今週も暗号資産アナリストの松嶋がビットコイン相場の動向を分析します。
- 今週のビットコインは、米国における関税交渉の進展と利下げ観測の後退が交錯し、もみ合いの展開となった。
- 来週のビットコインは、主要材料を通過したことによる短期的な調整局面に警戒が必要である一方、底堅い推移が続く展開が想定される。直近の価格レンジとして、上値はBTC=123,000ドル(約1,820万円)、下値はBTC=115,000ドル(約1,702万円)を意識する。
今週の相場動向
相場回顧 BTC(ビットコイン):米国の通商交渉やFOMC、企業決算等が交錯し、もみ合いの展開
ビットコインは、米国における通商交渉の進展と利下げ観測の後退が交錯する中、もみ合いの展開となった。
週初には、ギャラクシー・デジタルを通じてクジラ投資家による過去最大規模となる8万BTC超の売却が明らかとなり、一時はBTC=115,000ドル(約1,702万円)付近まで急落した。ただし、売りをこなしたことへの安心感も広がり、押し目買いの動きが相場を下支えした。
その後、米国とEUとの間で関税合意が成立し、リスク選好ムードが強まったことで、S&P500とナスダック総合指数が連日で史上最高値を更新。これに連動する形でビットコインもBTC=119,000ドル(約1,761万円)付近まで大きく反発した。加えて、ストラテジー【MSTR】による大型資金調達やメタプラネット(3350)による継続的な大口購入も相場を押し上げる要因となった。
週後半はFOMCを控えて様子見ムードが強まり、米国株とともに上昇が一服した。マイクロソフト【MSFT】やアップル【AAPL】といった米ハイテク大手、さらにはコインベース【COIN】の決算発表も控えていたことから、投資家の慎重姿勢が強まり、市場は一時的に方向感を失った。
会合では市場予想通り金利据え置きが発表され、パウエルFRB議長は慎重な姿勢を堅持した。これにより9月の利下げ観測が後退し、ビットコインは一時的に売りが強まった。しかし、堅調な米企業決算や各国との通商交渉の進展、さらに米政府による暗号資産関連報告書の公表といった好材料が相次いだことでBTC=118,000(約1,746万円)を回復し、高値圏を維持した。
今週のトピックス
金融市場
- 米・EUが貿易協定で合意、トランプ氏と欧州委員長が発表-相違点も
- 米中、関税停止期間延長の協議継続で合意-トランプ氏に最終判断仰ぐ
- トランプ氏、ロシアに10日以内の合意迫る-ウクライナ停戦へ圧力
- 米消費者信頼感、予想以上に改善-経済や労働市場への懸念和らぐ
- パウエル議長、利下げ要求に屈せず-理事2人反対もインフレ警戒堅持
- 米国が対韓15%関税へ、対インド25%方針-カナダとは妥結しない恐れ
- 米GDP、4-6月は3%増-関税前の駆け込み輸入急増が反転
暗号資産市場
- ギャラクシー・デジタル、1.3兆円相当のビットコイン売却を完了 サトシ時代投資家の利益確定
- メタプラネット、130億円分のビットコイン追加購入|保有量17,132BTCに
- 米NY証取(NYSE)親会社設立のBakkt、7500万ドル調達でビットコイン購入へ
- ナスダック上場EV企業ボルコン、600億円超のビットコイン保有 財務戦略開始で
- 世界最大級のオンライン証券会社、ステーブルコイン発行を検討
- 「仮想通貨は万人のもの」、コインベースとJPモルガン・チェース提携発表
- トランプ政権、『仮想通貨黄金時代』報告書を公開 ビットコイン準備金の計画は?
来週の相場予想
BTC(ビットコイン)はFOMC通過後の材料出尽くしで調整リスクも、政策期待が下支え
来週のビットコインは、主要材料を通過したことによる短期的な調整局面に警戒が必要である一方、底堅い推移が続く展開が想定される。
FOMCを通過後、市場では9月も金利据え置きの予想が優勢になりつつある。今後発表される米主要経済指標やFRB当局者発言によって利下げ観測がさらに後退する場合、リスク資産全体に売りが波及し、ビットコインも下落する可能性がある。また、米国の関税上乗せ分の適用が始まり、トランプ大統領が合意未締結国に対して追加の強硬関税策を発表した場合には、リスクオフが一段と強まることも考えられる。
一方で、米国政府が包括的な暗号資産関連報告書を公表し、暗号資産の定義・分類を明確化する法案「CLARITY法」の審議など、法整備の進展への期待が高まっている。さらに、ビットコイン準備金構想については新たな詳細が発表されるとの報道もあり、こうした政策的な支援が打ち出されれば、金融市場の動向とは別にビットコインが買われる展開も期待される。
ただし、8月は夏季休暇シーズンに入ることから市場参加者が徐々に減少しやすく、月後半のジャクソンホール会議まで目立った材料がなければ、動意薄の展開が続くことが想定される。
直近の価格レンジとして、上値はBTC=123,000ドル(約1,820万円)、下値はBTC=115,000ドル(約1,702万円)を意識する。
来週のトピックス:暗号資産市場に影響しうる指標をピックアップ
経済指標・イベント
- 日本、日銀金融政策決定会合議事要旨(8/5)
- 米国、ISM非製造業景況指数(8/5)
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