#87: Ethereumで「BlobScriptions」が台頭、その仕組みと影響とは?

今週もマネックスクリプトバンクから、Web3.0界隈の動きをお伝えします。

ニュースレターを無料購読していただくと、毎週月曜日の17:00に最新のニュースレターをお届けいたします。

注目トピックス解説

Ethereumで「BlobScriptions」が台頭、その仕組みと影響とは?

コメント:宮本

Ethereumで「BlobScriptions」と呼ばれるNFT・トークンを発行する方法がリリースされ、流行の兆しを見せています。BlobScriptionはEthscriptionsというプロジェクトによって3月26日にリリースされたものです。本トピックでは、BlobScriptionsとはどういったものなのか、Ethereumにどのような影響を与えるのかについて解説したいと思います。

まずはBlobScriptionsの概要からみていきましょう。BlobScriptionsは、トランザクション内に含まれる「blob」と呼ばれるデータ領域を用いて、擬似的にNFTやトークンの存在を表現する(≒NFTやトークンを発行する)ものです。blobは3月13日に実装された大型アップグレード「Dencun」によってEthereumに登場したデータ領域で、従来のデータ領域である「calldata」よりも手数料が安いという特徴があります。

ブロックチェーン上のデータ領域を用いて表現するNFTやトークンについてはBlobScriptions以前から存在しており、このようなNFTやトークンは「Inscriptions」と呼ばれています。Inscriptionsの代表的な例としては、Bitcoinにおける「Ordinals」が挙げられます。OrdinalsはビットコインNFTとしても知られているもので、Bitcoinの最小単位で追加のデータ領域としても機能する「Satoshi」を用いて作成したInscriptionsのことです。

EthereumにおけるInscriptionsについてもBlobScriptions以前から存在はしていましたが、データ領域にblobではなくcalldataを用いて作成されているようなものとなっていました。BlobScriptionsはデータ領域にblobを用いることで、従来のInscriptionsよりもさらに安価に発行できるという点において新規性があります。

ここからは、BlobScriptionsがEthereumに与える影響についてみていきましょう。先述したように、BlobScriptionsはデータ領域としてblobを用いています。しかし、blobは本来レイヤー2のトランザクションデータを書き込むためのデータ領域として追加されたものです。BlobScriptionsの流行によってblobの需要が高まり手数料が増加することで、同じくblobを利用しているレイヤー2のガス代が高くなる可能性があると考えられます。

以下の図は オンチェーン分析サイトであるDuneから引用したもので、blobの使用状況を示したものです。BlobScriptionsのリリース後、Inscriptionsによって多数のblobが使用されていることがわかります。3月29日時点でblob全体のうち48.3%がInscriptionsによって使用されており、本来のターゲットであるレイヤー2による使用は51.7%に留まっているような状況となっています。

また、以下の図は Ultrasound.moneyから引用したもので、blob手数料の変化を示したものになっています。BlobScriptionsのリリース前までblob手数料は1weiとほとんど無料に近い値を維持していましたが、BlobScriptionsのリリース後に急騰し、3月29日時点では18.48Gwei(=18,480,000,000wei)となっています。

BlobScriptionsには明確なデメリットも存在します。BlobScriptionsがデータ領域として利用するblobはcalldateとは異なり一時的なデータ領域となっているため、約18日が経過するとEthereum上からは消失することになります。このため、約18日が経過した後のデータ保持を行う役割(Indexer)は開発元であるEthescriptionsが担うことになります。 EthescriptionsはIndexerの仕組みについてオープンソースで公開しており、誰でもIndexerになれることを示唆していますが、 公開されているGitHubのページではまだ実際の環境において使用することができないことが明記されています。このように、Indexer周りの仕組みは現時点ではかなり中央集権的となっています。

BitcoinにおけるOrdinalsはNFT・トークンの唯一の発行手段であったために一定のポジションを得ることに成功しましたが、Ethereumのように元々NFT・トークンを発行することができるブロックチェーンにおいてInscriptionsが同様のポジションを獲得することができるかという点には疑問が残ります。BlobScriptionsは一時的な流行で終わるのか、それとも長期的な流行をみせるのか、レイヤー2のガス代の変遷とともに注目したいところです。BlobScriptionsには明確なデメリットも存在します。BlobScriptionsがデータ領域として利用するblobはcalldateとは異なり一時的なデータ領域となっているため、約18日が経過するとEthereum上からは消失することになります。このため、約18日が経過した後のデータ保持を行う役割(Indexer)は開発元であるEthescriptionsが担うことになります。EthescriptionsはIndexerの仕組みについてオープンソースで公開しており、誰でもIndexerになれることを示唆していますが、公開されているGitHubのページではまだ実際の環境において使用することができないことが明記されています。このように、Indexer周りの仕組みは現時点ではかなり中央集権的となっています。

BitcoinにおけるOrdinalsはNFT・トークンの唯一の発行手段であったために一定のポジションを得ることに成功しましたが、Ethereumのように元々NFT・トークンを発行することができるブロックチェーンにおいてInscriptionsが同様のポジションを獲得することができるかという点には疑問が残ります。BlobScriptionsは一時的な流行で終わるのか、それとも長期的な流行をみせるのか、レイヤー2のガス代の変遷とともに注目したいところです。

グレースケール、PoS系トークンへの投資に特化した投資信託を提供開始

コメント:青木

2024年3月、米国でBitcoin現物ETF「GBTC」の他、EthereumやLitecoin、Solanaなど複数の暗号資産投資信託を提供する運用会社グレースケールはプルーフ・オブ・ステークPoS系)トークンへの投資に特化した「ダイナミック・インカム・ファンド(GDIF)」を立ち上げたことを発表しました。

GDIFはGBTCとは異なり、運用資産が110万ドル以上、または純資産額220万ドル以上の投資家を対象にした、非公開の投資信託となっていることが特徴の一つです。また、このファンドの構成銘柄はSolana、Aptos、Celestia、Coinbase Staked ETH、Cosmos、Near、Osmosis、Polkadot、SEIとなっており、 ファクトシートによればOsmosisが24%、Solanaが20%、Polkadotが14%その他43%という構成比になっています。GDIFがPoS銘柄に投資することによって発生するステーキング報酬は毎週ドルに換金され、四半期に一度、投資家に分配されるとともに、構成比率が最も効率的になるよう変更される予定となっています。

グレースケールの発表では、GDIFは2023年10月に運用をスタートし、2024年1月末時点では130%~140%のリターンが得られる、としています。各個別銘柄に投資した場合、全ての銘柄で同様のリターンが得られるわけではありません。対象期間外では価格の乱高下が激しく、投資対象としてリスクが過大と評価されうる銘柄も存在しています。このインデックスは、そのような銘柄を含みながら分散効果によってリスクを低減し、ステーキングによる利回りを得ながら安定して右肩上がりのリターンを確保しています。

金融市場ではこれまでステーキングによって受動的な収益が得られるPoS銘柄への注目度はそこまで高くありませんでした。しかし、米国におけるEthereum現物ETFの申請をきっかけにPoS銘柄の性質や定義を見直そうという動きがあり、PoS銘柄≒デジタル債券という見方も出ています。その中、グレースケールが発表したGDIFはEthereumに並ぶ主要なPoS銘柄をまとめた投資信託として新たな投資の窓口となるかもしれません。

注目の資金調達(3/25~3/31

※本まとめはGPT3.5によって自動生成されており、その内容の正確性を保証するものではありません。事例の概要を網羅的に把握するのにお役立てください。

BEVM

日付: 03月25日
調達額: —
ラウンド: Seed
投資家: RockTree Capitalなど
カテゴリー: Infrastructure
プロジェクト概要: BEVMは、BTCをガスとして利用する初の完全に分散型のEVM互換のビットコインLayer 2ソリューションを導入する画期的なプロジェクトです。この革新的なプラットフォームは、Ethereumエコシステムと互換性のあるすべての分散型アプリケーション(DApps)がビットコインLayer 2ネットワーク上でシームレスに機能することを可能にします。BEVMはWeb3原則を活用し、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、ビットコインエコシステムアプリケーションの開発を新たな高みに押し上げます。これにより、Ethereum互換のDAppsをビットコインネットワークに統合することで、ビットコインの機能が拡張されるだけでなく、両者の主要なブロックチェーンエコシステム間のギャップが埋められます。BEVMのアプローチは、分散型アプリケーション開発の重要な進歩を示し、ビットコインとEthereumネットワークの相互運用性と成長に向けた有望な未来を提供しています。

BlockGames

日付: 03月26日
調達額: $6.00M
ラウンド: Undisclosed
投資家: Newman Groupなど
カテゴリー: DeFi
プロジェクト概要: BlockGamesは、革新的なプレイヤーネットワークを開発中で、ユニバーサルプレイヤープロファイルを特徴とし、実データ経済の創造を可能にします。この革新的なアプローチは、新しいインタラクティブ性とユーザーへの報酬を導入することで、アプリケーションとゲーム体験の風景を変えることを目指しています。Universal Player Profilesを活用することで、BlockGamesは、開発者がプレイヤーと深いつながりを持つ魅力的で没入型のゲーム体験を作り出す力を与えることを目指しています。このプロジェクトは、よりダイナミックで相互につながったゲームエコシステムへの重要な転換を表しており、プレイヤーが一貫したプロファイルを維持し、報酬を獲得しながら異なるゲーム間をシームレスに移動できるようにします。ユーザーエンゲージメントの向上と革新の推進に焦点を当て、BlockGamesは、ゲームとデータ駆動型体験の未来を形作るリーダーとしての地位を築いています。

Mirror World

日付: 03月29日
調達額: —
ラウンド: Pre-Series A
投資家: –など
カテゴリー: Web3DeFi
プロジェクト概要: ミラーワールドマトリックスは、自律型の仮想ゲーム領域のネットワークであり、知的NFTによって構成され、マトリックスコアエンジンによって駆動され、ミラーワールドマトリックストークンを介してWeb3ゲームの進化を促進します。この革新的なエコシステムは、NFTが知性を持ち、ユニークで没入型のゲーム体験を可能にするさまざまなゲーム世界を提供します。マトリックスコアエンジンは、これらの自律型ゲーム世界の中核となり、エコシステム内でのシームレスな運用と相互作用を確保します。ミラーワールドマトリックストークンを利用することで、開発者はWeb3ゲームの作成と拡大を迅速化し、ダイナミックで相互接続されたゲーム環境を育成できます。全体として、ミラーワールドマトリックスは、仮想ゲームの領域における画期的なコンセプトを提供し、最先端の技術と分散型原則を融合させて、Web3ゲーム開発の景観を革新します。

ニュースレターを無料購読していただくと、続きをお読みいただけます。

マネックスクリプトバンクでは国内外のweb3関連スタートアップへの出資およびグループ会社を含めた事業連携などを検討しています。ぜひ相談したいという方は下記アドレスまでご連絡ください。

担当:松嶋

MCB RESEARCHレポート

最新レポート(無料)

暗号資産インデックスのパフォーマンスを検証―株式以上に投資効率が良い可能性を示す

過去レポート(有料)

販売サイトはこちら

レポート例

  • GameFiとはなにか――DeFiの重要性と課題、CEXの役割
  • VR普及はいつ頃達成されるのか?―現状の問題点と関連技術を探る
  • メタバースのデジタルLANDを開発する方法ーDecentraland開発
  • ブロックチェーンゲームのビジネスモデルと収益推定
  • PAVA指標のレイヤー1トークンへの適用可能性の検討
  • 金融バブルを検知するLPPLSモデルの暗号資産への応用
  • MCBクリプト格付けー30種類の暗号資産を7つの項目別に相対評価
  • オラクルサービスChainlinkを活用したダイナミックNFTの基礎開発ガイド
  • NFTのマクロ分析ー価格の復活が見込まれるコレクションの選定基準を検証

マネックスクリプトバンクではインターン採用を募集中!

Comments are closed.