クリプト・ビジネス研究会ー調査報告書および提言書

クリプト・ビジネス研究会について

本研究会は、欧米を中心に暗号資産市場の拡大が進む中で、日本においても暗号資産関連の投資やビジネスが広がる可能性を調査するべく2022年8月に立ち上げられました。それから2023年3月までの8か月間、1か月に1度のペースで参加者間でのディスカッションを重ねてきました。

参加企業

マネックスグループ株式会社

マネックスクリプトバンク株式会社

コインチェック株式会社

グローバルカストディ企業一社

国内大手機関投資家一社

専門家ゲスト

名古屋商科大学大学院

アンダーソン・毛利・友常法律事務所

Chainalysis Japan株式会社

本研究会の調査報告書の概要

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テーマ概要

第一回:暗号資産のバリュエーション

第二回:暗号資産のマーケットストラクチャ

第三回:デジタル・アセットのカストディ

第四回:暗号資産の規制

第五回:暗号資産の会計・税務

第六回:機関投資家から見た暗号資産市場

第七回:ブロックチェーンデータとマネー・ロンダリング対策

第八回:総括

要約

第一回では、暗号資産のバリュエーションについて議論した。未だに確立されたモデルはないが、金融市場との相関関係が一部見られるようになり、一時期はナスダック指数との正相関がみられた。その中で株式に準じた暗号資産のバリュエーション研究が増えており、バリュエーションにあたっては暗号資産ならではの特徴やデータを考慮することが重要であるという点が議論された。

第二回では、暗号資産市場は取引から決済までの役割が取引所に集中しており、その上で流動性が国内外の取引所や分散型取引所(DEX)に分散しているという構造的な特徴が明らかとなった。

第三回では、暗号資産のカストディは秘密鍵の管理やブロックチェーン上の取引決済など従来のカストディとは異なるサービス要件があり、そのための規格やルールの整備も必要であることがわかった。暗号資産市場の拡がりを受けて伝統的金融機関のカストディ業務への参加も見られるようになってきた。

第四回では、日本は各業法で暗号資産規制を定めており、投資家保護やマネロン対策が海外に比べて進んでいる一方で、カストディ規制やファンド規制など追加で議論すべき事項も多いことがわかった。

第五回では、暗号資産の会計税務に関するルールは諸外国に比して整備が進んでいるものの、その負担の大きさが投資家や事業者の参入障壁になっていることがわかった。NFT取引や暗号資産の相続時の税金など議論すべき課題も山積みである。

第六回では、機関投資家が暗号資産市場へ本格参入するには情報の非対称性やバリュエーション理論の発展、安全資産へのアクセス、市場の成熟度など解消すべき問題が多いことがわかった。一方でブロックチェーン技術による業務効率化は注目される。

第七回では、暗号資産のマネロン対策はアドレスをクラスタ化および識別化した上で取引モニタリングを行い、取引所とセキュリティ会社、当局が連携して不正犯罪を防ぐことが重要であることがわかった。そのためには国際間強調も求められる。

暗号資産市場は機関投資家の参入が一部で進んだことによって従来の金融市場との関係性が強まっている。さらに暗号資産が有効活用されるためには、暗号資産の特性を踏まえた上で金融市場に倣った枠組みを整えることが必要である。今後、暗号資産の抱える問題を解消しつつ、多くの投資家が参入しやすい環境ができることを期待したい。

本研究会の提言書の概要

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本書は、2022年8月に国内の暗号資産交換業者と金融機関を中心に立ち上げられた「クリプト・ビジネス研究会」での討議の内容をもとに、国内の暗号資産市場を育成するために対処すべき課題を事業者目線の提言としてまとめたものです。

課題と提言

国内金融機関および機関投資家の参入を想定した規制の見直し

課題1:金融機関等による暗号資産デリバティブ取引が認められていない

提言1:リスクヘッジ目的での暗号資産デリバティブ取引の解禁

課題2:機関投資家等が投資できる暗号資産関連の金融商品が少ない

提言2:暗号資産の投資信託およびETFの組成・販売に関する規制緩和

課題3:暗号資産交換業者の規制遵守状況や、暗号資産の上場審査プロセスが不透明

提言3:暗号資産交換業者の財務状況等に関する定期開示および上場審査プロセスの一部公開

暗号資産の税会計ルールの見直し

課題1:暗号資産の会計監査環境が不十分(web3PTに同じ)

提言1:暗号資産の保有および発行にかかる会計監査基準の明確化

課題2:法人が暗号資産を保有する時の税負担が大きい(web3PTに同じ)

提言2:法人の暗号資産保有にかかる期末評価課税については保有目的に応じて緩和する

課題3:個人の暗号資産取引にかかる税負担が大きい(web3PTに同じ)

提言3:個人の暗号資産取引にかかる所得課税方式を申告分離課税へ移行

※本書の最後には各国における暗号資産規制に関する直近の動向をまとめたものを参考資料として掲載しています。

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暗号資産業界とその方向性に関する調査報告書

暗号資産業界とその方向性に関する提言書

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