今週も暗号資産アナリストの松嶋がビットコイン相場の動向を分析します。
- ビットコインは米SECによるバイナンスおよびコインベースへの提訴によりBTC=356万円(25,500ドル)付近まで急落した。コインべースCEOの過去ツイートが拡散され思惑的に急回復する場面もみられたが、米国の規制リスクが拭えず売りが継続した。
- 来週のビットコインは米FOMC前後の売りに警戒が必要である。米国の暗号資産規制リスクも相場の重しとなるか。直近、上値としてBTC=384万円(27,500ドル)、下値としてBTC=349万円(25,000ドル)を意識する。
今週の相場動向
相場回顧 BTC:米国規制リスクによって売りが強まる
ビットコインは米国金利が上昇する中で軟調に推移していたが、注目の米5月雇用統計は強弱入り交じる内容となり、次回FOMCでの利上げ停止予想が維持されたことでBTC=377万円(27,000ドル)付近では底堅く推移した。3日から4日にかけては薄商いでもみ合いの展開が続いたが、5日に米SECが大手暗号資産取引所バイナンスと代表のCZ氏を提訴したことが伝わると、規制リスクへの警戒感からBTC=356万円(25,500ドル)付近まで急落した。立て続けに米SECがコインベースも提訴したが、これを受けて同社CEOの「我々はビットコインに注力すべき」との過去ツイートがSNS上で拡散され、ジャック・ドーシー氏も賛同のコメントを寄せる中、思惑的にBTC=377万円(27,000ドル)付近まで急回復した。しかし、米イエレン財務長官がSECの対応を指示する発言をし、米国での取り締まりが一部海外にも波及したことで売りが継続した。カナダ中銀が予想に反して政策金利を引き上げたことを受けて次回FOMCでの追加利上げ観測が高まり、米国金利が上昇したことも嫌気された。
今週のトピックス
金融市場
- FOMC、利上げ休止路線を堅持か-雇用統計は労働市場のたるみ示唆
- 米大手行の資本要件20%引き上げも、当局が新規制案検討-関係者
- 米ISM非製造業景況指数、ほぼ活動停滞の水準-仕入れ価格低下
- サウジが100万バレル自主減産へ、OPECプラス会合-原油先物急伸
- 世界の債券利回り上昇、7月米利上げ観測を市場は完全に織り込む
暗号資産市場
- 米SEC、バイナンスと趙CEOを提訴-証券規則に違反
- 米SEC、コインベースを提訴-仮想通貨企業の統制進める動き
- 米SEC、バイナンスUSの資産凍結を要求
- 米裁判所、SECに対しコインベース「規則制定請願」への1週間以内の回答を命令
- 米SECの提訴がバイナンスの韓国進出に影響 金融当局が認可を延期へ=報道
- 米イエレン財務長官、SECらの行動に賛意示す
- 米サークル社、シンガポールで決済ライセンス取得
来週の相場予想
BTCは米FOMC前後の売りに警戒、米国の規制リスクも重し
来週はいよいよ米国のFOMCを迎える。今回での利上げ停止予想が優勢となっているが、カナダ中銀の利上げ再開を受け、米国においても追加利上げの可能性が警戒されている。米6月消費者物価指数がインフレの高止まりを示唆する内容となった場合には、その後のFOMCで利上げ停止が決定されたとしても、パウエルFRB議長のタカ派発言によってリスク資産の売りが強まることは考えられる。
また日欧の金融政策決定会合の内容にも要注目である。ユーロ圏では0.25ポイントの利上げが予想されており、FOMCに続いて世界的な金融引き締めの継続が印象づけられることで売りが強まることはあるだろう。一方、日本は現状維持の予想だが、それによって日米金利差が拡大し、円安進行とともに円建てではビットコインの価格を下支えすることは考えられる。
米国では米SECとコインベースの対立が激化している。ゲンスラーSEC委員長は「米国にデジタル資産は不要である」と暗号資産について否定的な発言をしている一方で、コインベースのCEOは「SECは明確なルールを定めず業界の発展を阻害している」との指摘をしている。この対立によって米国の規制リスクが強く意識され、短期的には売りが強まるだろう。一方、サークルをはじめ暗号資産関連企業が米国外でライセンスを取得する動きが続いており、米国離れが進む中で他の地域で何かブームが起こることに期待したい。
直近、上値として今月高値付近となるBTC=384万円(27,500ドル)、下値として2023年2月高値付近となるBTC=349万円(25,000ドル)を意識する。
来週のトピックス:暗号資産市場に影響しうる指標をピックアップ
経済イベント・指標
- 米国、5月消費者物価指数(6/13)
- 米国、FOMC開催(6/13-14)
- 欧州、ECB理事会(6/15)
- 日本、日銀金融政策決定会合(6/15-16)
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