今週も暗号資産アナリストの松嶋がビットコイン相場の動向を分析します。
- ビットコインは、米国金利の低下が一服し、もみ合いとなった。しかし、米国でイーサリアム現物ETFの承認期待が急速に高まり、イーサリアムが高騰する中で、日本円建てで史上最高値を更新した。
- 来週のビットコインは米国でイーサリアム現物ETFが承認されればさらなる上昇に期待。PCE指数の結果にも要注目。直近、上値としてBTC=1,158万円(74,000ドル)、下値としてBTC=1,049万円(67,000ドル)を意識する。
- 24日早朝に米国でブラックロック等を含む8銘柄のイーサリアム現物ETFが承認された。
今週の相場動向
相場回顧 BTC：イーサリアム現物ETFの承認期待を受けて急上昇
ビットコインは、米国におけるイーサリアム現物ETFの承認期待が急速に高まり、イーサリアムが高騰する中で、日本円建てで史上最高値を更新した。
4月米消費者物価指数の鈍化を受けて利下げ観測が高まり、ダウ平均が史上初の4万ドルを記録する中、ビットコインは堅調に推移した。ボウマンFRB理事が「インフレは高止まりする」との見通しを示したことで米国金利が反発し、半減期後の高値水準であるBTC=1,049万円(67,000ドル)付近では上値が重くなった。また、イラン大統領の事故死が報じられ、地政学リスクを意識した売りも強まった。
しかし、米国でイーサリアム現物ETFに関するSECと申請企業との建設的なやり取りが報じられると、今月の否決予想から一転して承認期待が高まった。これを受けてイーサリアムがETH=59万円（3,800ドル）付近まで高騰し、ビットコインも連れ高してBTC=1,111万円(71,000ドル)付近まで急上昇した。ウォラーFRB理事のハト派寄りの発言もあってナスダックが史上最高値を更新する中、ビットコイン現物ETFへの資金流入も継続した。
その後、イーサリアムの上昇が一服し、ビットコインも利益確定売りが強まった。FOMC議事要旨では当局者の利下げ開始に慎重な姿勢が伝わり、米国株とともに軟調に推移した。24日早朝に米国でイーサリアム現物ETFの承認が発表されたが、執筆時点で相場への影響は限定的となっている。
今週のトピックス
金融市場
- 金価格が最高値更新、米利下げ観測で需要増加
- ボウマンＦＲＢ理事、インフレは「当面」高止まりー金利維持で鈍化へ
- イランのライシ大統領が死亡、ヘリ墜落事故－後継者に注目集まる
- ウォラーＦＲＢ理事、インフレ良好に推移なら年末の利下げ検討可能
- ＥＣＢのラガルド総裁、６月利下げを示唆－インフレ抑制を強く確信
- 長期金利が１％に上昇、13年５月以来－日銀ＹＣＣ下の上限到達
- ＦＯＭＣ議事要旨、より長期に高水準での政策金利維持が望ましい
暗号資産市場
- グレースケールに新CEO、ソネンシャイン氏が退任
- コインチェック、ブリリアンクリプトトークン（BRIL）のIEO予定を発表
- メルカリの仮想通貨取引サービス、イーサリアムにも対応
- 共和党大統領候補トランプ氏、仮想通貨での政治献金受付開始
- 分散型取引所大手ユニスワップ、SECに反論 裁判に臨む構え
- SECゲンスラー委員長反対も、仮想通貨法案「FIT21」は下院通過
- WisdomTree、イギリスでビットコインとイーサリアムETP上場承認を取得
- イーサリアム現物ETF、米SECが承認 ブラックロックなど8銘柄
来週の相場予想
BTCは米国におけるETH現物ETFの承認でさらなる上昇に期待、インフレ指標にも注目
米国では、来週も重要なインフレ指標の一つであるPCE指数の発表があり、予想を上振れるか下振れるかによって金利動向とともにリスク資産の相場は左右されるだろう。次回6月のFOMCにかけては経済指標や当局者発言で相場が一喜一憂する展開が継続する。しかし、パウエルFRB議長は再利上げの可能性を否定しており、4月経済指標の鈍化を受けて利下げ開始の方向性がより裏打ちされた。その時期を巡って短期的に価格が変動することはあるだろうが、中長期的に見て下げづらい相場になりつつあると考える。
さらに米国ではイーサリアム現物ETFが承認された。ビットコイン現物ETFの時と同様に事実売りが一時的に強まる恐れはあるが、まずは個人投資家を中心に新規の買いが入り、イーサリアムが高騰する可能性がある。これによりビットコインをはじめ暗号資産全体が上昇することが期待される。
今回、SECがイーサリアムに対する姿勢を一変させた背景には、暗号資産界隈を支持者として取り込もうとするトランプ前大統領に対抗する政治的な狙いがあるという指摘もある。その真偽はさておき、米国大統領選挙の中で暗号資産が議論のテーマの一つになることで、社会的な注目とともに市場が拡大することは考えられるだろう。
直近、上値として史上最高値付近であるBTC=1,158万円(74,000ドル)、下値として上昇前の高値であるBTC=1,049万円(67,000ドル)を意識する。
来週のトピックス：暗号資産市場に影響しうる指標をピックアップ
経済イベント・指標
- 米国、1-3月期四半期実質国内GDP<改定値>（5/30）
- ユーロ圏、5月消費者物価指数<速報値>（5/31）
- 米国、4月個人消費支出（5/31）
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