Ethash(エタッシュ)は、イーサリアムネットワークで使用されるプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work、PoW)の一種で、暗号資産のマイニング(採掘)に使われるアルゴリズムです。ここでいう「マイニング」とは、新しいブロックを生成し、トランザクション(取引)を検証し、ブロックチェーンに追加するプロセスのことを指します。このプロセスを通じて、ネットワークは安全に維持され、マイナー(採掘者)は報酬を得ることができます。
プルーフ・オブ・ワークは、マイナーが複雑な数学的問題を解くことによって新しいブロックを作り出す仕組みです。この問題を解くためには、大量の計算処理能力が必要となります。Ethashは、イーサリアムが採用しているPoWアルゴリズムであり、特にメモリー集約型の計算を必要とする設計になっています。これは、ASIC(Application-Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)と呼ばれる専用のマイニング機器による中央集権化を防ぐためです。ASICは非常に高性能ですが、少数の製造者しかいないため、マイニングの力が集中しやすくなります。
Ethashは、ASICに対して不利な状況を作り出すことで、より多くの個人が手持ちの一般的なコンピューター(特にGPU、グラフィックス処理ユニット)を使用してマイニングに参加できるようにすることを目的としています。このようにして、イーサリアムネットワークは分散化を促進し、一部の強力なプレイヤーによる支配を防ぐことができます。
Ethashアルゴリズムは、マイニングに際して大量のランダムなデータセット(DAG、Directed Acyclic Graph)を生成し、これをメモリに保持する必要があります。DAGは一定の間隔でサイズが増加し、このためにはより多くのメモリ容量が必要になります。マイナーは、このDAGを使用してハッシュ値を計算し、所定のターゲット値よりも小さいハッシュ値を見つけることが求められます。このプロセスは「ハッシュレート」と呼ばれ、マイナーのマシンが1秒間に行うハッシュ計算の回数を示します。
イーサリアムは、マイニングによってネットワークのセキュリティを確保し、分散化を促進するためにEthashを使用してきましたが、エネルギー消費の問題や効率性の向上を目指して、プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake、PoS)への移行を計画しています。プルーフ・オブ・ステークでは、マイニングの代わりに「ステーキング」と呼ばれるプロセスが用いられ、参加者は保有する暗号資産の量に応じて新しいブロックの生成とトランザクションの検証に参加します。これにより、計算資源の消費が大幅に削減され、ネットワークの効率が向上すると期待されています。
Ethashは、イーサリアムがプルーフ・オブ・ステークに完全に移行するまでの間、重要な役割を果たしてきました。ASIC耐性を持つことで分散化を支え、イーサリアムネットワークのセキュリティと健全性を保つための基盤となっています。しかし、エネルギー消費と効率性の観点から、将来的にはプルーフ・オブ・ステークに取って代わられる運命にあります。