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注目トピックス解説
DeFiのハッキング被害を軽減する新しいEthereum標準
コメント:宮本
7月3日、Ethereumのコミュニティーメンバーにより「ERC-7265」という新しいEthereum標準が提案されました。
ERC-7265は「サーキットブレーカー」という名称が付いたEthereum標準で、事前に設定されたしきい値以上のトークンが送信されそうになった場合に、DeFiにおけるトークン取引を強制的に停止するスマートコントラクトとなっています。
DeFiにはハッキング被害が蔓延しており、 DeFiLlamaのデータによるとこれまでに約67億ドルの資金がDeFiプロトコルから盗まれています。
また、DeFiにはハッキングされると数秒でTVL(Total Value Locked:合計預かり資産)を全て盗まれてしまうという特徴があることも問題となっています。現在多くのDeFiプロトコルにはガバナンス投票によってアップグレード可能なスマートコントラクトが実装されていますが、前述したようにDeFiに対するハッキング被害はあまりに迅速であるため、ハッキングがあってからではアップグレードによる脆弱性の修正が間に合いません。
ERC-7265では、トークン取引を強制的に停止するためのしきい値に固定値ではなくパーセンテージベースの値が使用されています。つまり、〇〇枚以上のトークンが送信されたら停止するのではなく、TVLの〇〇%以上のトークンが送信されたら停止するという仕組みが採用されているということです。これにより、TVLが変化した場合でもしきい値を更新する必要性がなくなっています。
今回提案されたERC-7265は直接的にハッキングを阻止するものではありませんが、ハッキングによるトークンの流出を遅延させることができるEthereum標準であるといえるでしょう。トークンの流出を遅延させることで、プロトコルの脆弱性を修正する時間を作り出すことができ、結果としてDeFiのハッキング被害を軽減させる働きを持つことが期待されています。
一方で、しきい値の設定によってはサーキットブレーカーが誤作動してしまう可能性も指摘されています。また、ERC-7265は現在の段階ではEIP公式サイトに記載されていないため、正式には受理されていない作業報告書としての位置付けに留まっている状況です。今後正式にドラフト段階のEthereum標準として受理され、将来的にはより改善されたEthereum標準として実装されることを期待したいところです。
暗号資産のポートフォリオ戦略2~組み入れ比率を考える~
コメント:中坪
前回に引き続き、今回は暗号資産のポートフォリオへの組み入れ比率について、Messariのレポートを参考に考えていきたいと思います。
Messariによるモンテカルロ分析によれば、債券、株式、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)をポートフォリオに組み込む場合、債券62%、ETH27%、株式7%、BTC4%の場合が最もリスク調整済みポートフォリオとしては最適であるという結果が出ています。債券とETHによるいわゆるバーベル戦略を取ることが最も効率的なポートフォリオを組成できるようです。このようなバーベル戦略になった理由としてはETHの高いシャープレシオを活かしつつも、同時にリスクの高さを債券によってヘッジしているという関係性があると思われます。リスク調整には現代ポートフォリオ理論における効率的フロンティアをベースにシャープレシオを指標としていますが、このように理論に基づいて組み入れ比率を決めれば妥当なポートフォリオが組成できるように思えます。
さて、ここまでは暗号資産と他の金融資産をミックスするポートフォリオを考えてきましたが、暗号資産のみでポートフォリオを作った場合はどうでしょうか?結論から行くと多くの暗号資産をほとんど均等な比率で組み入れることがリスク調整されたポートフォリオとしては最適なようです。また、小型株を多く組み入れる場合と同様にボラティリティはやや高くなってしまうものの、小規模な暗号資産を積極的に取り入れることでリスク調整後の資産によりリターンを生み出すこともわかっています。しかし、あまりに多くの暗号資産を組み入れることはポートフォリオ管理の観点や流動性の問題から現実的ではないでしょう。Messariレポートでもより現実味のある方法として、BTCやETHを上限を設けつつ時価総額比率ベースで組み入れ、残りの部分を他の主要な複数の暗号資産に割り当てる方法が提案されています。このポートフォリオを組成する際のポイントは株式投資と同様に手数料をできるだけ抑える、そしてできるだけ多くの暗号資産に分散投資することです。結局は投資信託等と同様にパッシブ投資することが最も効率的な暗号資産投資になるとレポートでは述べています。そのほかコストを抑えつつリバランスしたり、トークンの性質ごとに時価総額と割安・割高の2軸で分類し組み入れる暗号資産を決定したりすることも必要となるでしょう。
2回にわたって暗号資産のポートフォリオ戦略について考えてきました。一番の発見は、ポートフォリオを組成する際に従うべきことは意外にも伝統的金融資産と変わらないということ。結局は、長期、分散、低コストであることが非常に重要だということなのでしょう。また株式や債券とミックスすることで暗号資産のデメリットを抑えつつ、リターンを大幅に大きくできる可能性もありますから、暗号資産をポートフォリオに加えることは収益を上げる点でも有効です。もちろん、依然として債券等と比べれば暗号資産のリスクの絶対値は大きいのですが、シャープレシオベースで見れば取れないリスクではなくなってきています。今こそ投資資産としての暗号資産に対する見方を見直すタイミングなのかもしれません。
ステーブルコインと改正資金決済法
ステーブルコインUSDCの発行を行うサークル社のCEOが来日し、日本におけるステーブルコイン発行に関して検討を開始したことをCoinDeskJapanのインタビューで明らかにしました。検討開始の背景の1つとして、2023年6月1日に施行された改正資金決済法によって日本国内でのステーブルコイン発行が可能になったことが挙げられます。詳しいインタビュー内容は記事を参照していただきたいのですが、今回はこの法改正についておさらいしたいと思います。
そもそもステーブルコインとはブロックチェーンの技術を用いた暗号資産の一種で、特定の資産と連動し、価格が安定するように設計されています。そのため、ブロックチェーン上のサービスなどで決済手段として用いられており、今では暗号資産取引の大部分がステーブルコイン建てで行われています。このようにステーブルコインの利用が拡大する中で、2022年にはテラショックのような大事件が起こり、利用者を適切に保護する必要が生まれました。また、価格安定性から他の暗号資産よりもマネーロンダリングに使われやすいため、それを防止する仕組みも求められます。以上の観点から、各国ではステーブルコイン規制の整備が進められており、日本は海外に先行して資金決済法の改正という形で明確に規制を行いました。
今回のステーブルコインに関連する法改正のポイントは2つあります。1つ目は法定通貨担保型ステーブルコインが発行可能となったことです。ステーブルコインは大きく分けて特定の資産が価値を裏付ける「担保型」と、市場メカニズムによって価格を安定させる「無担保型」の2種類があり、今回の改正では、法定通貨担保型を電子決済手段に位置付けることによって規制の対象とし、その発行が認められました。ただし、暗号資産担保型と無担保型に関しては法律上では暗号資産に分類され、発行ルールは未定のまま、金融庁の登録を受けた暗号資産交換業者のみが仲介できる形にとどまります。2つ目は規制対象としてステーブルコインの発行や管理を行う発行者と、その流通を行う仲介者が明確に定義されたことです。発行者は銀行、資金移動業者、信託会社に限定され、仲介者は「電子決済手段等取引業等」という新しい登録制度が法改正に合わせてスタートしました。仲介者は利用者保護やマネロン対策を適切に行うことが求められます。
この法改正を受けて、国内では早くも三菱UFJ信託銀行がステーブルコイン発行のためのプラットフォーム開発に乗り出しており、国内企業だけでなくサークル社を筆頭に他の海外企業も日本市場に参入してくるでしょう。また、日本がステーブルコイン規制のモデルケースとなり、他の国でも同様の体制が整えられて世界におけるステーブルコイン流通が加速することも予想されます。大きな盛り上がりを見せる今後のステーブルコイン動向に注目です。
注目の資金調達
※本まとめはGPT3.5によって自動生成されており、その内容の正確性を保証するものではありません。事例の概要を網羅的に把握するのにお役立てください。
Bitkub
- 調達額: $17.80M
- ラウンド: Undisclosed
- 投資家: –など
- カテゴリー: CeFi
Bitkubは、金融技術セクターで活動する有名な組織です。同社の主な目標は、デジタル資産市場でシームレスで安全な取引を容易にすることです。最先端のテクノロジーと業界の専門知識を活用することで、ユーザーのデジタル資産の購入、売却、管理プロセスを簡素化することを目指しています。 Bitkubの成功は、透明性、セキュリティ、ユーザーフレンドリーなインターフェースへの取り組みによるものです。同社は、顧客の資産と個人情報の安全性を確保するために堅牢なセキュリティ対策を実施しています。さらに、Bitkubの使いやすいプラットフォームは、技術的な知識レベルの異なる個人がデジタル資産市場を簡単に操作し、参加することができます。
Web3Go
- 調達額: $4.00M
- ラウンド: Seed
- 投資家: Binance Labsなど
- カテゴリー: Web3Infrastructure
Web3Go DIN(データインテリジェンスネットワーク)は、Web3Goによって開発された革新的なデータインフラです。個人、AIアシスタンス、ブロックチェーンベースの公正性の証明に焦点を当てています。Web3Goの主な目標は、Web 3.0の知識、データ、洞察を獲得、理解、共有しやすくするためのインフラを構築することであり、参加のハードルを最小限に抑えながら、ユーザーがスキルと知識を通じてネットワークの成長と向上に貢献できるようにします。 AIやブロックチェーンなどの先進技術を活用することで、Web3Go DINはデータのアクセスと活用方法を革新しようとしています。ユーザーセントリックなアプローチを提供し、個人が貴重な情報と洞察に簡単にアクセスできるようにします。AIアシスタンスの統合により、利用可能な膨大なデータをナビゲートする際に、パーソナライズされた推奨やアシスタンスを提供し、ユーザーエクスペリエンスを向上させます。 さらに、ブロックチェーンベースの公正性の証明の実装により、ネットワーク内での透明性、公正性、説明責任が確保されます。
SuperSight
- 調達額: $1.00M
- ラウンド: Pre-Seed
- 投資家: Blockchain Founders Fundなど
- カテゴリー: Others
SuperSight(英国)は、専門の大規模言語モデル(LLM)を開発し、暗号通貨関連データの発見効率を向上させています。420万の暗号通貨ウォレットの中で、わずか3万人のユーザーしか最新の情報をプログラムで追えていません。SuperSightは、オンチェーンとオフチェーンの両方のソースをカバーするシームレスな検索体験を提供することで、この格差に対処しようとしています。SuperSightの技術を活用することで、ユーザーはわずかなクリックで包括的な情報にアクセスでき、暗号通貨データの探索プロセスが簡素化されます。この革新的なソリューションは、膨大な数の暗号通貨ウォレットと、進化する暗号通貨の情勢を効果的に追跡できるユーザー数の制約とのギャップを埋めるものです。
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今週のオンチェーン指標:Pi Cycle Top Indicator
概要
PCTIは短い期間のSMA-111dがSMA2-350dを上回った場合(チャート上でゴールデンクロスした時)に、市場が著しく過熱しているタイミングを示し、歴史的に価格周期の天井を示す指標となっています。
以下の図はビットコインの価格とPCTIを表示したものです。これを見ると2013年、2014年、2018年、2021年と高い確率でビットコインの価格のピークを的中させています。
※ここで紹介するオンチェーン指標は参考指標にすぎず、資産の売買を推奨するものではありません。投資判断に活用する場合にはご自身の判断でお願いいたします。
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