#51:SwiftとChainlinkが共に拓く金融の未来

今週もマネックスクリプトバンクから、Web3.0界隈の動きをお伝えします。

ニュースレターを無料購読していただくと、毎週月曜日の17:00に最新のニュースレターをお届けいたします。

注目トピックス解説

ENSをネイティブサポートした新たなトップレベルドメインが登場

コメント:宮本

ENS(Ethereum Name Service)をネイティブサポートした新たなトップレベルドメイン「.box」が今秋登場します。

「.box」は日本時間の10月12日13時に一般公開される予定となっているほか、公式サイトでは早期アクセスのための申請フォームも用意されています。

ENSは、「0x」から始まる複雑な文字列となるEthereumアドレスの可読性を高めるために、Ethereumのウォレットアドレスに分かりやすい名前を紐付けすることができるサービスです。命名からも推察できるように、インターネットにおけるDNS(Domain Name System)のようなサービスとなっています。DNSによってIPアドレスを任意のドメイン名に置き換えることができるように、ENSを使うことでウォレットアドレスを任意のドメイン名に置き換えることができます。

また、ENSはERC-721に準拠したNFTであるため、ユーザー同士で送受信したり、OpenSeaなどのNFTマーケットプレイスにて売買を行うことが可能になっています。
ENSでは以前から「.com」などのトップレベルドメインにてDNSドメイン名と同じENSを取得できるサービスが提供されていましたが、これまではDNSドメイン名を取得してから別途ENSにインポートを行う必要がありました。

今回登場する「.box」は、DNSドメイン名を取得すると同時にENSも取得することができるトップレベルドメインとなっています。ただし、ENSの運営元であるENS Labsのプロジェクトではないという点には留意しておく必要があります。DNSとENSのシームレスな統合が実現されることにより、従来のインターネットとWeb3がより接近するかもしれません。

SwiftとChainlinkが共に拓く金融の未来

コメント:中坪

先週火曜日、国際的な金融取引やメッセージングの標準化を促進する非営利団体SwiftがSwiftに参加する大手金融機関とともにweb3大手のChainlinkと共同でパーミッションレス型のプライベート及びパブリックブロックチェーンの接続に関する試行を行うことを発表しました。Swiftと言えばロシアのウクライナ侵攻開始直後のロシアへの経済制裁の際に話題になりましたが、まさにその2022年にトークン化証券の金融機関間プライベートブロックチェーンでの相互運用性を開拓するべく実験を開始していました。当時はプライベートチェーンのみでしたが、その可能性をパブリックチェーンへとさらに広げるために今回の協働関係を結んだようです。

Chainlinkといえば以前のメルマガでもご紹介した通り、スマートコントラクトと現実世界のデータを結び付けるオラクルソリューションを提供している巨大web3企業です。今回、Swiftが注目したのは、そんなChainlinkが提供する“Chainlink’s Cross-Chain Interoperability Protocol(CCIP)“というものです。これはその名の通り、異なるブロックチェーン間での取引をガス代を抑えつつ、同一のスマコンインターフェースを通してクロスチェーンでのやり取りを可能にし、チェーン同士の接続を潤滑化するサービスです。

今回CCIPが選ばれた背景には、ARM Networkと呼ばれる独立したネットワークによってブロックチェーンネットワークを監視し、不審なアクティビティを検出する機能が含まれていることが関係しています。この機能は単にセキュリティ能力を高めているだけではなく、不審行動が検出された場合にも信用コストが最低限になるように予防措置を講じ、パーミッションレス型ブロックチェーンの利点であるネットワークの参加の自由度を保ったまま経済的な損失を抑えることができます。

Chainlinkの共同創業者であるSergey Nazarov氏は、このような機能が主要金融機関にとっては魅力的に映っている、今まさに金融業界に受け入れられているアセットのトークン化のトレンドにはブロックチェーン業界のサイズを10倍にするポテンシャルがあると述べ、この協働に対する期待感を寄せています。

Swiftを構成する金融機関は従来から存在する数多の金融インフラの遺産を維持したい反面、新しい技術を使ってより効率化を図りたいという狙いがあります。技術面でのweb3企業と伝統的大企業、組織の協業はますます進みそうです。

 

今週のオンチェーン指標:Proof of Reserve

概要

Proof-of-Reserve(以下、PoR)は、取引所が自己申告したアドレスに保有する暗号資産残高を示しています。

前回紹介した取引所残高を意味するExchange Balance(EB)は、Glassnodeなどのデータプロバイダが独自にブロックチェーン上のデータをもとに計算した推定値になります。そのためEBとPoRでは「EB=PoR+PoRを除く取引所の資産の推計値」という関係があります。

PoRは、2022年11月のFTX破綻により取引所に対する信頼が揺らいだことで、取引所の準備金に対する透明性を高めるために開発された指標です。今ではバイナンスを筆頭に多くの取引所が暗号資産の保有量を自己申告するルールを開始しています。

PoRはオンチェーン上の準備金のみを示している点には注意が必要です。実際にはオンチェーンおよびオフチェーンの負債と合わせて暗号資産の保有状況を検証する必要があり、取引所の開示情報を別途確認することで取引所リスクを評価することができます。

上の図は、バイナンスのPoRとビットコイン価格を表示したものです。2022年の相場下落局面においてPoRは減少し、今年に入ってからはビットコイン価格は上昇しているもののPoRは下がり続けている様子が確認できます。特にバイナンスが発行するステーブルコインBUSD(黄色)の下げが目立ちます。これは米国当局を中心にバイナンスに対する取り締まりが強化されていることが影響していると予想されます。直近の6月5日、米証券取引委員会(SEC)がバイナンスを提訴した際にもPoRは急激に減少しました。投資家がバイナンスに資産を置くのを恐れて資産を逃がしていることが原因だと思われます。

※ここで紹介するオンチェーン指標は参考指標にすぎず、資産の売買を推奨するものではありません。投資判断に活用する場合にはご自身の判断でお願いいたします。

MCB RESEARCHレポート

最新レポート(無料)

「MCBクリプト格付けー30種類の暗号資産を7つの項目別に相対評価」

過去レポート(有料)

販売サイトはこちら

レポート例

  • 「GameFiとはなにか――DeFiの重要性と課題、CEXの役割」
  • 「VR普及はいつ頃達成されるのか?―現状の問題点と関連技術を探る」
  • メタバースのデジタルLANDを開発する方法ーDecentraland開発」
  • 「ブロックチェーンゲームのビジネスモデルと収益推定」
  • 「PAVA指標のレイヤー1トークンへの適用可能性の検討」
  • 「金融バブルを検知するLPPLSモデルの暗号資産への応用」

採用情報

マネックスクリプトバンクではインターン採用を募集中!

Web3やメタバース、NFT事業を研究して、新しい金融の可能性を探ろう!

クリプトのマーケットを研究して未来の指標を作ろう!学生インターン募集中

法律を読み解いてweb3の未来を発⾒しよう!学生インターン募集中

Comments are closed.