyth Networkは約616億ドルとChainlinkの約389億ドルを上回っており、一部領域においてはChainlinkの優位性が失われつつあることが示唆されています。
ChainlinkとPyth Networkの相違点として、主にデータの提供元と、データの更新頻度という2つを挙げることができます。まずはデータの提供元について見ていきましょう。
Chainlinkのデータ提供元は、ノードオペレーターと呼ばれる複数の独立したエンティティとなっています。多くのノードオペレーターはCoinMarketCapやCoinGeckoなどといったデータアグリゲーターからデータを取得しているため、主にサードパーティーデータが利用されています。
一方で、Pyth Networkのデータ提供元は、BinanceやBybitなどの暗号資産取引所や、Cboeなどのオプション取引所となっています。このため、主にファーストパーティーデータがそのまま利用されています。
データの信頼性といった面からは一長一短ありますが、ファーストパーティーデータを利用するPyth Networkには、提携などによってデータ提供元を拡大しやすいといったメリットがあります。今回発表されたRevolutとの提携はこうしたメリットを活かしたもので、銀行データを新たに取り込むことができるといった強みを持つことになります。
次に、データの更新頻度について見ていきましょう。Chainlinkのデータ更新頻度は価格データの種類によって異なりますが、数分~数時間が経過するか、0.5%程度の価格変動が発生したいずれかのタイミングで更新されるといった仕組みとなっています。たとえばETH/USDの場合、1時間が経過するか、0.5%の価格変動が発生したタイミングでデータが更新されます。
一方でPyth Networkは、ユーザーが更新リクエストをトランザクションとして送信するごとに更新される仕組みとなっています。最短で300~400msごとの更新が可能であることを公表しており、ユーザーによる更新リクエストの有無に依存してはいるものの、高速・高頻度でのデータ取得が特徴となっています。1月16日には「Pyth Lazer」という新しいオラクルもリリースしており、こちらは最短で1msごとの更新が可能であるなど、高速・高頻度での価格データ取得を行えるといった特徴については継続してアピールしていくものと推測されます。
一方で、Pyth Lazerのリリースにも記載されているように、高速・高頻度での価格データ取得には分散化の要素がトレードオフとなっています。Perp DEXなどの高速・高頻度での価格データ取得が求められる一部のDeFiではPyth Networkのシェア拡大が見込まれる一方で、より分散化が求められるその他のDeFiでは、引き続きChainlinkのニーズが存在するものと見られます。
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※本まとめはGPT3.5によって自動生成されており、その内容の正確性を保証するものではありません。事例の概要を網羅的に把握するのにお役立てください。
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カテゴリー: CeFi
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