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目次
注目トピックス解説
MEVをユーザーに分配する「MEV-Share」ベータ版がリリース
コメント:宮本
Ethereumに関する研究機関であるFlashbotsは4月20日、MEV-Shareのベータ版をリリースしました。
FlashbotsはMEVの民主化や分配メカニズムの透明化、持続可能性のあるエコシステムの実現を目標としている研究機関で、これまでにFlashbots AuctionやMEV-Boost、Flashbots Protectなどのツールをリリースしています。今回ベータ版がリリースされたMEV-Shareは、FlashbotsがすでにリリースしているMEV-Boostの仕組みを前提としたツールとなっています。前回のメルマガではMEVという言葉の定義やMEV-Boostの概要について解説していますので、ぜひそちらもご覧ください。
MEV-Shareは、ユーザーが送信したトランザクションに発生するMEVの一部をユーザー自身が受け取ることを可能にするツールです。MEV-Shareの仕組みは次のようなものです。
MEV-Shareでは、従来のMEV-Boostの仕組みに加える形でマッチメーカーという新しい役割を導入しています。マッチメーカーはユーザーからトランザクションを受け取り、受け取ったトランザクションに関するデータの一部をサーチャーに共有する役割を担っています。ユーザーはプライバシー設定を変更することで、サーチャーに共有するトランザクションデータを指定することができます。共有可能なデータの例としては、トランザクションの送信元アドレスや送信先アドレスなどが挙げられます。ユーザーのトランザクションデータが一部共有されるため、サーチャーは従来のMEV-Boostと比較してより最適化されたトランザクションバンドルを作成することが可能になります。その後、ビルダーは最適化されたバンドルを受け取る対価として、MEVの一部をユーザーのウォレットアドレスに送信します。MEV-Shareはユーザーにとって、トランザクションデータの一部をサーチャーに共有する代わりにMEVの一部を受け取ることができる仕組みであるといえます。
MEV-ShareはFlashbots Protectと呼ばれるRPCツールに組み込まれており、ウォレットの設定からカスタムRPCとしてFlashbots Protectを利用することで試すことができます。
MEV-BoostはバリデーターだけでなくビルダーにもMEVを分配する仕組みを実現したものでしたが、MEV-ShareによってユーザーにもMEVが分配できるようになり、Flashbotsが目指すMEVの民主化がさらに進むことになりそうです。正式版のリリースにも期待したいところです。
DeFiレンディング向けにID保護のクレジットスコア導入
コメント:宗田
米国の3大信用情報機関の一つであるトランスユニオンは、4月20日にパブリックブロックチェーンネットワークにクレジットスコアを提供すると発表しました。トランスユニオンはエキファックス、エクスペリアンと並んでアメリカ、ヨーロッパ諸国、アジアに向けて、本人の氏名や住所、電話番号といった「基礎情報」のほか、金融機関の返済状況などの「ポジティブ情報」、延滞や滞納情報といった「ネガティブ情報」をスコアとして会員に提供しています。今回トランスユニオンが提携したのは「プライベート、ボールトレス トークン化」技術を持つスプリングラボと、そのスピンアウトであり、イーサリアムなどの既存のパブリック ブロックチェーン上の DeFi アプリケーションに ID とコンプライアンスのレイヤーをもたらすパスポートネットワークのクアドラタです。今回のプロジェクトは発表されてから1年以上経過してからの実現となりました。
このプロジェクトのメリットは貸し手にはレンディングのリスクをオフチェーンのクレジットスコアを導入することで最小化できるということが挙げられます。また、借り手にもより良い条件を提供する機会を増やすことが出来るとされています。
クレジットスコアはDefiにとって長年の課題でしたが、トランスユニオンの競合2社もDefiやブロックチェーンの企業と既に提携を発表しており、これで3大信用情報機関が参入する形となりました。もともとクレジットスコアと改ざんできない特性を持つブロックチェーン技術は相性が良いためオフチェーン情報を活用したこれらの取り組みには期待したいと思います。さらに日本では分散信用スコアリングと呼ばれるプロジェクトも動き出しています。これはエキファックスがサイバー攻撃を受け、アメリカ国民の半分の1億5千万人の情報が流出した事件が背景にあります。中央集権的なクレジットスコアから徐々に分散型へトレンドも移行しつつあり今後の動向にも注目したいところです。
仏金融サービスグループが機関向けユーロ建てステーブルコインの 提供を発表
コメント:中坪
フランスの金融サービスグループ、Societe Generaleの子会社、SG-FORGEは、イーサリアム上で機関向けユーロ建てステーブルコイン「EUR CoinVertible」の取り扱いを予定していると発表しました。従来の資本市場とデジタル資産エコシステムのギャップを埋めるべく、オンチェーン上でのユーロ建てでの決済や流動性供給などのニーズに答えることが狙いとなっています。このEUR CoinVertibleは法定通貨担保型ステーブルコインですが、担保資産の分別管理、トークン保有者の担保資産への直接アクセス、厳格な担保適格基準の設定、日次でのトークンの金額や価格ポジションの公開など、昨今強く求められている投資家保護の観点からの徹底した管理体制が取られる模様です。
同様の機関向けステーブルコインとしてはJPモルガンが提供するドル建てのJPM Coinがあります。JPM Coinはマルチカレンシー決済に対応しているなどのEUR CoinVertibleにはない特徴を備えていますが、発表から4年がたった今どの程度顧客間で普及しているのかはオープンになっておらず、利活用が進んでいない可能性も十分考えられます。
今年に入ってからBinance USD がニューヨーク州の金融当局から新規発行を停止するよう求められたことを受けてドル建てステーブルコインに対する不安が広がりました。BinanceのCEO、Changpeng Zhao氏もTwitterでドル以外の通貨建てでのステーブルコインの発行を検討していることを窺わせるようなツイートを投稿し話題になりました。また、SECの暗号資産に対する姿勢も厳しいものとなってきていることや、ユーロはドル以上に利上げ余力があると考えられていることからもユーロ建てステーブルコインの需要はEU圏内を中心に一時的に高まっています。先行事例の反省点を研究しつつ、この機に乗じて機関投資家や企業にステーブルコインの導入を進めることができるのか、これからの動向が非常に楽しみです。
注目の資金調達
Unchained Capital
- 概要:機関投資家向けBTCアセマネサービス
- 調達額: $ 60,000,000
- ラウンド: Series B
- 投資家:Valor Equity Partnersなど
- カテゴリー: CeFi
機関投資家向けにビットコインに特化したアセットマネジメントサービスを提供。独自に開発するマルチシグソフトウェアを利用したカストディサービスに強み。
Berachain
- 概要:CosmosベースのL1ブロックチェー
- 調達額: $ 42,000,000
- ラウンド: Series A
- 投資家:Polychain Capitalなど
- カテゴリー:Blockchain Infrastructure
Cosmos SDKを使用して構築されたEVM互換のレイヤー1ブロックチェーン。新しいProof-of-Liquidityコンセンサスプロトコルによって保護されている。
P2P Validator
- 概要:機関投資家グレードのステーキングソリューション
調達額:$ 23,000,000
ラウンド:Series A
投資家:Jump Cryptoなど
カテゴリー:Blockchain Service
プロの投資家向けに安全な非保管型ステーキングサービスを提供しており、トークン保有者がノードを実行する手間なしにステーキングに参加できる。
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今週のビットコイン相場
BTCは米ハイテク企業決算次第では弱気に転じる可能性、ETH不正流出の拡大を懸念
米国では企業の2023Q1決算発表が本格化している。好調な銀行決算や当局者発言を受けて5月の米FOMCにおける追加利上げ観測が高まる中、来週はアルファベット(GOOGL)やマイクロソフト(MSFT)、メタ・プラットフォーム(META)、アマゾン・ドットコム(AMZM)の大手ハイテク4社の決算発表を控える。
これらの企業業績が良好となり景気の先行きへの懸念が後退した場合、米国金利の上昇とともに、これまでにもみられたように、逆説的ではあるがリスク資産の売りが強まることは考えられる。市場では6月までに1回の追加利上げが織り込まれているが、企業決算次第ではさらなる追加利上げの必要性が議論され、利上げ懸念によって相場が弱気に転じる恐れもあるだろう。
また来週は植田総裁就任後初めてとなる日銀金融政策決定会合が開かれる。イールドカーブ・コントロール(YCC)の修正に注目が集まっているが、事前の就任会見では金融緩和継続の姿勢を示しており、おそらく現状維持になるだろう。ただし、今後の金融政策の方針に関する発言には要注目である。
イーサリアムのステーキング資産総額(Total Value Staked)は上海アップグレード後に約1900万ETHから約1800万ETHへ約5%程度減少していたが、直近ではステーキングの入金額が出金額を上回り、TVSは下げ止まっている。今後もビットコインのマイニングと同様にプレイヤーの参入と撤退によって変動するだろうが、ステーキング引き出しに伴う売りへの過度な懸念は後退するだろう。一方で米国では暗号資産取引所の取り締まりが続いている他、DeFiやステーブルコインを対象とした規制の議論も活発化しており、米SECによる暗号資産の登録体制見直しを含めて規制動向は引き続き注視しなければならない。
またイーサリアムのウォレットから約5,000ETHもの資産が不正流出している事件については原因がまだはっきりしておらず、ここからさらに被害が拡大した場合には売りが強まるだろう。一方、一部ではメタマスクのハッキング疑惑が広がっているため、事件の解決によって買い戻しが強まることも考えられる。
直近上値として先週高値付近のBTC=417万円(31,000ドル)、直近下値として上昇前のレンジ下限となるBTC=363万円(27,000ドル)を意識する。
※1ドル=134.50円で換算(2023年4月21日執筆時)
今週のオンチェーン指標:Net Transfer Volume from/to Exchange
概要
Mempool Transaction Count(MTC)とは、mempoolで待機している未承認トランザクションの総数を指します。
ブロックチェーンを管理するノードはまだブロックに追加されていない未承認トランザクションを「mempool(メモリープール)」という一時的な保管領域に保存しています。このメモリープールに保存されている未承認トランザクションは、マイナーやバリデータによってブロックに順番に追加されます。しかし、取引数が増えると取引処理が追いつかず、未承認トランザクションがメモリープールに溜まっていきます。
つまり、MTCはブロックチェーンの混雑状況を表します。MTCは取引需要が高まるタイミングで上昇する傾向があり、その際には手数料高騰や送金遅延が起こりやすくなります。
これまでのビットコイン価格とMTCのチャートを見ると、2022年5月のテラショックや同年11月のFTXショックによって売りが強まったタイミングで、MTCが大きく上昇しています。また、2023年2月にビットコインNFTへ注目が集まった時や、同年3月のシリコンバレー銀行破綻後に逃避的な買いが強まった時も、MTCは強く反応しています。
このようにMTCは市場の過熱具合や偏りを測る参考指標としても活用できます。
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