今週も暗号資産アナリストの松嶋がビットコイン相場の動向を分析します。
- ビットコインは、経済指標やインフレ指標によって左右されるも、決め手材料に欠き小幅レンジでもみ合いとなった。
- 来週のビットコインは米8月CPIの伸び加速が継続した場合の売りに警戒したい。ECB理事会で10会合連続の利上げが行われるかにも注目。上値としてBTC=420万円(28,500ドル)、下値としてBTC=369万円(25,000ドル)を意識する。
今週の相場動向
相場回顧 BTC:決め手材料に欠き小幅レンジでもみ合い
ビットコインは小幅レンジでもみ合いとなった。注目された米8月雇用統計では失業率の上昇と賃金の伸び率の鈍化を受けて追加利上げ観測が後退した。雇用者数は堅調に増加したものの直近5か月では最も少ない数値となり、過去の統計が下方修正されていることもあって需要の軟化傾向が示された。4日は米国市場が祝日で薄商いの中、暗号資産ギャンブルサイトでのハッキング事件が嫌気されてやや売りが強まった。5日には、サウジアラビアやロシアによる原油減産継続によって原油価格が上昇し、インフレ懸念が高まって米国株とともに軟調に推移した。原油上昇に加えて、社債発行の増加やISM非製造業景況感指数が高水準となったことで米国金利が上昇し、その後も弱含みの展開となった。先月発表されたコインベースのレイヤー2ネットワークで障害が発生したことも投資家心理を冷やし、週末にかけてはG20における暗号資産規制の議論を見極めようと様子見ムードが広がった。
今週のトピックス
金融市場
- 8月の米雇用統計、18.7万人増-賃金鈍化、失業率3.8%に上昇
- 米ISM製造業指数、6カ月ぶり高水準-縮小圏ながら安定化示唆
- ウォラーFRB理事、9月の利上げ見送り支持を示唆
- 債券は下落、社債発行増で米金利上昇-30年債入札に向けた売り重し
- サウジが予想外に自主減産3カ月延長、ロシアも続く-ブレント原油上昇
- 米地区連銀経済報告:経済と雇用の伸び鈍化、大半が「成長緩慢」
- 米ISM非製造業景況指数、8月は6カ月ぶり高水準ー受注が加速
暗号資産市場
- 仮想通貨取引所コインベースが支援するBaseチェーン、ブロック生成一時停止と復旧
- Web3ウォレット「メタマスク」、仮想通貨の現金化機能を提供 利便性強化
- G20金融安定理事会とIMF、仮想通貨の規制ロードマップ発表へ
- 自民党のweb3PT、仮想通貨関連企業の会計監査に関する新たなガイドライン公開
来週の相場予想
BTCは米8月CPIの伸び加速が継続した場合の売りに警戒、ECB理事会にも注目
原油上昇によってインフレの長期化が懸念される中、来週13日は米8月消費者物価指数の発表を控える。前月の発表では市場予想を下回ったものの13か月ぶりに伸びが加速した。今回もその傾向が続いた場合、インフレ懸念によって米国金利が上昇し、リスク資産の売りが強まることは考えられる。
またECB理事会では10会合連続の利上げが行われるかが注目されており、追加利上げが決定された時には短期的に売りが強まる可能性がある。ただし、その後にラガルドECB総裁が利上げ停止の可能性を示唆した場合、相場の反応はまちまちとなるだろう。
ブラックロックやフィデリティなどのビットコイン現物ETFの審査が10月まで延期となり、その実現に向けた期待は一服している。しかし、グレースケールが勝訴後、ビットコイン投資信託のETF転換についてSECに対して早急な対応を求めており、再審査に関して新しい動きが見られた時には相場がポジティブに反応することは考えられる。
今週末にインドで開催されるG20サミットでは、国際通貨基金(IMF)と金融安定理事(FSB)が作成した共同文書をもとに暗号資産に関する規制の枠組みが議論される予定である。今後の規制の方向性を見定めるためにもどのような協議が行われるかは注視したい。
直近、上値として前月の高値付近であるBTC=420万円(28,500ドル)、下値として2023年6月の底値付近であるBTC=369万円(25,000ドル)を意識する。
来週のトピックス:暗号資産市場に影響しうる指標をピックアップ
業界イベント
- シンガポール、TOKEN2049が開催(9/13-14)
経済イベント・指標
- 米国、8月消費者物価指数(9/13)
- 米国、8月小売売上高(9/14)
- ユーロ圏、ECB理事会(9/14)
※ニュースレターを無料購読していただくと、毎週月曜日の17:00に最新のニュースレターをお届けいたします。