今週もマネックスクリプトバンクから、Web3.
※ニュースレターを無料購読していただくと、毎週月曜日の17:00に最新のニュースレターをお届けいたします。
注目トピックス解説
Amazonがデジタルアセット事業に参入か
コメント:宮本
Amazonがデジタルアセット事業の立ち上げを計画しているという報道がありました。
複数の情報筋によると、デジタルアセット事業としてブロックチェーンゲームとこれに関連するNFTの発行を検討しており、4月頃の発表を目標としているとのことです。 報道では、ブロックチェーンゲームをプレイすることで無料でNFTを受け取ることができるサービスなどが事業例として挙げられています。ブロックチェーンゲームが展開されるプラットフォームの詳細は明らかにされていませんが、自社サービスであるAmazon Web Services (AWS) に依存しないモデルを検討しているようです。
Amazonはゲーム開発部門としてAmazon Game Studiosを2012年に設立しており、これまでにMOBAである「Breakaway」や、対戦型TPSである「Crucible」、MMORPGである「New World」など計3本のゲームタイトルの開発を発表しています。しかし、このうち「Breakaway」は2018年に開発中止が発表され、「Crucible」は2020年5月にリリースされたものの11月にはサービス終了が発表されるなど、ゲーム事業はかなり難航しています。
これら3つのゲームはすべて多人数参加型のオンラインゲームとなっており、ゲームエンジンはAmazonが自社で開発した「Lumberyard」で構築されていました。LumberyardはAWSや2014年にAmazonが買収したゲーム実況サービスであるTwitchと連動するようになっており、ゲームを通じて自社サービスの利用を誘導することで収益を上げたいというAmazonの意図が感じられます。
しかし、Lumberyardのコマンドは非常に複雑で、コンパイルも遅いなどゲームエンジンとしてはあまり有用でないことが知られています。今回報道されたブロックチェーンゲームがAWSに依存しない形で検討されているということは、Amazonが展開するゲーム事業においてLumberyardでの開発を断念したということを示唆しているかもしれません。
オンラインゲームからブロックチェーンゲームへの転換は、自社サービスへの誘導からNFTなどの販売益やロイヤリティ収入を得る方向へとゲーム事業の収益モデルの転換を図ったとも解釈できるでしょう。Amazonからの正式発表も含めて、今後の動向に注目したいところです。
イーサリアムの今後は?より中立的な取引を目指して
コメント:中坪
先週に引き続き、Messariが年次で発行しているレポート、”Crypto Theses for 2023″から昨年”The Merge”で話題になったイーサリアムの今後のロードマップについてご紹介します。
昨年9月、Ethereumブロックチェーンにおいて従来使われていたPoWからPoSへとコンセンサスアルゴリズムの変更を行う、”The Merge”が行われました。しかし、イーサリアムの進歩はこれで終わりではありません。イーサリアムの考案者であるVitalik Buterin氏はtwitter上でイーサリアムの今後のロードマップを示しています。概要は以下の通りです。
- The Merge: PoSへとコンセンサスアルゴリズムを変更すること
- The Surge:1秒間に10万件以上のトランザクションを成立させること
- The Scourge:中央集権化とMEVによるプロトコルリスクを排除する
- The Verge:ブロックの検証を非常に容易にする
- The Purge:プロトコルの単純化
- The Splurge:全てを確固たるものにする
注目のポイントは”The Scourge”です。当初のロードマップにはなかったものの、MEVのリスクに対する懸念がイーサリアムコミュニティ内で高まっていることを受けてButerin氏が新たに追加したフェーズです。
そもそもMEVとはMaxmal Extractable Value(最大抽出可能価値)の略で、マイナーが取引手数料順に取引を処理することを逆手に取り、取引順を操作することで他のイーサリアム利用者よりも先にアセットを手に入れ、裁定取引を行うことで利益を得るという手法のことを指します。これはThe Merge以前のPoWでは頻繁に行われていた手法ですが、PoSにコンセンサスアルゴリズムが切り替わったことによりかなり制約を受けています。
Buterin氏が目指す「量子レベルで安全なイーサリアム」に向けて、この新フェーズ “The Scourge”において信頼に足りかつ確実に中立的な新しいトランザクションを作ることを目指しています。”The Merge”は特段大きな問題なく終了し、今年3月には現在PoSチェーンにステーキングされているETHの引き出しが可能になる”Shanghai”アップグレードも控えています。 MEVのようなシステムの穴をつく巧妙な搾取を撲滅し、さらに安全で分散型のブロックチェーンを作ることができるのか、今後のイーサリアムのアップデートにも注目です。
長期保有者の損益状況を示すオンチェーン指標「LTH-MVRV」
コメント:宗田
ブロックチェーン分析会社グラスノードは、ビットコインの新規投資家 (短期保有者)・長期保有者・マイナーの行動パターンを、オンチェーン指標を用いて分析した記事を新たに発表しました。今年に入ってからのビットコイン価格の上昇により、短期保有者とマイナーは保有資産の一部を売却して利益を確定しているということが分かりました。一方で長期保有者の保有する資産はむしろ増加傾向にあり、価格上昇を確信していると読み取ることができます。ここでは、この分析において重要なオンチェーン指標の1つ「Long Term Holder MVRV(LTH-MVRV)」を紹介したいと思います。
この指標のもとになっているのはビットコイン分析で必須のオンチェーン指標「Market Value to Realized Value(MVRV)」です。MVRVはビットコインの時価総額を実現時価総額で割って計算されるもので価格の底値圏と天井圏を分析するために用いられます。
実現時価総額について補足をすると、この指標は最後に通貨を移動した時の価格に基づいて時価総額を計算したものとなります。ちなみに、暗号資産やトークンの残高管理には、過去の入出金データのみに基づいて現在の残高を算出する「UTXO」(Unspent Transaction Output)と、銀行口座のように残高をそのままデータとして記録する「アカウント」という2つの方式あります。イーサリアムとは異なり、ビットコインはこのUTXOを用いているため最後に移動した時の時間と価格がオンチェーン上に記録されているのです。
LTH-MVRVは特に155日以上のUTXOのみを考慮したMVRVで、長期保有者の未実現利益または損失を分析する際に重要な指標です。今週、約半年ぶりにLTH-MVRVが1を超え、長期保有者の損益分岐点のすぐ上にあるということが読み取れます。このLTH-MVRVの動きは2018年から2019年にかけての動きとよく似ており、後の急上昇の前兆となった動きの1つです。
ゴールドマンサックスは、ビットコインの年初来リターン・シャープレシオがすべてのアセットクラスの中で1位になったと発表しました。年初からのビットコインの価格上昇はいつまで続くのでしょうか。今後もオンチェーン分析から目が離せません。
注目の資金調達
Blockstream
- 概要:ブロックチェーンインフラ
- 調達額:1億2500万ドル
- ラウンド:転換社債発行および融資
- 主な出資者:Kingsway Capital, Fulgur Ventures
QuickNode
- 概要:ブロックチェーンインフラ
- 調達額:6000万ドル ラウンド:シリーズB
- 主な出資者:10T Holdings, Seven Seven Six, Tiger Global, Protocol Labs, QED Investors
Gemba
- 概要:メタバーストレーニングソフトウェア
- 調達額:1800万ドル ラウンド:シリーズA
- 主な出資者:Parkway Venture Capital
Spatial Labs
- 概要:メタバースやコマース向けのweb3インフラ
- 調達額:1000万ドル ラウンド:シード
- 主な出資者:Blockchain Capital, Marcy Venture Partners
Calimero Network
- 概要:ブロックチェーンインフラ開発
- 調達額:850万ドル ラウンド:シード
- 主な出資者:Khosla Ventures, Lyrik Ventures, Near Foundation
StoryCo
- 概要:メディアコンテンツプラットフォーム
- 調達額:600万ドル ラウンド:シード
- 主な出資者:Collab+Currency, Patron, Blockchange Ventures, Sfermion, Packy McCormick, GMoney
Ethos Wallet
- 概要:Suiチェーン基盤のweb3ウォレット
- 調達額:420万ドル ラウンド:シード
- 主な出資者:Boldstart Ventures, Gumi Cryptos Capital, Tribe Capital, Matrix Port, AllianceDAO
株式会社Brave group
- 概要:VTuber事業
- 調達額:3億円
- ラウンド:資本業務提携
- 主な出資者:AnimocaBrands
株式会社 Voldex
- 概要:UGCゲームスタジオ
- 調達額:非公開
- ラウンド:シリーズA
- 主な出資者:a16z
注目のWeb3関連サービス
DEXアグリゲーターの最終形態?Transferto.xyz
凄まじい勢いでエコシステムが拡大し、変化するDeFiの世界で、ユーザーは、「どのDEXで、どのチェーンで、どのトークンで、どのブリッジで…」と頭を悩ませています。開発者の側も「あっちのチェーンに引きこもるユーザーをどうやってこちらのチェーンに連れてくるか」というような悩みを抱えています。この悩みを解決するサービス・プロトコルを解説します。
企業概要
2021年創業のWeb3スタートアップで、ブリッジとDEXをアグリゲーションするミドルウェアを開発しています。現在までに$5.5Mの資金を調達しており、Coinbase Venturesや1kx、Dragonfly Capitalなどが出資者に含まれています。
※続きは、ニュースレターにご登録いただくとお読みいただけます。
今週のビットコイン相場
BTC(ビットコイン)は米FOMC後のさらなる上昇に期待だが、景気動向など不透明さも残る
金融市場では米連邦公開市場委員会(FOMC)に注目が集まっている。2月1日にかけては米国企業決算の良し悪しで相場が左右されることもあるだろうが、様子見姿勢が強まって方向感に乏しい展開になるだろう。市場の期待通り利上げ幅縮小となれば米国株とともに買いが強まることが考えられる一方で、0.5ポイント利上げ継続であればかえって下落する可能性もある。
インフレや景気の動向について楽観ムードが広がっていることもあり、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が釘を指す形で調整が入ることにも警戒したい。また来週は米ISM関連指標や米雇用統計の発表も控えており、これらが低調となった場合には景気後退が意識されて売りが強まることが予想される。
暗号資産市場では金融市場のリスクオンムードにも後押しされて買いが強まっている。米FOMCの結果を受けて米国株とともにさらに価格を伸ばすことも考えられるだろう。FTXグループ破綻後の影響が一服しつつある中、マイニング環境や投資家心理も改善されつつあり、暗号資産関連企業の業績悪化も底が見えることで、ビットコイン価格の上昇が継続する可能性はある。
しかし、世界的な景気後退に加えて、シルバーゲートやシグネチャーバンクといった暗号資産銀行の業績悪化や、バイナンスの不正関与疑惑など新たな懸念材料も出ており、本格的な上昇までは不透明な要素も多い。
直近上値としてBTC=325万円(25,000ドル)、下値としてBTC=260万円(20,000ドル)を意識する。
※1ドル=130.00円で換算(2023年1月27日執筆)
その他のニュース
- アニモカがバーチャルYoutuber事業のBrave groupと提携、メタバースとグローバル展開を強化
- デロイトなど、Web3時代のクリエイター支援プラットフォーム立ち上げへ
- ImmutableXで高品質ゲーム「Search for Animera」開発へ
- ナイキのWeb3「.SWOOSH」、ユーザー参加型コンテスト開催
- 格付け大手ムーディーズ、ステーブルコインの評価システムを開発か=報道
- Azuki、公式SNSが乗っ取り被害 仮想土地販売を偽装
- ENGAGEが法人向けメタバースでOpenAI製品を導入、接客NPCのキャラ名は「アテナ」
※ニュースレターを無料購読していただくと、毎週月曜日の17:00に最新のニュースレターをお届けいたします。