今週も暗号資産アナリストの松嶋がビットコイン相場の動向を分析します。
- 今週のビットコインは、米中関係の悪化と過剰レバレッジ解消を背景に急落し、その後は下値模索の展開となった。
- 来週のビットコインは、米中貿易摩擦や米政府閉鎖問題をめぐる不透明感を抱えつつも、過剰レバレッジ整理後の底打ちを試す展開が予想される。直近の価格レンジとして、上値はBTC=118,000ドル(約1,781万円)、下値はBTC=105,000ドル(約1,585万円)を意識する。
今週の相場動向
相場回顧 BTC(ビットコイン):米中関係悪化と過剰レバレッジ解消で急落
ビットコインは、米中関係の悪化と過剰レバレッジ解消を背景に急落し、その後は下値模索の展開となった。
10月10日、トランプ政権が中国向け輸出関税の100%引き上げを発表したことで世界的なリスクオフが強まり、ビットコインも急落。安全資産とされる金が上昇する一方で、暗号資産市場では複合的な売り圧力が発生した。
特に、バイナンスで流通する新興ステーブルコイン「USDe」が一時的に米ドルとのペッグを外れ、0.65ドル付近まで下落(※)。このディペグを契機に市場の流動性懸念が広がり、レバレッジポジションの連鎖的な解消が進行した。市場では過去最大級となる約200億ドル規模の清算が発生し、これに伴ってビットコインは一時BTC=110,000ドル(約1,661万円)を大きく割り込んだ。
その後は米国株の下落一服を受けて買い戻しも入り、一時BTC=115,000ドル(約1,736万円)台半ばまで反発。しかし、トランプ大統領の発言が一転二転する中で米中貿易摩擦への警戒が続き、再びBTC=110,000ドル(約1.661万円)付近まで下落した。パウエルFRB議長が量的引き締め(QT)停止を示唆したことで一時的にリスク選好が戻る場面もあったものの、暗号資産保有企業の評価損リスクやステーブルコイン市場の信認低下が意識されるなど、軟調な推移が継続した。
※バイナンスがUSDe価格を外部価格フィードではなく自社オーダーブックデータを参照する仕組みを採用していたことが影響し、流動性の薄い板データが価格崩れを助長した可能性があるとされる
今週のトピックス
金融市場
- 中国、レアアースと関連技術の輸出制限強化へ-米中摩擦の火種再燃も
- トランプ氏、11月1日から中国に100%追加関税-重要ソフト輸出制限へ
- トランプ政権、中国との取引にオープンな姿勢-市場への安心感狙いも
- トランプ氏、米中は貿易戦争のさなかと表明-財務長官は長期停戦提案
- パウエルFRB議長、数カ月以内にバランスシート縮小停止の可能性
- ベージュブック、米経済活動ほぼ変わらず-コスト一部で上昇加速
- 米国9月のインフレ、民間データでは関税で押し上げ-政府統計は延期
- マイランFRB理事、利下げの緊急性高まる-貿易巡る不確実性で
- ボストン連銀総裁、年内に政策の正常化さらに少し進めるのが賢明
暗号資産市場
- ステーブルコイン史上最大の買収案件か、コインベース・マスターカードが買収競合=フォーチュン誌
- Binance Japan、PayPayと資本業務提携契約を締結 PayPayマネーによる仮想通貨購入サービスを検討
- シティバンク、2026年に仮想通貨カストディ事業参入へ
- 欧州最大手アムンディ、ビットコインETN市場参入を準備
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券、デジタルアセット事業を開始
- 世界大手銀行10行、G7通貨のステーブルコイン発行を共同検討
- モルガン・スタンレー、仮想通貨ファンドの顧客制限を撤廃=報道
- JPモルガンがビットコイン取引サービス参入へ カストディは外部委託で対応
- ビットコイン、200億ドル規模の強制清算-週末相場急落の余波
- 1310億ドルが消失したアルトコイン市場-リスク回避の姿勢強まる
- ニューヨーク市、全米初の自治体仮想通貨専門局を設立
- メタプラネットの企業価値、初めて保有ビットコインの価値を下回る mNAVが一時0.99に
- バイナンス、大規模ロスカットのユーザーに455億円相当救済金を配布
来週の相場予想
BTC(ビットコイン)は過剰レバレッジ整理を経て底打ち模索の展開か
来週のビットコインは、米中貿易摩擦や米政府閉鎖問題をめぐる不透明感を抱えつつも、過剰レバレッジ整理後の底打ちを試す展開が予想される。
トランプ大統領による対中政策発言は引き続き警戒材料となるものの、度重なる交渉戦術には市場がある程度織り込みを進めており、反応は限定的となる可能性が高い。今回の下落も、米政府閉鎖で手掛かりを欠く中での発表をきっかけとしたもので、その影響は一時的とみられる。
一方で、一部ではトランプ一族によるインサイダー取引の関与を疑う報道も出ており、暗号資産市場の信頼性が一時的に揺らいでいる点には注意が必要だ。こうしたセンチメント面の不安が続けば、相対的な投資妙味が薄れる中で資金が株式や金といった他の資産へシフトする可能性もある。
他方で、今回の急落によって過剰なレバレッジポジションが一掃され、市場構造が健全化した点はポジティブに評価できる。大規模清算を経て短期的な売り圧力が後退しており、好材料が重なる中で下値を固める動きが強まれば、反発に転じる展開が期待される。
注目材料としては、10月24日に発表予定の9月米消費者物価指数(CPI)が挙げられる。パウエルFRB議長が量的引き締め(QT)停止を示唆したことで利下げ期待が高まっており、インフレ鈍化が確認されればリスク資産全体の支援材料となるだろう。
また、BTC保有企業であるテスラ【TSLA】の決算発表も焦点となる。ビットコイン保有継続が確認されれば、投資家心理の安定につながる可能性がある。直近ではイーロン・マスク氏がSNS上でビットコインに言及しており、再び市場を動かす存在として注目を集める展開も考えられる。
直近の価格レンジとして、上値はBTC=118,000ドル(約1,781万円)、下値はBTC=105,000ドル(約1,585万円)を意識する。
来週のトピックス:暗号資産市場に影響しうる指標をピックアップ
経済指標・イベント
- 米国、9月雇用統計(未定)
- 米国、9月消費者物価指数(10/24)
- 日本、9月全国消費者物価指数(10/24)
企業決算
- 米国、テスラ【TSLA】(10/22)
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