学術的な研究チームが手掛けるクロスチェーンオラクルSupraOracles

本シリーズでは注目のweb3企業およびサービスについて解説します。今回は新興のオラクルネットワークとして注目されているSupraOraclesを取り上げます。

企業概要

SupraOraclesは2018年にスイスで設立されたブロックチェーン財団であるEntropy Foundationが手掛けるオラクルプロジェクトです。ブロックチェーンの分野で学術的な研究に取り組んできたメンバーを中心にスマートコントラクトやオラクルのインフラを開発しています。

2021年にはマスターカードのブロックチェーンスタートアップ支援プログラムの対象企業の一つに選出され、2023年9月にはAnimoca BrandsやCoinbase Ventures、HashKey、Prosus Ventures、Razer、United Abroad Bank Venture Management、Valor Equity Partnersなどから約2400万ドルの資金調達しました。

日本でもSupra Japanとして活動し、SNSで情報発信しています。

投資パートナー

サービス概要

SupraOraclesでは以下のプロダクトを提供しています。

Supra Oracles:オラクルサービス

SupraOraclesはブロックチェーンと外部データの接続を仲介するオラクルサービスです。独自のオラクルアルゴリズムDORA(Distributed Oracle Solution Algorithm)に従って複数のデータソースから情報を一つに集約し、取引所や市場から集めた価格情報をリアルタイムかつ正確にデータフィードします。現在は価格フィードのみですが、今後は多様な情報を取り扱う予定です。

また、ブロックチェーン間の互換性をもつクロスチェーンに対応していることが大きな特徴となっています。クロスチェーン対応を実現する際に、今では資産を片側でロックしもう片側で同等の資産を発行するブリッジソリューションが主流となっていますが、SupraOraclesではチェーン間の直接通信を実現する独自プロトコルHyperNovaを開発することでブリッジレスなクロスチェーンオラクルを提供しています。これによりブリッジのハッキングリスクを回避し、オラクルサービスの安全性と効率性を高めています。

以下、HyperNovaの主な特徴です。

  • リレーノードがチェーン間の仲介役として入り、送信元チェーンと送信先チェーンのトランザクションおよび署名データを直接検証します
  • 単一障害点となるブリッジが不要となり、チェーン間の情報と価値をつなぐ分散的なハブとして機能します

SupraVRF:乱数生成サービス

SupraVRFはブロックチェーンネットワークの改ざん耐性や検証可能性を高めるための乱数生成サービスです。独自の検証可能なランダム関数を使用し、堅牢なスマートコントラクト開発に寄与します。

IntraLayer:開発フレームワーク

IntraLayerはクロスチェーンオラクルを実装するための統合フレームワークです。Dapps開発者らはこのフレームワークを使うことでSupraOraclesが提供するオラクル、クロスチェーンブリッジ、スマートコントラクトなどの機能をシームレスに統合することができます。

SUPRAトークン

SupraOraclesはオラクルネットワーク内のネイティブトークンとしてSUPRAトークン(最大供給量100億)を発行しています。ノードを運用するためのステーキングや、各種サービスの手数料、ガバナンス参加などで必要になります。プライベートセールやエアドロップによって一部が配布されており、これからパブリックセールが予定されています。

現在はα版の参加キャンペーンを実施しており、クイズなどいくつかのタスクをこなしてオンボーディングプロセスを完了すると、最大で420SUPRAトークンを獲得できます。

収益モデル

SupraOraclesの収益ポイントは以下が考えられます。

  • 各種サービスの利用料
  • トランザクション手数料(ガス代)
  • ノード運用による報酬
  • トークンの収益

所感

オラクルネットワークのTVLシェアを比較すると、執筆時点でChainlinkが約46%、TRON特化のWINkLinkが約25%、MakerDAO専用のChronicleが約17%、Solana基盤のPythが約5%となっており、一部のオラクルが支配的となっていることがわかります。そこでSupraOraclesが後発のオラクルとしてシェアを奪っていくためにはより多くの人気のDappsに採用されることが重要になりますが、これまでにDeFiとGamiFiの分野を中心に150以上のパートナーシップを締結しており、サービスローンチ前の準備を着々と進めている様子がうかがえます。

一方でSupraOracleが特徴とするクロスチェーン対応については、Chainlinkも今年7月に「Cross-Chain Interoperability Protocol(CCIP)」という通信プロトコルを発表しており、web3プロジェクトに対して技術的な優位性をどこまで示せるかが課題になりそうです。SupraOraclesは早くからこの技術に取り組んでいたため、テストネット環境ではありますが、CCIPの7つよりも多い40以上のネットワークに対応しています。この優位性を保ったまま早急にメインネット公開まで辿り着けるかが注目です。

最後に、SupraOraclesは学術の分野で活躍するメンバーが技術的な研究を重ねる中でプロダクトを生み出していることにある種の信頼があります。それゆえ、オラクルとしてマーケットに受け入れられた場合には一気にシェアを伸ばす可能性もあるでしょう。

 

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