#59:PayPalがステーブルコイン「PayPal USD」をリリース

今週もマネックスクリプトバンクから、Web3.0界隈の動きをお伝えします。

ニュースレターを無料購読していただくと、毎週月曜日の17:00に最新のニュースレターをお届けいたします。

注目トピックス解説

PayPalがステーブルコイン「PayPal USD」をリリース

コメント:宮本

米決済プロバイダー大手のPayPalは8月7日、米ドル建てステーブルコインであるPayPalUSD(PYUSD)のリリースを発表しました。

PYUSDは米ドルとの価値が1:1で連動するステーブルコインです。準備金については米ドル預金や短期米国債などによって100%裏付けられているとしており、2023年9月以降に準備金についての月次報告書や、独立した監査機関による証明書も発行することを公表しています。

また、PYUSDの発行元は2022年6月にニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)のBitLicenseを得た米Paxos Trust Companyであることも公表されており、規制枠組みの元で発行されたステーブルコインであるということをアピールしています。

すでにハワイを除く米国のPayPalユーザーに提供が開始されており、PYUSDを用いた決済はもちろんのこと、PYUSDを使用したPayPalアカウント間の送金や、他の暗号資産とPYUSDを交換する機能なども提供されています。また、PYUSDの購入や売却、PayPalアカウント間の送金には手数料がかからないことが明記されています。

PYUSDの競合としては、PYUSDと同じく単一の事業体がガバナンスを担うような中央集権型ステーブルコインである、Circle社のUSDCやTether社のUSDTなどが挙げられるでしょう。中央集権型ステーブルコインの比較点としては、主に準備金の構成と、展開しているチェーンの種類の2つがあると考えられます。

準備金の構成については、USDCはPYUSDと同じく 米ドル預金や短期米国債などの比較的安全で透明性の高い資産を用いています。一方で、USDTは 米ドル預金や短期米国債などに加えて社債や貴金属、ビットコインやローンなどの資産を用いており、信頼性の高さという点においてはUSDCやPYUSDに軍配が上がると考えられます。

展開しているチェーンの種類については、USDCやUSDTはEthereumだけでなくPolygonやSolanaなどの比較的ガス代が安いチェーンにも展開している一方で、PYUSDは初期段階ではEthereumのみの展開となることが明らかになっています。これにより、PYUSDについてはPayPal外のウォレットDeFiで使用する際にガス代が高額となる可能性があります。

しかしながら、準備金の構成以外にもPYUSDの強みとして、4億3200万人以上の年間アクティブユーザーを誇る決済プロバイダーであるPayPalがガバナンスを担っていることは忘れてはならないでしょう。現在は米国のPayPalユーザーへの提供に限られていますが、今後米国外にも展開することで中央集権型ステーブルコインのシェアは大きく変化する可能性があります。

ステーブルコイン発行をささえるPaxosとは何者か?

コメント:中坪

8月7日、Paypalがドル建てステーブルコインのリリースを発表しました。PaypalはPaxos Trust Company(以下、Paxos)と提携し、Paxosがステーブルコインを発行する形でプロジェクトを進めていくとしています。この提携相手のPaxosという名前は今年の2月にも話題にあがりました。アメリカの世界最大手暗号資産取引所を運営するBinanceが発行するドル建てステーブルコイン、Binance USDがニューヨーク金融当局から新規発行停止を求められましたが、その対応の矢面に立っていたのがBinance USDの運営に携わっているPaxosでした(2023年8月現在はBinanceとの提携関係は解消されています)。暗号資産価格が依然としてボラティリティが高い中、ブロックチェーン技術を金融で活かす方法の一つとしてステーブルコインが注目されていますが、今後ステーブルコインの発行においてはPaxosのような企業が非常に重要な役割を果たすでしょう。ではPaxosは一体どのようにステーブルコインの発行に関わっているのでしょうか?

Paxosの事業は機関向けの暗号資産プロダクトの提供が主なものになります。特に先述したようなクライアントの要望に応じたステーブルコインの発行が事業の特徴の一つであり、資産の管理から決済までを網羅的にサポートしています。また昨今の法規制リスクを意識し、各国の規制をクリアしたカストディアンのライセンスを保持していることも特徴でしょう。さらに公式サイトでも資産の分別管理や裏付け資産についての説明が詳しくなされているところから、最近暗号資産界隈で起こっている問題に対する対応を十分していることを強くアピールしていることがうかがえます。Paypalだけでなく決済大手のマスターカードやブラジルやメキシコで多く利用されているアルゼンチン発のマーケットプレイス運営企業、メルカド・リブレなどとも協力、提携関係にあり、Paypalだけでなく今後ますますステーブルコインをリリースする、または決済にクローズドなブロックチェーンを利用する企業が増えることが予想されます。

日本ではJPYCが日本円ステーブルコインの発行事業を進めていたり、BitFlyer Blockchainが企業向けに独自のブロックチェーンを提供するなど既存の企業との協力を強める動きが広がっています。Paxosをはじめとする暗号資産やブロックチェーンサービスを提供する企業が大企業とコラボレーションを進めていけばよりブロックチェーン技術の社会実装、そしてステーブルコインを中心にした暗号資産の決済での活用は進んでいくでしょう。このようなトレンドが強くなっていく中で、発行を発表する大企業の側に我々は関心を向けがちですが、その裏で発行を実際に行う企業がどういう実績を持っているかということもどのサービスを利用するか決める際には重要な要素となるでしょう。特に技術面では後発の大企業はまだまだノウハウを十分に持っていないため実情としては提携先企業に依存している部分も多いように思えます。どのような企業とともに暗号資産サービスを展開していくのかプレスリリースの際には注目しておきたいところです。

注目の資金調達

※本まとめはGPT3.5によって自動生成されており、その内容の正確性を保証するものではありません。事例の概要を網羅的に把握するのにお役立てください。

unshETH

調達額: $3.30M
ラウンド: Seed
投資家: Soma Capitalなど
カテゴリー: DeFi
プロジェクト概要: unshETHは、ETHのリキッドステーキングプロトコル間の競争を促進することで、バリデータの分散化を向上させる革新的なDeFiコンセプトです。数百万人のユーザーに最適なETHステーキング体験を提供することを主な目標としています。unshETHの中核ミッションは、インセンティブを通じた分散化の実現です。戦略的なインセンティブメカニズムを活用することで、unshETHはLSDエコシステム全体に資本を配分し、バリデータの分散化を優先します。このアプローチにより、ネットワーク上で一つのエンティティやグループが過度な制御を獲得することはなく、より民主的で安全な環境が全参加者に提供されます。独自のインセンティブエンジニアリングを通じて、unshETHはETHリキッドステーキングプロトコル間の健全な競争環境を育成し、広範なDeFiコミュニティの利益を追求し、Ethereumネットワークの全体的な分散化を推進することを目指しています。

Parcha

調達額: $5.00M
ラウンド: Seed
投資家: Kindred Venturesなど
カテゴリー: Others
プロジェクト概要: パルチャAlは、ジェネレーティブAIに特化したフィンテックスタートアップです。金融テクノロジーセクターにおけるマニュアル労働の自動化に重点を置いています。大規模な言語モデルを活用することで、詐欺検出、ビジネスの認識、顧客オンボーディングなど、さまざまなタスクを効率化することを目指しています。パルチャAlのAIエージェントは既存のツールとシームレスに統合されるよう設計されており、コンプライアンスと業務のスケーリングを即座に実現するエンタープライズグレードのソリューションを提供します。パルチャAlの革新的なアプローチにより、金融機関は日々の業務において効率と正確性が向上し、時間とリソースを節約することができます。

BubbleAI

調達額: —
ラウンド: Pre-Seed
投資家: Luxtech Capitalなど
カテゴリー: Web3
プロジェクト概要: BubbleAIは、シグナルと人工知能(AI)を活用して、ユーザーに包括的な取引体験を提供する取引集約プラットフォームです。BubbleAIは、誰もが自分の取引の共同パイロットになることを目指し、Web3のオフチェーンデータインテリジェンスシステムとAI駆動の分析エンジンを開発しました。この組み合わせにより、「オールインワン」のAIFiエコシステムが形成されます。 シグナルとAIを活用することで、BubbleAIはユーザーに包括的な取引ソリューションを提供することを目指しています。オフチェーンデータインテリジェンスシステムは関連する市場データを収集・処理し、ユーザーが情報を元にした取引の意思決定を行えるようサポートします。さらに、BubbleAIの自己開発のAI大規模モデル分析エンジンは、これらの意思決定の正確性と効率を向上させます。 BubbleAIのビジョンは、トレーダーが最新のテクノロジーを統合した使いやすいプラットフォームを提供することで、トレーダーを力強くサポートすることです。トレーディングコパイロットとしての役割を果たすことで、BubbleAIは取引プロセスを簡素化し、ユーザーが市場の複雑さを簡単に乗り越えることを可能にします。

ニュースレターを無料購読していただくと、続きをお読みいただけます。

マネックスクリプトバンクでは国内外のweb3関連スタートアップへの出資およびグループ会社を含めた事業連携などを検討しています。ぜひ相談したいという方は下記アドレスまでご連絡ください。

担当:松嶋

今週のオンチェーン指標:Average/Median Spent Output Lifespan

概要

Average/Median Spent Output Lifespan(以下、ASOL、MSOLと略す)は、使用済みトランザクション出力の年齢の平均値もしくは中央値(日単位)を指します。ただし、トランザクションが1時間未満の出力は含めません。

ここでは極端な値に引っ張られることを防ぐために中央値で計算されているMSOLを紹介します。

MSOLは、簡単に言えば、コインが移動されるまでに何日間保持されていたかを示す指標です。つまり、MSOLが小さい値の時には移動までの期間が短いため頻繁に取引されていると判断できます。逆にMSOLが大きい値の時にはコインが移動せず長い期間にわたって保持されていると判断できます。

また、MSOLは貨幣数量説に含まれる貨幣流通速度を表す指標としても活用できます。チェーン上で貨幣の流通速度が上昇した場合、MSOLは減少します。逆にチェーン上で貨幣の流通速度が減少した場合、MSOLは上昇します。

ただしMSOLは、価格の急激な変動によって流通速度が増減するなどトランザクション数が一定でない場合が多いので、読み取りの際には注意が必要です。また、全てのトランザクションを等しく評価しているので、クジラの移動など影響力のあるトランザクションを反映しないことも注意すべき点です。

以下の図は、ビットコインの価格、トランザクション数、そしてMSOLの7日移動平均と表示したものです。基本的にMSOLは1前後を推移していることがわかります。しかし、2021年5月や同年11月など価格の暴落や底付近でMSOLは上に反応し、2022年5~6月のテラショックや同年11月のFTXショックの時にも値が大きく増加しています。これは価格の下落とともに新しくトランザクションを起こす人が減少し、貨幣の流通速度が減少(MSOLの増加)したと推測されます。

このようにMSOLは底値を検知する指標として有効である可能性があります。
※ここで紹介するオンチェーン指標は参考指標にすぎず、資産の売買を推奨するものではありません。投資判断に活用する場合にはご自身の判断でお願いいたします。

MCB RESEARCHレポート

※バックナンバーレポートの有料化のお知らせ

8/21(月)配信日よりバックナンバーレポートについては最新のものを除いて無料での閲覧が不可になります。ご興味がありまだお読みいただいたことがないものについては当該日までにダウンロードいただくようお願いいたします。

最新レポート(無料)

「MCBクリプト格付けー30種類の暗号資産を7つの項目別に相対評価」

過去レポート(有料)

販売サイトはこちら

レポート例

  • 「GameFiとはなにか――DeFiの重要性と課題、CEXの役割」
  • 「VR普及はいつ頃達成されるのか?―現状の問題点と関連技術を探る」
  • メタバースのデジタルLANDを開発する方法ーDecentraland開発」
  • 「ブロックチェーンゲームのビジネスモデルと収益推定」
  • 「PAVA指標のレイヤー1トークンへの適用可能性の検討」
  • 「金融バブルを検知するLPPLSモデルの暗号資産への応用」

採用情報

マネックスクリプトバンクではインターン採用を募集中!

Web3やメタバース、NFT事業を研究して、新しい金融の可能性を探ろう!

クリプトのマーケットを研究して未来の指標を作ろう!学生インターン募集中

法律を読み解いてweb3の未来を発⾒しよう!学生インターン募集中

Comments are closed.